公開 2023年6月21日/更新 2024年1月11日/13 分で確認
顧客体験の向上が企業にとって大きな課題となる中、注目度を増している「OMO店舗」。その取り組みを成功させるためには、OMO店舗からどのようなメリットが得られるのかを理解し、自社が推進する目的を明確にすることが大切です。
この記事では、OMO店舗の概要と、企業が得られるメリット、成功のためのポイントや企業事例をご紹介します。
OMO店舗とは、インターネットとの融合により(実店舗だけでは不可能な)新たな価値を提供し、顧客体験の向上を目指す店舗のことです。商品との出会いから手元に届くまでの一部の過程にオンラインならではの利便性が盛り込まれたお店、とも言い換えられるでしょう。
OMO店舗をより深く理解するためには、「OMO」とは何かを理解する必要があります。
OMOとは「Online Merges with Offline(オンライン マージズ ウィズ オフライン)」の略称で、日本語に直すと「オンラインとオフラインの統合」となります。インターネットと実店舗の境目を意識する機会がないほどのシームレスなサービスを提供し、顧客体験を改善していくことを意味します。
OMO店舗とは、このOMOの考え方を念頭に構築された店舗のことです。
以下の記事では、OMOについてさらに詳しく解説しています。OMOの意味とは?オムニチャネルとの違いやメリット、導入事例について紹介
OMO店舗が求められる理由には、以下の3点が挙げられます。
OMO店舗は、上記のような企業課題を解決すること、つまり、顧客のニーズに沿った形でビジネスを展開することを目指すものです。
では、OMO店舗の運営により、企業はどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。
OMO店舗では、オンライン・オフラインどちらの顧客情報も収集できます。例えば、実店舗ではカメラから顧客の行動データ(どの順番で店内を巡ったか、どの商品を手に取ったかなど)を収集。決済にはスマートフォンを使ってもらい、登録情報から年齢・性別・職業などのデモグラフィック変数を獲得。など、多様なデータを蓄積していけます。
オンラインとオフラインが融合したOMO店舗は、実店舗だけやECサイトだけでは不可能であった新しい顧客体験を生み出せます。例えば、オンラインで衣類品を購入する前に店舗で試着できたり、店舗に陳列されている品物のQRコードを読み込むとPR動画が流れたりと、施策は工夫次第でさまざまです。いわゆる「近未来の店舗」として顧客にワクワク感を提供できます。
近年は、スマートフォンでQRコードを読み取るだけ、あるいは装置にかざすだけで決済ができる「キャッシュレス決済」が浸透してきました。キャッシュレス決済への対応は、OMO店舗の実現に向けた比較的実践しやすい取り組みです。「買い物をして帰ろうかと思ったけれど手元に現金がない」といった購買機会の損失を防ぎやすくなります。
OMO店舗の実現に向けた施策を考えることは、いかにして顧客満足度を高めるかを検討することと同じです。前述の商品の試着やキャッシュレス決済への対応など、新たな取り組みを進めることで店舗の利便性は高まります。OMO店舗でデータを収集し、そのデータからさらに新たな施策を立案するなど、顧客満足度を継続的に向上するための好循環が生み出せます。
顧客満足度の向上は、ブランドイメージの改善やファンの増加にも結びつきます。もし自社OMO店舗の先進的な仕組みがニュースとなれば、コストのかからない優れた宣伝にもなるでしょう。
例えば、顧客がデバイスからの位置情報の取得を許可していれば、1ヵ月店舗を訪れていないなど特定の条件を持つ人が店舗の近くを通った際に割引クーポンをスマートフォンに通知する、といったアクションも実行可能です。このような離れつつある顧客の再獲得に役立つ施策を行えるのもOMO店舗の魅力です。
顧客接点を増やし、自社や製品の認知度を高められるのも、OMO店舗のメリットです。実店舗だけ、ECサイトだけで運営するよりも多彩な形で顧客にアプローチできます。若年層向けのSNSでインフルエンサーによる宣伝を依頼するなど、オンラインの活用は新たな顧客層の開拓にも繋がります。
では、OMO店舗を作り上げるためには何が大切なのでしょうか。3つのポイントをご紹介します。
OMO店舗を成功させるためには、顧客とのタッチポイントを増やし、その内容を最適化していく必要があります。
一口に「オンライン」といっても、その内容はさまざまです。SNS、メルマガ、リスティング広告など、顧客と製品の出会いとなる機会は多く存在します。単にオンラインでの宣伝を意識するだけでは取り組みも進みません。現在の自社製品と顧客のタッチポイントを確認し、その課題を解決できるオンライン、あるいはオフラインの施策を検討することが求められます。
データは集めて終わりではなく、分析を進めて初めて効果を発揮します。OMO店舗の利点であるデータ収集の容易さを生かすためには、収集データを一元管理し、活用しやすい環境を作ることが大切です。
具体的な施策としては、特定のツールにデータを一元管理する規則を作ること、マーケティングや営業部門の全員にアクセス権限を与えること、外部講師を招きデータ活用に関する研修を行うことなどが考えられます。
オンラインとオフラインのサービスをシームレスに提供するためには、決済システムや在庫管理システムの導入・連携も必要となります。例えば、ECサイトに近隣店舗の在庫情報を表示できたり、決済まではオンラインで完結できたりするシステムを導入します。結果、品切れによるユーザーの離脱を防げるほか、「明日の仕事の帰りに受け取れるのなら注文しておこうか」などと熱を逃さない購入を期待できるでしょう。
ここでは、OMO店舗に取り組み成功した企業事例をご紹介します。自社がどのようなOMO店舗を目指すべきか、そのアイデア出しにご活用ください。
身近なOMO店舗の事例となるのが、マクドナルドのモバイルオーダーです。
マクドナルドのモバイルオーダーは、公式アプリから事前に注文と決済を行い、指定の時間に店舗を訪れることで、ほとんど待ち時間なしで商品を受け取れる仕組みです。受け取りまでのストレスの軽減はもちろん、スタッフの会計業務の削減やアプリによる顧客情報の収集も実現しています。また、アプリから「購入後アンケート」に答えた顧客に割引クーポンをプレゼントするなど、リピーターを増やす施策としても機能しています。
マクドナルドはおよそ10年前に「60秒以内に商品提供ができない場合に無料券を配布する」というキャンペーンを行うなど、以前から顧客の待ち時間解消に積極的な企業でした。IT技術の進化により念願を達成した好例です。
メガネの販売で知られるZoffは、LINEとの連携を用いたOMOを実現した企業です。店頭を訪れる前にLINEから友だち登録&連携を済ませることで、顧客は以下のようなメリットが得られます。
さらに、オンラインストアと店舗の会員情報の連携にも対応済みです。顧客は、店頭で試着のうえ購入したものと同じ度数のメガネを、オンラインで手軽に検索・追加購入できます。
2つの事例に見られるように、OMO店舗の成功にはスマートフォンが重要な役割を担います。しかし、通知一つを送るにしても、どのような手順を踏むべきか迷ってしまう企業も多いのが実情でしょう。
そのような場合には、直感的な操作で顧客へのアプローチを実現できるカスタマーエンゲージメントツール「Braze」の活用をご検討ください。
Brazeは、マーケティング施策の実行を支援するITソフトウェアツールですリアルタイムに顧客の情報を取り込み、セグメンテーション、簡単なシナリオ設計により、パーソナライズされたプロモーションが可能です。
例えば、最近は店舗を訪れていない顧客にモバイル通知で限定オファーを出して再訪を促したり、リピート客に新商品の発売をお知らせしたりなど、OMO店舗に必要なオンラインとオフライン両方からのアクションにご活用いただけます。
ここでは、Brazeを有効に活用したOMO事例を2つご紹介します。
大手ハンバーガーチェーン「バーガーキング」は、元々マクドナルドの店舗の半径200メートル以内に入ると、バーガーキングのアプリから通知が届き、1セントでハンバーガーが買える割引クーポンが届くというユニークな試みを行っていました。ライバルの店舗を自社の販促に利用しようとするOMO施策です。
しかし、このキャンペーンで成果を上げるためには、「位置情報の取得許可を得る」「不快感を与えないメッセージ送る」などの細心の注意が求められます。そこで、包括的に取り組みを管理できるBrazeを活用しました。
位置情報取得の許可を求める通知を適切なタイミングで送信したり、顧客の心を打つメッセージをA/Bテストを通じて検討したりと施策を進めた結果、320万人の新規ユーザーの獲得と、MAU(月間アクティブユーザー)を53.7%まで上昇させることに成功しています。
バーガーキングがBrazeを活用して、 月間アクティブユーザー数(MAU)を50%強増加
Brazeは店舗を持たないサービスのOMOにも活用いただけます。事例となるのは配車アプリ「nearMe.」を提供する株式会社NearMeです。
「nearMe.」では、一度利用してくれた顧客をロイヤルカスタマーに育てるためにはどうすれば良いのか、すなわち二度目、三度目の利用を促すための施策に悩んでいました。そこで活用したのが、顧客一人ひとりに自在に通知を送れるBrazeです。
Brazeの導入によりフットワークの軽い施策実行が実現し、上記のようなアクションを半年間で100本も行うことに成功しました。メッセージの開封率も50%に達するなど、確かな成果を残しています。
CASE STUDYNearMeが、パーソナライズ施策でカスタマーエンゲージメントを向上させた方法
この記事では、OMO店舗について、その特徴とメリット、成功させるためのポイント、企業事例などをご紹介しました。
OMO店舗のオンラインとオフラインの統合はあくまでも手段であり、その本来の目的には顧客体験の向上があります。OMOを進める他社と同等以上の体験を提供するためには、自社もまた速やかにOMO店舗を用意することが求められています。
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