OMOとは?小売業界での重要性やオムニチャネルとの違い、導入事例についても紹介

公開 2023年6月12日/更新 2024年1月11日/15 分で確認

OMOとは?小売業界での重要性やオムニチャネルとの違い、導入事例についても紹介
作成者
Team Braze

近年、マーケティングの領域においてOMOの重要性が増しています。しかし、既に浸透しているオムニチャネルとの違いや従来のO2Oとの違いを明確に説明できる人は多くはないでしょう。

この記事では、OMOの意味や小売業界での重要性、オムニチャネルとの違い、メリットなどをご紹介します。またOMOの実現事例とともに成功させるためのポイントを解説します。

1. OMOとは?

OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインの融合によって顧客体験(CX)の向上を目指すマーケティング手法です。

OMOでは、実店舗かネットかのチャネルの違いを意識しないシームレスなサービスが提供されます。そこに出現するのは、オンラインとオフラインの垣根を超えて統一感のある顧客体験です。

1. O2Oとの違い

O2O(Online to Offline)とは、インターネット(オンライン)を積極的に活用して、実店舗(オフライン)への来店を促すマーケティング手法です。

O2Oでは、ネットで購入しても実店舗に足を運んでもらえるように、オンラインからオフラインへと顧客を誘導します。

対してOMOでは、顧客の購買行動の起点や動線がオンラインかオフラインかを意識しません。顧客がオンライン・オフラインを自由に行き来する間もシームレスにサービスが提供されるため、ブランドイメージの統一感は失われません。

2. オムニチャネルとの違い

オムニチャネルとは、顧客が接しうるオンライン・オフラインすべてのチャネルを活用して商品・サービスの購買へと導くマーケティング手法です。オムニチャネルでは多様なチャネルを活用しますが、それぞれのチャネルは区別して扱います。

一方、OMOはオムニチャネルから発展した概念ですが、オンラインとオフラインのチャネルを区別せず融合させます。顧客にとっては、意識せずにオンライン・オフラインを行き来できる点がオムニチャネルと異なります。

さらにOMOでは、購買前の検討段階から購買後の利用段階までのすべてのフェーズで顧客体験の向上に着目する点にも特徴があります。

2. OMOが注目されている背景や小売業界で重要視される理由

OMOが小売業界において重要視される背景には、市場やテクノロジーの急速な変化があります。

1. ECサイトをはじめとするネット販売市場の拡大

スマートフォンの普及は、ECサイトなど、店に足を運ばなくても買い物ができるネット販売市場を大きく広げてきました。小売業界においても多くの購買活動がインターネット上で行われるようになり、OMOのベースとなりうる顧客や購買活動に関するデータの収集や分析が可能な環境が整ってきています。

2. AIやIoTの発展

AIやIoTなどの先端テクノロジーの発展も、小売業界におけるOMOの実現に貢献しています。AI・IoTの技術は、オンライン・オフラインを超えたシームレスな購買体験や、OMOに欠かせないキャッシュレス決済などを幅広く支えています。

特にキャッシュレス決済の普及は、顧客にとっては手軽な決済手段の選択肢を、企業にとってはポイント還元やクーポンなどと組み合わせた顧客体験向上のための手段を増やすことに繋がっています。

3. 購買行動の変化

顧客の購買行動は、オンラインとオフラインを自由に行き来しています。ITの進化によって境界線の意識は薄れつつあります。それに合わせて、顧客のブランド体験もオンラインとオフラインの区別なく提供されることが求められるようになってきました。

さらに小売業界では、物理的な価値だけではなく、高揚感や満足感が得られるブランド体験が重視されるようになってきました。マーケティングにおけるゴールも、商品購入後の顧客体験までを見据えた設計が不可欠となっています。

こうした小売業界におけるさまざまな変化が、OMOの注目度をさらに高めていると考えられます。

3. OMOのメリット

ここで、企業にとってOMOを実現することで得られるメリットを確認しましょう。

1. 顧客視点でのサービスを提供できる

顧客は自らの購買行動において、どこからがオンラインでどこからがオフラインかという境界線を意識していません。一方リアル店舗からスタートした多くの企業においては、オフライン事業とオンライン事業の担当部署が分かれていたり、それぞれ取得するデータが分離したままであったりするケースが見られます。

OMOでは、すべてのチャネルのデータを分析し、オンライン・オフラインを超えて提供する顧客体験を設計することで、より顧客視点でのサービスが提供できるようになります。

2. CXの向上に繋がる

OMOの導入によって、顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供できるようになります。顧客は「これは自分のための商品やサービスだ」と感じられるようになります。

小売業界においては、商品やサービスだけで他社との差別化を行うのが難しい現状があります。そこでOMOによって顧客のオンラインとオフラインのデータを統合し、シームレスな自社独自のブランド体験を提供することで、顧客体験(CX)の向上が期待できます。

CXについては以下の記事でもくわしく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?向上のためのポイントや成功への道筋について

3. 機会損失を最小化できる

OMOによって、企業は購入前や購入後も顧客の動向を知ることができます。

どのチャネルにいる顧客についても、「商品(サービス)がほしい」と思う瞬間を適切に捉えてアプローチできるため、機会損失を最小化することができます。

4. リピート客の増加・LTVの最大化に繋がる

OMOでは、単発の売上だけではなく、継続的な購入、すなわちLTV(顧客生涯価値)の最大化が期待できます。オンラインとオフラインを超えた顧客体験の価値が高まれば、商品のファン化に繋がり、「またここで買いたい」と思ってもらうことができるからです。

LTVについてさらに知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

LTVの重要性や顧客の定着化を図るために−計算方法や高めるためのポイントについても紹介

【関連用語】LTVについてはこちら

5. ブランドイメージの向上や新規顧客の獲得に繋がる

顧客はOMOによって、ECサイトでもリアル店舗でも統一感のあるブランドメッセージを受け取ることができます。そのメッセージは、顧客の興味や嗜好を踏まえてパーソナライズされ、それぞれの顧客に適したチャネルから、適切なタイミングや頻度で送られてきます。

こうして顧客が質の高い顧客体験を味わい、高い満足感を得ることができれば、ブランドイメージは着実に向上していきます。さらに、満足度の高い顧客体験がSNSなどの口コミを通して広く知られることによって、新規顧客の獲得に繋がっていくことも期待できます。

4. OMOに取り組むポイント

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1. ユーザーファーストな視点での店舗作り

利益やブランドとしてのビジョンなど、企業視点からのアプローチだけでは、顧客の気持ちを捉えることができません。OMOの手法を有効活用するためには、常にユーザーファーストの視点を持ち、どういったアプローチが顧客に響くのかを考える必要があります。

ユーザーファーストな視点が求められるのは、ECサイトやメルマガなどオンラインの世界に限りません。顧客がリアル店舗を訪れたからこそ得られるような、質の高い顧客体験が提供できる店舗作りも、OMOでの重要なポイントとなります。

2. 顧客接点を増やすための対策

オンライン・オフラインを超えた顧客の購買行動を理解するには、顧客との接点を増やす必要があります。そこで重要になるのが収集するデータです。情報を集めれば集めるほど顧客情報のセグメント(属性)や状態別に把握することが可能となり、顧客との関係性をより深めることへと繋がります。

3. OMO実現を可能にするICTの活用

OMOでは、すべてのチャネルにおける顧客や購買体験データを一元的に収集・分析することが求められます。顧客の幅広い関心や購買前・購買後もカバーできる長期の購買行動を把握し分析するためのICTの選定と活用は、OMOの実現において不可欠です。

4. 長期的な視点に立った体制作りと方針決定

OMOを実現するには、店頭やECなどチャネル別に積み上げたデータを連携させるため、システムの統合や改廃が必要となります。

OMO導入後も、顧客の行動データの蓄積や分析、新たな課題の洗い出し、対策・改善のために、継続的にPDCAを回すことが重要です。

OMOの実現にあたっては、店舗やシステムに加えて、自社の体制づくりがカギとなります。

短期的な視点だけではなく長期的な方針を共有し、運用までを踏まえた組織や体制を構築し、継続的に運営していくことが求められます。

5. OMOの実現にはツールの活用がカギ

オンラインとオフラインの境界線を融合するためには、すべてのチャネルから取得した多種多様かつ大量の情報を統合する必要があります。オンライン上の行動データだけでなくオフラインの行動データも加えることで、顧客の体験価値をより向上させることができます。

そこで重要となるのが、顧客のオフライン上での行動もデータ化できるようなアプリの存在です。さらに、オンライン・オフライン双方のチャネルごとに収集した顧客データを一元管理し、包括的な分析が行えるツールも必要です。

Braze は、「顧客の声」として、数多くの接点から顧客のデータを取り込みます。収集したそのデータを活用して顧客を分類し、メッセージやキャンペーンをそれぞれの顧客に合ったものに最適化します。最適化されたメッセージは、適切なチャネルから、適切なタイミングで送れます。

こうした継続的な活動が質の高い顧客体験を生み出し、ブランドに対する顧客のロイヤルティを高めることに繋がるのです。

6. OMOの成功事例

事例1

BEAMSは、OMOが加速するアパレル業界のなかでも、いち早くOMOを導入し成功しています。別々に管理されていた実店舗の会員データとECサイトの会員データを統合することで、オンラインとオフラインで一貫したサービスの提供を可能にしました。

また、購入した商品のスタイリングを提案するなど、購入後も役立つ情報を発信することで、パーソナライズ体験を提供しながら顧客のエンゲージメントを高めていくことに成功しています。

事例2

OMOを導入したワイン通販サイトでは、ソムリエがワインを勧める体験をオンラインで実現することで、商品購入率の向上につなげた事例があります。

商品の購入履歴や閲覧履歴から独自の「味わいデータベース」を作成し、好みに合わせたおすすめ商品を表示させます。その結果、顧客満足度の向上に繋がり、LTVの向上に貢献しています。

事例3

アメリカの小売業界最大手ウォルマート(Walmart)では、OMOを活用して「ピックアップタワー」を構築しました。ピックアップタワーは、お客さまがWeb上で事前に購入した商品を店舗で受け取れる巨大な商品受け渡しの機械です。注文後に発行されるバーコードをかざせば、10秒以内に商品を受け取ることができます。

7. Braze導入での成功事例

OMOの実現には、有効なツール選びと活用がカギとなります。ここでは、Braze導入によるOMOの成功事例をご紹介します。

1. Brazeの導入事例1

The Coffee Clubでは、クロスチャネルアプローチによってロイヤルティ会員の売り上げが35%増加。アプリ評価も向上しました。

世界9ヵ国で店舗を展開するオーストラリア最大のカフェフランチャイズチェーンであるThe Coffee ClubのOMOの取り組みは、点在していた顧客情報を統合することで一貫したコミュニケーション展開を実現した事例としてよく知られています。

The Coffee Clubでは顧客データベースの活性化やデジタル活用が課題でしたが、オウンドメディアの閲覧履歴、購買データ、実店舗でのPOSデータ、クーポン情報を統合することで顧客体験の改善を図りました。また、誕生日のフリードリンククーポンなど、ロイヤリティプログラムを効果的に施すことで、ファン化とLTV向上に成功しています。

The Coffee Club、クロスチャネルアプローチでロイヤルティ会員の売上が35%増加、アプリ評価も向上

2. Brazeの導入事例2

バンダイナムコアミューズメントでは、新設のDX部によってデジタルと店舗の強みを融合した新しい顧客体験を提供することに成功しました。

同社は以前はリアル店舗での接客を得意としていましたが、リアル店舗で味わえるような接客体験をデジタル上でも提供するためにBrazeを導入。合わせて、別々の部署だったオンライン事業とオフライン事業の担当部署を、組織を再編して一つの事業組織にまとめました。そのうえで、オフラインもオンラインも区別なく利用する顧客について横断的なニーズをしっかり理解するために、Brazeを活用して購買行動を可視化しています。

Brazeにさまざまなチャネルからのデータを集約するだけでなく、顧客とのコミュニケーションも一本化することで、オンライン・オフラインを横断したトータルな顧客体験の提供を目指しています。

こうした取り組みによって、パーソナライズしたメールの手動開封率が2倍になるなど、OMOによる顧客エンゲージメント向上の成果を上げています。

バンダイナムコアミューズメント新設のDX部が目指す、デジタルと店舗の強みを融合した新しい顧客体験

8. まとめ

オンラインとオフラインの顧客データを統合するだけではOMOの実現には繋がりません。どのデータを活用してどのような顧客体験(CX)を提供するのかについて顧客視点からの設計が求められます。

日本では、プロダクト中心の施策を重視している企業が多くあります。ところが、商品やサービスそのものでの差別化が難しくなっている現在、顧客視点でブランド体験価値を設計しなおす必要に迫られています。

時代とともに顧客の購買行動はオンラインとオフラインの垣根がなくなり、モノ消費からコト消費へとシフトしています。付け焼刃でシステムを導入していくのではなく、中長期な運用を踏まえたうえでツールを選ぶことが肝心です。

Braze の包括的なカスタマーエンゲージメントプラットフォームを活用することで、顧客のリテンション、ファン化からLTV向上が実現できます。

ぜひWebサイトの情報をチェックしてください。

カスタマーエンゲージメントで一人ひとりに最適化されたブランド体験を提供する

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