公開 2025年6月19日/更新 2025年6月19日/10 分で確認
いま、DX推進は多様な業界で叫ばれています。それは小売業界においても同様ですが、小売の場合、業界特有の事情のため、より喫緊の課題となっています。
この記事では、小売業界のDXについて、背景や現状、課題やメリット、成功事例やおすすめのITツールをご紹介します。
小売業界のDXとは、IT技術やデータの活用を通じて小売業者がビジネスモデルを変革する取り組みのことです。以下が代表例として挙げられます。
DXの特徴は、業務の一部をデジタル化するだけではなく、企業の在り方にさえ踏み込むような改善を目指す点にあります。顧客に新しい価値を提供したり、自社業務の流れを抜本的に変えたりなど、大規模な変更を理想とします。
DXは幅広い業界で求められる取り組みですが、小売業界でDXが求められる背景には業界特有の事情もあります。
スマートフォンの浸透もあり、顧客が商品の情報を集めたり購入したりする手段は多様化しています。
競合他社と比較した際に優位性を保つためには、良い商品を良い価格で店頭に置くだけでは不十分であり、デジタルデータをもとにした顧客ニーズの把握や適切なマーケティング手段の検討が鍵となります。
厚生労働省の「令和6年上半期雇用動向調査結果」によれば、2024年6月末時点における卸売業・小売業の未充足求人数(業務に必要な人手を補充するための求人人数)は270.6千人におよぶとされています。この数値は全業界のなかでもっとも大きく、小売業の深刻な人手不足の状況が示されています。
小売業界のDXの取り組みには業務の効率化や省人化を実現できるものもあり、人手不足の解決策として期待されています。
小売業界では、POSシステムなどに一昔前の製品が長く利用されているケースもあります。老朽化したシステムはメンテナンスの費用がかさむだけでなく、セキュリティリスクの面からも問題です。そうしたリスクを回避する手段としても効果を発揮します。
競合の小売業者がデータをもとに販売施策を検討しているなら、自社もまたデータドリブンな経営判断を進めることがその対抗策となります。顧客の属性、曜日や時間別の販売数、クーポンや割引キャンペーンの効果など、データの収集や分析を行えるシステムの導入が求められています。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査レポート「DX動向2024」によれば、業界別のDXの取り組み状況は以下の通り報告されています。
(引用:IPA「DX動向2024」)
流通業・小売業では、「全社的に取り組んでいる(約30%)」、「一部の部門において取り組んでいる(約22%)」、「部署ごとに個別に取り組んでいる(約18%)」と、全体の約70%の企業がDXに取り組んでいると回答しています。金融・保険業や製造業にこそ後れを取っているものの、DXが浸透しつつある業界だといえるでしょう。
約7割の企業がDXに取り組んでいる小売業界ですが、一方ではDXに向けた課題も浮き彫りになっています。
DX成功のためには、業界の慣習や実情も理解したIT人材の確保が欠かせません。しかし、そのような人材は需要が高く、待遇の良い大企業に集中しがちです。
対策として既存社員をIT人材に育成する方法もありますが、そのためには研修や教育のための環境作りが必要であり、コストも時間もかかります。
ビジネスモデルの変革までを目指す小売業のDXでは、求められる予算も高額となります。
しかし、取り組みが革新的なものであるほど費用対効果や長期的なビジョンは予測しづらく、金融機関からの資金調達において足かせとなりがちです。
DXで新たなITツールや機器を導入する際には、既存システムとの円滑な連携も重要となります。
既存システムのうち今後も利用するべきものはどれか、新システムは既存システムと連携ができるか、などを慎重に検討していくことが大切です。
ではあらためて、小売業界でDXを進めるメリットを確認していきましょう。
DXは従来のビジネスモデルでは考えられない規模の業務改善を可能とします。例えば、電子棚札によるダイナミックプライシングを利用すれば、手作業で変えていた値札を瞬時に、かつ一括で適切な価格に変更できます。
DXの進行によりデータ活用が進むと、顧客の要望を把握しやすくなります。「製品Aを購入した顧客に新商品Bの登場をプッシュ通知する」など、興味のありそうな顧客にだけ宣伝をするなど、一人ひとりのニーズに適した訴求も実現できます。
小売業務の一部をシステムによる自動化に置き換えていくことは、ヒューマンエラーの削減にも寄与します。「仕入れ在庫数のゼロを一つ多く書いてしまった」などのミスを減らし、業務の安定化を目指せます。
小売業界のDXには、商品を購入するまでの顧客体験が一変するものも存在します。店頭の商品タグをスマートフォンで読み取ってレビューを確認したり、オンライン購入した商品を実店舗で待ち時間なく受け取ったりと、その体験は工夫次第で多種多様です。
このようなオンラインとオフラインの融合した顧客体験はOMOと呼ばれており、近年の小売業界におけるホットワードの一つです。詳細は以下の記事でご確認ください。
>>OMOとは?小売業界での重要性やオムニチャネルとの違い、導入事例についても紹介
>>小売業におけるCXの重要性とは?向上させるポイントやメリットについて解説
続いて、小売業界でDXに成功した事例をご紹介します。
大型ショッピングモールで有名なある企業では、自社の公式アプリで店舗内の混雑状況を確認できるユニークなシステムを提供しています。
本システムでは、店舗全体や主要な売り場の混雑状況をパーセンテージで表示。「今は食品売り場が混んでいるから後にしよう」「フードコートが空いているからお昼を食べよう」など、顧客がストレスなく行動できるように工夫されています。
圧倒的な低価格販売で有名なあるスーパーチェーンでは、AIカメラと電子棚札の組み合わせによるダイナミックプライシングを実現しています。
このシステムでは、カメラの映像から弁当の売れ行きを測定し、AIが割引の是非を決定。例えば、AIが20%値引きにするべきだと判断すると、レジや電子棚札に指示が送られ、価格が一括で変更されます。売り上げの最大化はもちろん、食品ロスの軽減にも役立つ仕組みです。
小売業界のDXの形はさまざまですが、自社アプリやECサイトを通じてオンラインと実店舗の顧客体験を組み合わせる方法が代表例の一つです。
マーケター支援ツール「Braze」は、小売業者がオンライン・オフラインの双方から売り上げを改善するための手段として活躍します。例えば、店舗とECサイトそれぞれの販売情報や顧客データをBraze内に取り込み、集約することが可能で、お客さまに対して適切なメッセージをチャネルを跨いで、シームレスにコミュニケーションを取ることが可能です。
ほかにも、実店舗の近くを通りかかった顧客に対して自社アプリから今すぐ使える割引クーポンをプッシュ通知するなど、新時代の顧客体験も提供できます。まずは以下のリンクより、貴社のDXに向けた要望やイメージをお聞かせください。
小売業界のDXとは、アプリと実店舗の連携など、IT技術によって小売業界のビジネスモデルを変革する取り組みを指します。その成功に向けては、適切なITツールの導入が近道です。
Brazeでは、小売業者のDXやマーケティングに役立つ施策・アイデア集も提供しています。自社がどのようなDXを目指すべきなのか、その形を見つける最初の一歩としてぜひご活用ください。
>>ひらめきアイデア大全 リテール・Eコマース業界向け マーケティング施策30選
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