公開 2025年9月02日/更新 2025年9月02日/11 分で確認
パーソナライズはマーケターの共通言語のように使われる用語ですが、実は詳細な理解があいまいな方も多いのではないでしょうか。
この記事では、パーソナライズの意味や関連用語との違い、重要性やメリット、活用方法や注意点、成功事例をご紹介します。
パーソナライズとは、ユーザーの行動履歴や属性、好みなどを基に、一人ひとりに最適な情報提供の形を検討するマーケティング手法です。
例えば、もうすぐ誕生日を迎える29歳の男性が、自社ECサイトでネクタイの検索をしている場合、「30歳を迎えるあなたへ」と高級感のあるネクタイの情報と割引クーポンをお届けすれば、心に響く宣伝になると予想されます。
このように、ユーザーが「自分のための情報だ」と感じられる宣伝を目指していくのが、パーソナライズの基本となる考え方です。
パーソナライズには、カスタマイズとレコメンドという関連用語があります。言葉の意味とマーケティングにおける意味を見ていきましょう。
カスタマイズ(Customize)とは、「自分の好み(自分の要求)に合うように、直す・調製する」といった意味があります。
マーケティング分野におけるカスタマイズとは、ユーザー自身が好みやニーズに合わせて設定を変更することを指します。自家用車の購入時に行うオプション選択が代表例です。
パーソナライズとカスタマイズの最大の違いは、「行動の主体」にあります。パーソナライズは企業が情報提供の形を探るのに対して、カスタマイズはユーザーが自ら変更を試みます。
一方、レコメンド(recommend)は、「(や物事を)薦める」「推奨する・推推薦する」などの意味を持ちます。
マーケティングにおけるレコメンドとは、顧客の行動履歴や属性、好みなどに基づきおすすめの製品を提案することを指します。
レコメンドとパーソナライズは似ていますが、後者はより広い概念です。一般的にレコメンドは単におすすめの製品を提案する仕組みを指し、パーソナライズは伝え方(例:バナー広告の表示・非表示、メルマガやプッシュ通知から適切な連絡方法を選ぶなど)まで含みます。
すなわち、レコメンドはパーソナライズされたマーケティングを実現するための手段の一つといえます。
パーソナライズの重要性は、大きく以下の3つの視点から把握できます。
市場のグローバル化や高速化もあり、近年は数え切れないほどの商品が登場しています。
例えば、ECサイトを開き「ボールペン」と任意のキーワードを入力すれば、無数の選択肢が提示される時代です。誰もが同じ製品を使っていた一昔前と比べて消費者ニーズの多様化が進んでおり、「この商品があなたの好みに適しています」と提案をする価値が増しています。
市場における選択肢の増加は、必要な情報の見つけにくさにも繋がっています。誰もが検索を上手に使いこなし、自分に適した製品を選べるとは限りません。
企業側から適切なアイテムをふさわしい形で提案することで、顧客の情報収集の負担を軽減できます。
従来は、マスマーケティングと呼ばれる、多くの方に同じコンテンツを伝える画一的な宣伝手法(例:テレビCM)が一般的でした。
しかし現在ではIT技術の進化によって顧客の行動を測定できるようになり、パーソナライズされた体験の提供も可能となりました。
個人に配慮した体験にはユーザーと自社の心理的距離を近づける効果が期待でき、信頼関係の強化に役立ちます。
続いて、パーソナライズの実践により自社が得られるメリットを確認していきましょう。
パーソナライズされた体験の提供を目指すことは、顧客一人ひとりのニーズを満たそうとすることと同義です。
顧客ロイヤルティ(ユーザーが自社に対して抱く愛着や信頼)やLTV(顧客生涯価値。顧客が自社と取引をはじめてから終えるまでにもたらしてくれる利益)のような重要指標の向上に繋がります。
顧客ロイヤルティやLTVについては以下の記事をご覧ください。
>>顧客ロイヤルティとは?構築方法や顧客満足度との違い・向上させるメリットについて解説
>>LTV(ライフタイムバリュー)とは?重要性や計算方法、高める方法・ポイントについても紹介
パーソナライズされたコンテンツの提供は、潜在顧客へのアプローチにも繋がります。
自分に適切な商品を見つけられていない顧客に対し、好みや行動履歴から最適な一品を提案することで、新たな購買を期待できるためです。
一人ひとりの心を打つ情報を提供することは、コンバージョン率にも好影響を与えます。不特定多数に向けてやみくもに広告を出稿する場合と比較して、マーケティングに関するコストを節約できます。
パーソナライズとは一人ひとりに最適な情報を提供することであり、その目的に応じて多様なアプローチが考えられます。
休眠顧客の行動履歴を確認し、離反の原因と思われる要素を解消できるコンテンツを届けられれば、復帰を促す優れた施策にもなります。
休眠顧客の重要性や具体的なアプローチについては以下の記事をご覧ください。
>>休眠顧客とは?アプローチするメリットや方法、ポイントについて徹底解説
パーソナライズされた顧客体験の提供は、商品に機能や価格以外の価値を付与できるため、競合との差別化に繋がります。安価な後発品の登場も問題視される近年の市場において、その価値は顧客に強く訴求できる強力な武器となるでしょう。
パーソナライズは定義が広く、活用方法もさまざまですが、以下のような形で利用されるケースが主流です。
(例:おすすめ商品の表示)
(例:そのユーザーがよく開封するチャネルから連絡)
(例:開封率のデータからお昼に配信するように設定)
(例:商品Aを買ってから3ヵ月経った顧客に商品Bを宣伝)
いずれも顧客一人ひとりのニーズを知り、そのニーズを満たすために欠かせない取り組みです。
パーソナライズは強力なマーケティング手法ですが、一方で注意点も押さえておく必要があります。
落とし穴となりやすいのが、情報の偏りです。パーソナライズを追求した結果、同じような情報だけを何度も伝えてしまうことがあります。ときには新奇性のあるコンテンツを提供するなど、ユーザーを飽きさせないための工夫が求められます。
パーソナライズの判断は過去に収集したデータに基づいています。しかし、顧客のニーズや趣味嗜好は絶えず変化するものです。できるだけ最新のデータから分析するなど、顧客が今求めている情報を届けるように意識しましょう。
パーソナライズで顧客一人ひとりのニーズを把握したあとには、要望を満たせるコンテンツの作成が必要となります。顧客の数が増えニーズが多様になるほど、作成の負担も大きくなります。AI支援機能のあるツールを使うなど、メッセージや画像などの準備に必要なコストの削減も大切です。
前述の通り、パーソナライズされた情報はあくまで過去のデータに基づいています。「もっと早く知りたかった」といった思いを抱かせてしまわないよう、情報発信のタイミングには気を配る必要があります。
また、情報を伝える頻度も、メッセージの開封率やCV率などを基準に忘れずに最適化していきましょう。
最後に、Brazeを利用してパーソナライズに成功した事例をご紹介します。
100万ダウンロードを誇るカーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」を手がけるパイオニア株式会社は、自社アプリの有償ユーザーの拡大を目指してBrazeを導入しました。
同社では、膨大なユーザーデータをBrazeと連携。顧客の契約情報や行動履歴を基にパーソナライズされた情報提供を実現しました。
休眠顧客の再契約を促進する施策を実行した結果、施策の実行前と比べて再契約者数が4倍に増加するなど、確かな成果を手にしています。
再生可能エネルギーによる電力サービスを手がける株式会社Looopでは、電気料金プランの改訂内容をパーソナライズして届ける必要性に迫られていました。
近年、多くのものが値上がりするなか、「電気料金プランの改定の連絡=値上げの連絡」と受け取られるケースも増えており、実際にはおトクになる連絡であっても、誤解による解約が起こるリスクを抱えていました。そこでBrazeを導入し、一人ひとりに1円単位の電気料金シミュレーションも通知するパーソナライズを実施。料金改定において想定の半分以下の解約率に抑えることに成功しています。
>>Looop、電気料金シミュレーション結果の個別配信で解約率を大幅抑制 - 3ヶ月のオンボーディングで実現
パーソナライズとは、顧客一人ひとりの行動履歴や好み、属性などを基に、最適な情報提供を行うことです。実践に向けては、顧客のデータを収集・一元管理するなど、データ活用を進められる体制の構築がその第一歩となります。
Brazeであれば、Amazon RedshiftやGoogle BigQueryなどのデータウェアハウスと連携し、リアルタイムのデータ分析を簡単にはじめられます。100種類以上のフィルターや任意のテキストによる指示を使い自社の顧客を細分化していくことも可能です。
以下のリンクではパーソナライズの重要性や具体的な方法案など、Brazeの知見をまとめたレポートを提供しています。ぜひ自社のマーケティングの改善に向けてご一読ください。
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