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パイオニアのナビアプリ、パーソナライズ戦略で契約数4倍

Use Caseエンゲージメントリテンション
Industryメディア & エンターテイメント
Productキャンバスアプリ内メッセージモバイルプッシュ通知メール
パイオニアのナビアプリ、パーソナライズ戦略で契約数4倍
課題

カーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」は2025年5月に100万ダウンロードを突破し、多くのユーザーに利用されるようになりました。しかし、2023年9月サービスイン当初のコミュニケーション手段は一斉プッシュ通知のみで、ユーザー一人ひとりのニーズに合わせた情報提供ができていませんでした。そのため、アプリの価値を十分に伝え、より多くの有償ユーザーを獲得するためには、各ユーザーの行動や利用状況に応じた、きめ細かなコミュニケーションが不可欠でした。

戦略

アプリの有償ユーザー獲得を主要な目的とし、主に「プッシュ通知」と「メール」の2つのチャネルを通じて、パーソナライズされたマーケティング施策を展開し始めました。具体的な施策例としては、サブスクリプションの再契約促進のために、解約したユーザーへ新規機能を紹介したり、パイオニアIDの登録促進に向けて、ID未登録ユーザーにおすすめ機能を通知しています。

成果

サブスクリプション契約を解約したユーザーに対して再契約を促す施策を行ったところ、未実施の場合と比較して再契約者数が約4倍に増加しました。また、パイオニアID未登録ユーザーを対象に登録を促す施策では、同様に未実施の場合と比較してID登録者数が約15倍に達しました。これらの施策に加え、Brazeのアンケート機能などを活用することで、ユーザー理解も深めています。

company
INDUSTRY
PRODUCTS USED
指標による成果

約4倍

サブスクリプション契約者数(施策未実施ユーザー比)

パイオニア モビリティサービスカンパニー(以下、MSC)の事業内容を教えてください。

パイオニア株式会社は、長年にわたりカーナビやカーオーディオなど、カーエレクトロニクス分野の製品・サービスを中心に事業を展開してきました。その中で、パイオニア モビリティサービスカンパニー(MSC)は、パイオニアのデータソリューション事業を担う社内カンパニーです。MSCが提供するのは、カーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」およびバイク専用ナビアプリ「MOTTO GO(モットゴー)」です。これらのアプリには、パイオニアが30年以上にわたりカーナビを提供してきた独自のノウハウが詰まっています。MSCでは、両アプリのマーケティングやカスタマーサクセスを担当しています。

a man in a suit is sitting at a table talking to someone .

戦略推進統括グループ 統括部長 飯間 貴昭氏

近年、モビリティの利用方法は、自分の車を持つことだけでなく、レンタカーやカーシェア、さらには二輪や電動スクーターといったように急速に多様化しています。このような変化の中で、ナビや位置情報をベースとしたサービスの強化は重要な取り組みとなっています。従来のハードウェア中心の世界から、スマートフォンで利用できるパーソナライズされたサービスへの移行が進んでいるのです。

COCCHiは日常利用向けの四輪ナビアプリであり、一般的なユーザーが多い一方で、パイオニアの長年のファンも含まれる多様なユーザー層を抱えています。一方、MOTTO GOは趣味性の高い二輪向けのツーリングアプリで、ユーザーは生活必需品としてではなく、趣味の世界を楽しむために利用しています。COCCHiは、気の利いた音声案内や、交差点でのイラスト表示といった、運転に不慣れなユーザーでも安心して使えるきめ細かなナビゲーションが特徴です。MOTTO GOは、ツーリング中に役立つスポット情報通知や、未舗装道路や天候情報(雨や雷など)の提供といった、二輪ならではのニーズに応える機能が強みとなっています。

Braze導入前、ユーザーとのコミュニケーションにおいて抱えていた課題を教えてください。

COCCHiとMOTTO GOは、パイオニアにとって初めてのコンシューマー向け有料アプリです。企業向けのサービス(ビークルアシスト)とは桁違いに多いユーザー数に対応するため、お客様一人ひとりの状況を把握し、それぞれに最適な情報や提案を行うこと、そして利便性高く、楽しくアプリを使ってもらうことが大きな課題となりました。

Braze導入以前にも一斉配信は可能でしたが、それも手動で行っており、ユーザーのセグメント分けや、個々の利用状況に応じたきめ細やかな配信は全くできていませんでした。このような背景から、ユーザーへの個別最適化されたコミュニケーションを実現するためのツールとして、Brazeの導入が決定されました。

数あるツールの中からBrazeを選定した理由を教えてください。

いくつかのツールを比較検討した結果、アプリへの実装のしやすさやデータドリブンな施策を支える豊富な機能群に魅力を感じました。そして何より、Braze社はマーケティング領域におけるグローバルリーダーの一つであり、将来的にも安心感のあるビジネスパートナーとして信頼できることから、トップダウンで導入が推進されることになったのです。

Brazeのサポート体制については、導入当初から現在に至るまで、大変心強く感じています。アプリへのSDK実装やキャンバス設定、ダッシュボードの見方など、Braze活用の標準的なステップを私たちのペースに合わせて非常に丁寧にガイドしていただきました。日本でのBrazeのサポートの方々は、製品知識や経験が豊富で安心感が高く、我々の成功のために熱意をもって献身的に支援いただいており、心から感謝しています。

Brazeの具体的な活用方法をお教えください

現在は、主にメール、アプリプッシュ通知、ポップアップ(IAM - アプリ内メッセージ)などを活用しています。導入当初はSDK連携のみで、ユーザーの行動によるセグメンテーションが中心でしたが、その後CDI(Customer Data Integration)連携を進めることで、お客様の契約情報と行動情報を掛け合わせた、より詳細なセグメンテーションが可能になり、パーソナライズされた情報配信を実現しています。

a woman is sitting at a desk in front of a laptop computer .

コンシューマサービス統括グループ コンシューマプロダクトチーム CRM 高木 詩織氏

具体的な施策は多岐にわたります。例えば、ナビを利用するにあたり、自宅登録やお気に入り登録、ナビ設定をしておくとよりナビの使い勝手が向上するので、Push通知やメールを活用して設定の手順を説明しています。また、画面の見方やアイコンの意味など、何となくで分かるものが多いですが説明を見て「なるほど」となるものもあるので、「アプリの取り扱い説明書」といったメールもWELCOMEメールとして配信しています。自動課金への不安を持つユーザーには、自動課金前に通知があることを事前に伝えることで、トライアルへのハードルを下げ、高いCVRを得ています。さらに、ダウンロードしたばかりで、まだ契約していないユーザーには、プッシュ通知やアプリ内メッセージを活用しトライアル契約を促しています。

MOTTO GOでは、チュートリアル、無料トライアル、有料課金というユーザーのジャーニーの各ステップにおける行動を詳細に分析し、それぞれの状況に応じた適切なお知らせを配信するためのキャンバスを多数設計・実行しています。施策の効果検証には、95%のユーザーに施策を配信し、5%をコントロールグループとするバリアントテストやABテストをクイックに実施し、より効果の高いバリアントを特定して配信するといった手法を取り入れています。

解約率の削減や出戻りユーザーの復帰率向上にも注力しており、ナビ利用を促す施策のPDCAを回しながら実施しています。機能アップデートの情報はユーザーの反応も良く、その内容は丁寧に伝えるようにしています。年末年始やゴールデンウィークなど、ドライブやツーリングのニーズが高まるタイミングでは、プッシュ通知やメールでアプリの再利用を訴求しています。

四輪のCOCCHiと二輪のMOTTO GOではユーザー層の特性が異なるため、同じ「無料訴求」でも二輪ユーザーには響きにくいといったインサイトが得られており、趣味性の高いMOTTO GOでは「ワクワク感」や「楽しい体験」に訴えかけるようなコミュニケーションを重視しています。

a timeline of updates for the cocchi app is shown

COCCHIの100万ダウンロード達成を伝えるメール

a diagram showing steps 1 through 6 in a foreign language

状況に応じた適切なお知らせを配信するためのキャンバス設計

Brazeによる施策内容と得られた定量効果を教えてください。

定量的な面では、具体的な施策の効果が顕著に現れています。例えば、サブスクリプション解約ユーザーに向けた再契約促進施策では、施策を行わなかったユーザーと比較して再契約者数が約4倍に増加しました。また、ID登録済であるものの、しばらくサブスクリプション開始をしていなかったユーザー向けに最新のアップデート内容を告知する施策では、メール未開封者に比べてメール開封者の契約開始数が2倍に。過去1年以上未転換だったユーザーがメール施策をきっかけに初CVし、更に「アプリ自体を再度DLし直してくれたユーザー」も散見され、アプリ外のコミュニケーションの有用性も感じました。

MOTTO GOにおいても、チュートリアル完了後、特に何も行動していないユーザーに対し施策を行った結果、トライアルへのコンバージョン率が約15倍となるなど、ユーザーのジャーニーにおける特定のステップを促進する効果が確認されています。コミュニケーションチャネルとしては、メールの開封率が70%を超える施策もあり、お客様とメールとの親和性が高いことが分かりました。

an advertisement for motto shows a man riding a motorcycle

MOTTO GOのチュートリアルのメール例

a woman is sitting at a desk with a laptop computer .

コンシューマサービス統括グループ コンシューマプロダクトチーム CRM 門真 明日香氏

Braze導入による定性的な効果も聞かせてください。

定性的な成果としては、まずデータを十分に収集できるようになり、施策の精度を高めるためのPDCAサイクルを効率よく回せるようになりました。仮説に基づいた計画から施策実行、効果測定、そして分析までをスムーズに行えるようになり、データインテリジェンス部門など他部署とも連携しながら、得られた示唆を次の施策に活かしています。

また、Brazeでデータを紐解いていくことで、ユーザー理解が格段に深まりました。例えば、COCCHiユーザーの出発回数に比べて検索回数が多いことに気づき、アンケートを実施した結果、多くのユーザーが出発前に目的地だけを検索していることが分かりました。このインサイトに基づき、「出発前に検索した目的地は、履歴で確認すればすぐに出発できます」といったメッセージを配信し、出発を促す施策を実施しています。

無料トライアルへの移行を躊躇する理由についても、アンケートで約4割のユーザーが自動課金への心配を挙げていることが明らかになり,自動課金前にトライアル終了通知があることを事前に伝える施策を実施したところ、高いコンバージョン率を獲得できました。このように、得られたインサイトに基づいて具体的な施策を迅速に実行し、効果を上げることが可能になったのです。また、今回の施策内製化により、施策の設計、改善、効果測定のスピードが向上したことも重要な成果です。

今後のBraze活用の展望を教えてください。

Braze活用により、ユーザーの利用状況や契約状況に応じたコミュニケーションが可能になったことは、顧客を深く理解し、エンゲージメントを高めていくという企業文化を創る上で、Brazeが欠かせないツールであることを実感しています。Brazeの高度な機能を活用してさらなるパーソナライズ化を進めたいですし、天気、交通、温度情報など外部情報との連携やジオフェンス活用にも興味を持っています。また、ランディングページ機能の活用を検討中です。この機能を使えば、Webサイトを作成する専門部門や外部に依頼することなく、ランディングページの作成から効果測定までを自分達で完結でき、効果を見ながらスピーディな改善が可能になります。

モビリティの利用方法が多様化している現代において、ユーザー一人ひとりの状況に応じたパーソナライズされたコミュニケーションは、今後ますます重要になります。Brazeの多様な機能を最大限に活用し、ユーザー個々に最適なコミュニケーションを図ることで、COCCHiやMOTTO GOを通じたクルマやバイクのある生活を、より便利で豊かなものにしていきたいと考えています。

ご紹介しているナビアプリはこちら:

a man and two women are posing for a picture in front of a wall with pioneer written on it .

Brazeによるパーソナライズされたマーケティング施策により、サブスクリプションの再契約者数やパイオニアID登録数のコンバージョンは大きく飛躍しました。ユーザー起点のコミュニケーションを重視する企業文化を創る上でBrazeは欠かせないツールだと考えています。

飯間 貴昭氏 パイオニア株式会社 モビリティサービスカンパニー 戦略推進統括グループ 統括部長

Key Takeaways

パイオニア株式会社 モビリティサービスカンパニーの成果

アプリの有償ユーザー獲得に向けて、ユーザーの行動やステータスに応じたマーケティング施策を展開。サブスクリプションの再契約促進施策ではCVが約4倍になりました。


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