公開 2025年6月18日/更新 2025年6月18日/11 分で確認
新しい顧客体験の提供は企業にとって常に必要な取り組みですが、その創出に頭を悩ます企業にとって、BOPIS(ボピス)の導入は一つの解決策となるかもしれません。
この記事では、BOPISの定義や重要性、Click&Collectとの違い、企業視点・顧客視点のメリット、導入の準備や事例、おすすめのITツールをご紹介します。
BOPIS(ボピス)とは、顧客がオンラインで購入した商品を実店舗で受け取る販売形式のことです。「Buy Online Pick-up In Store」の略称であり、日本では「店舗受け取り」とも呼ばれています。
BOPISの仕組みは多くの店舗で導入されています。以下はその代表的な流れです。
Click&Collect(クリックアンドコレクト)とは、顧客がオンラインで購入した商品を自宅以外の場所で受け取る販売形式のことです。
BOPISとClick&Collectの違いは定義の広さにあります。
オンラインで購入した商品を実店舗で受け取ること。Buy Online Pick-up In Storeの略称
オンラインで購入した商品を自宅以外で受け取ること
BOPISが実店舗での受け取りを指すのに対して、Click&Collectは駅の宅配ボックスやコンビニエンスストアなど、店舗以外での受け取りも含みます。すなわち、BOPISはClick&Collectに含まれる販売形式ということになります。
BOPISの導入が進んだ背景には、新型コロナウイルスによる生活様式の変化があります。長時間の店舗滞在が敬遠されるなか、滞在時間や人と人との接触を減らせる仕組みとして浸透しました。
BOPISには、企業と消費者のどちらにとっても店頭販売や通販とは異なるメリットがあり、コロナ禍が落ち着きを見せはじめた現在もますます重要視されています。
では、BOPISには具体的にどのようなメリットがあるのか、まずは企業視点でご紹介します。
自社へのBOPISの導入は、それだけでBOPIS非対応の競合他社に対する差別化となります。立地によっては、店舗受け取りを希望する商圏内の潜在顧客を丸ごと自社に取り込める可能性も秘めています。
BOPISの導入は、店頭でレジ業務を担うスタッフの人件費や通販の送料など、各種コストの削減に寄与します。特に物流関連コストの削減は、物流業界における2024年問題の顕在化や燃料費の高騰が課題となる現在において有効に働きます。
オンライン完結では不可能な顧客との対面コミュニケーションが取れる点もBOPISの魅力です。不安やお困り事がないか直接問いかけができるなど、親身な顧客対応が無形の商品価値として提供できます。
BOPISは顧客単価の向上にも効果的です。EC配送や返品のシステムを取扱うDoddle社の調査によれば、2018年の米国において、BOPISの利用時についで買いをした顧客の割合は約85%にも上りました。また、そのうち約15%の顧客は、しばしばついで買いをするとも回答しています。
参考:Retail Dive「Most BOPIS shoppers make additional purchases in store」
BOPISの導入は顧客のニーズを満たすことに繋がり、顧客満足度の向上にも影響します。店頭で選ぶ時間がない、実物を確認したい、レジ待ちの時間を減らしたいなど、多様な要望に応えられます。
以下の記事では、顧客満足度や類似の用語である顧客ロイヤルティについて解説しています。
>>顧客ロイヤルティとは?顧客満足度との違いや向上させるメリットについて解説
ここまでご紹介したBOPISのメリットは、いずれも自社の魅力やブランド価値を向上させるものです。「店頭受け取りができるなら試しに○○で買ってみようか」と新規顧客の拡大を期待できます。
続いて、BOPISの消費者視点のメリットも見ていきましょう。
BOPISの店舗受け取りでは、見返りとして送料無料をインセンティブとするケースが主流です。前述のDoddle社の調査では、BOPISの利用理由として約48%の顧客が送料の節約を挙げており、消費者の心をくすぐる訴求となります。
商品の受け取りのみを店舗で行うBOPISでは、店内への滞在時間も短くなります。仕事のお昼休憩中に決済し帰宅途中に店舗で素早く商品を受け取るなど、通販や店頭購入のみでは不可能な顧客体験を提供できます。
せっかく店舗に足を運んだのに目当ての商品が品切れしていた場合、顧客は自社や店舗に対してネガティブな印象を持ってしまいます。しかしBOPISであれば、商品の確保はオンライン決済時に行える形が多く、店頭への訪問が無駄足となるリスクを減らせます。
通常BOPISでは、受け取り可能な日時を配送業者の時間指定のお届けよりも広く設定できます。数日中など約束の期限を超過しない範囲であれば、ほかの用事と無理なくまとめて受け取りに行けます。
では、BOPISを自社に導入するための準備には何が必要なのでしょうか。必要な内容は多岐にわたりますが、ここでは基本となる考え方をご紹介します。
BOPISの実現には、ECサイトと実店舗それぞれに準備が求められます。ECサイトに店舗受け取りのボタンを設置するだけではいけません。少なくとも以下の仕組みは求められるでしょう。
【ECサイト側】
【店頭側】
BOPISを円滑に機能させるためには、注文や在庫の情報をリアルタイムで取扱えるシステムの導入が欠かせません。万が一、ECサイトで注文したはずなのに店頭で商品が確保できていないといったことがあると深刻なクレームに繋がる可能性があります。OMS(受注管理システム)やWMS(倉庫管理システム)の利用を検討しましょう。
大規模なBOPISに挑戦する場合は、専用倉庫のロケーション管理(倉庫内の商品位置の管理や効率化)も重要となります。注文商品を素早く取り出し店舗に配送するための最適な手順を用意する必要があります。
BOPISの導入にあたっては大きく2つの注意点もあります。
前述の通り、BOPISではレジスタッフの会計業務の負担を減らすことが可能です。しかし一方で、商品の確保やお問い合わせへの対応、受け渡し作業などの新たな業務負担が生じます。
導入の頓挫を避けるためには、マニュアル作成や研修の実施、業務フローの見直しなど、現場に負担を押し付けない全社的な取り組みが求められます。
BOPISでは、受け渡し用の商品を誤って販売しないように取り置きしておくスペースが必要です。自社の実店舗・ECサイトの販売規模も考慮しつつ、どの程度の広さのスペースをどこに確保するのか検討しましょう。
続いて、BOPISの導入事例をご紹介します。
質の高い作業服の販売で有名なある企業では、配送コストの削減に関して消費者と自社の両方にメリットのあるBOPISの導入を実現しています。
同社のECサイトの送料は全国一律で850円ですが、税込み1万円以上の購入、もしくは店頭受け取りの場合は送料無料としています。結果、顧客の約7割が店頭受け取りを選択するなど、実店舗への誘導に成功しました。また同社では、将来的には店頭受け取りのみへの一本化(配送の廃止)も視野に入れていると公表しています。
ある回転寿司チェーンでは、店頭に設置した専用ロッカーで寿司を受け取り持ち帰りできるユニークなBOPISを導入しています。
同サービスでは、ネットでクレジット決済を済ませた顧客に対してQRコードを配布。店頭では、ロッカーの端末にそのコードを読み込ませるだけで、自分の注文したお寿司を待ち時間なく受け取れます。
前述の通り、BOPISの成功には、リアルタイムに情報を処理できるシステムの導入が必須です。その手段としてBrazeの導入をぜひご検討ください。
マーケター支援ツールの「Braze」では、BOPISの重要性をいち早く認識。すでにBrazeでBOPISを実現するための流れを構築しています。
具体的には、オンラインで商品が購入されるとBrazeを通じて店舗に即時に通知が届きます。それを受け、店舗のスタッフが商品をスマートロッカーに確保。顧客にプッシュ通知を配信し、商品が受け取れるようになったとお知らせする、といったことが可能になります。
Brazeを通じたBOPISの実現に関しては、以下の記事をご覧ください。
>>Braze City × City Japan 2023 セッションレポート_Brazeで実現する次世代リテール体験
BOPISとは、オンラインで購入した商品を実店舗で受け取る販売形式のことです。コロナ禍をきっかけに浸透しましたが、通販や店頭販売とは異なる魅力があることから、近年あらためて重要性が注目されています。
Brazeでは、リテールやEコマースの企業向けに最新のマーケティング施策の知見を提供しています。以下のリンクよりお気軽にお進みください。
>>ひらめきアイデア大全 リテール・Eコマース業界向け マーケティング施策30選
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