小売業界の顧客エンゲージメント:実際のキャンペーンと成果
公開 2026年5月07日/更新 2026年5月07日/15 分で確認


Team Braze
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最も成功している小売・リテールブランドは、必ずしも最大規模のマーケティング予算を持つブランドとは限りません。『2026 リテール カスタマーエンゲージメントレビュー』によると、ブランドが顧客のニーズや欲求を正確に予測できた場合、消費者の購買率は23%高まります。
顧客が再び来店するかどうかは、大規模なキャンペーンそのものよりも、その「合間」の瞬間にブランドがどのような行動をとるかに左右されます。つまり、重要なタイミングで、その人にとって本当に関連性のある体験を提供できるかどうかです。これは派手なキャンペーンより構築が難しい一方で、より持続的な価値を持ちます。そして、他のブランドがどのようにそれを実現しているかを知れば、そのアプローチはより明確になるでしょう。
本記事では、Brazeを活用して顧客エンゲージメントと事業成果を向上させた小売・eコマースブランドの実際のキャンペーン事例を紹介します。彼らがどのような施策を構築し、なぜそれが成功したのか、そしてあなたのプログラムに活かせるポイントについて解説します。
小売業界向け顧客エンゲージメントとは?
小売業界向け顧客エンゲージメントとは、ブランドがデジタル・実店舗を問わず顧客と接するすべてのやり取り・インタラクション、そしてそれらがどれだけ適切なタイミングで、パーソナライズされ、つながりを持って設計されているかを指します。
目的は、継続的な購買行動を促進することです。これは、初回アプリ起動やWebサイト訪問から始まり、ロイヤルティ、再エンゲージメント、その間のあらゆる接点を含む、顧客ライフサイクル全体に及びます。
小売顧客とのエンゲージメントにおいて最も効果的なタイミングとは?
実際の事例をご紹介する前に、顧客エンゲージメント施策において特に高い効果を持つタイミングを確認しましょう。
たとえば、
- カート放棄
- 未使用のロイヤルティ特典
- ウィッシュリスト商品の再入荷
といった瞬間です。こうした顧客ジャーニー上のタイミングは、購買意欲が最も高い場面であり、適切なタイミングかつ関連性の高いメッセージは、コンバージョン率、リテンション、顧客生涯価値に大きな影響を与えます。
- カート放棄・閲覧離脱:購入せずに離脱した顧客は、明確な購買意図を示しています。閲覧商品に基づいたパーソナライズフォローアップは、関心が薄れる前に購入を取り戻す機会になります。
- 再入荷通知:ここではスピードが重要です。在庫更新直後にトリガーされた通知と関連商品レコメンデーションを組み合わせることで、顧客の不満をコンバージョン機会へと変えることができます。特に商品が話題化している場合、その効果はさらに高まります。
- ロイヤルティ特典利用期限:利用されない特典は、顧客との重要な接点を逃している状態です。適切なタイミングでリマインドを行うことで、ロイヤルティプログラムを機能させ続けることができます。
- ライフサイクルの節目:誕生日、記念日、購入後のフォローアップは、宣伝色よりもパーソナルな体験として自然にアプローチできる好機です。
- アプリ内体験:探しゲームやインタラクティブキャンペーンなどは、アウトバウンドメッセージに依存せず、アプリ内での継続利用頻度を高めます。
- ウィンバック施策:行動データを活用することで、顧客が離脱し始めているタイミングや、完全離脱前に、再訪を促す最適なメッセージを早期に把握できます。
顧客接点の瞬間 | 具体例 | 顧客エンゲージメント施策 | 次に顧客が取る行動 |
|---|---|---|---|
カート放棄・閲覧離脱 | 商品をカートに残したまま離脱、購入せずにカテゴリを閲覧、同じ商品を複数回閲覧 | 閲覧・検討中の商品を明示したパーソナライズドトリガーメッセージを配信。在庫が少ない場合は緊急性も付加 | 購入完了のために戻る、または関連商品を引き続き閲覧 |
再入荷アラート | ウィッシュリスト商品が再入荷、欠品していたサイズやバリエーションが補充 | 商品の再入荷通知をプッシュ通知またはメールで配信し、関連するおすすめ商品も提示 | 商品をカートに追加、レコメンド商品を閲覧、またはアラートを共有 |
ロイヤルティ特典利用タイミング | ポイント失効間近、月次特典未使用、次ランク到達が目前 | 会員ステータスに応じてパーソナライズされたプッシュ通知・メールを特典利用期間中に段階的に配信 | 特典を利用、アプリに再訪、次ランク到達のために購入 |
ライフサイクルイベント | 誕生日、購入記念日、初回購入後フォローアップ | 節目に合わせたパーソナライズされたメッセージを、関連オファーやコンテンツとともに配信 | オファーに反応、ロイヤルティプログラム参加を深める、リピート購入 |
アプリ内体験 | 宝探し、インタラクティブゲーム、1年振り返りキャンペーン | アプリ起動時やロイヤルティステータスに応じて、アプリ内メッセージやコンテンツカードを表示 | ポイント獲得、SNS共有、セッション頻度向上 |
ウィンバック(再活性化) | 60日以上購入なし、開封率低下、ロイヤルティ会員の離脱兆候 | 非アクティブ期間を基に行動トリガーを設定し、関連性の高いインセンティブやパーソナライズドレコメンドを配信 | ブランドとの再接点、購入再開、または配信停止(いずれにしてもリスト精度向上) |
小売業界における顧客エンゲージメントを高める方法:先進ブランドの実例
高い顧客エンゲージメントの成果を上げている小売ブランドには共通点があります。それは、顧客が“今”何をしているかに反応し、その行動シグナルをクロスチャネルの顧客ジャーニーへつなげていることです。次の事例では、ロイヤルティ、SMS、AI活用パーソナライゼーション、アプリ内体験など、さまざまな形でそれがどのように実践されているかを紹介します。
e.l.f.、モバイルアプリ利用率125%増で顧客エンゲージメントを強化
e.l.f. Beautyはデジタルネイティブなコスメブランドであり、2024年11月時点で23四半期連続の純売上成長を記録し、2024年3月には年間純売上10億ドルを突破しました。その成長の中核を担っているのが、530万人以上の会員を抱えるロイヤルティプログラム「Beauty Squad」と、クリエイティブな顧客エンゲージメントを支援機能ではなく競争優位性として捉えるCRMチームです。
課題:e.l.f.は、デジタル顧客エンゲージメントをさらに深め、ロイヤルティプログラムの利用拡大を促進するとともに、これまで十分に活用できていなかったモバイルチャネル、特にプッシュ通知とSMSへの展開を強化したいと考えていました。既存のキャンペーンは成果を上げていたものの、適切なクロスチャネル基盤があれば、さらに大きな成長余地があることをチームは認識していました。

戦略:BrazeおよびBraze AlloysパートナーであるStitchと連携し、e.l.f.は主要なライフサイクル接点を、より連携性の高いクロスチャネルの顧客ジャーニーへと再構築しました。
それまで単一のメール施策として運用されていた月次ロイヤルティリキャップは、Beauty Squad会員に期限付き特典の利用を促すものでしたが、これを2段階の顧客ジャーニーへ進化させました。メール配信後、まだ特典を利用していない会員に対して数日後にプッシュ通知を送ることで、行動喚起を強化しました。
このプログラムを特徴づけたのは、クリエイティブへの強いこだわりです。チームは、アプリ内メッセージとプッシュ通知を活用し、アプリ内スカベンジャーハントを構築しました。顧客はキャンバスで設計された顧客ジャーニーに沿って、アプリ内の特定ページに隠されたヒントをたどりながら、交換可能なポイントを獲得できます。この体験は、アプリ利用習慣とセッション頻度を高めながら、アプリ自体を顧客体験の中心に据える役割を果たしました。

最も野心的な施策は「Beauty Squad Replay」でした。これは、ロイヤルティ会員向けに提供されたパーソナライズされた1年振り返り体験であり、カスタムHTML、JavaScript、Liquidを活用して構築されました。各ユーザーには、それぞれ固有の2024年の実績を反映した28画面構成のアプリ内メッセージが表示され、その後、21枚の個別コンテンツカードによるランディングページへとつながります。さらに、会員は自身のカードをSNS上で直接共有でき、ロイヤルティ施策をブランド認知向上へと発展させました。

成果:
- 2023年3月〜9月で月間モバイルアプリ利用率125%増加
- 2023年から2024年にかけてロイヤルティ特典利用率58%増加
- Beauty Squad Replay参加者の25%がSNSでカードを共有
- Stitchとの提携開始後3週間で、単一キャンペーンによる顧客エンゲージメントが102%向上
e.l.f.のプログラムは、顧客エンゲージメントを創造的な専門領域として扱い、それを支えるデータ基盤を整備することで、あらゆるチャネルにわたり高度で拡張性のある顧客エンゲージメントの実現を示す好例となっています。
メルカリが実践するプロアクティブな顧客エンゲージメント
メルカリは、米国最大級のリユースプラットフォームのひとつで、ファッションから家電まで幅広いカテゴリで数百万の買い手と売り手をつなぐ、C2Cマーケットプレイスアプリを提供しています。メルカリのCRM Technical ManagerであるKenadee Hatch氏は、ブランドがどのようにリアクティブな顧客対応から、よりプロアクティブな顧客関係へと進化してきたかについて語っています。
BrazeAI™、キャンバス、コンテンツブロック、LPを活用することで、Mercariは柔軟かつ拡張性の高いプロモーション施策を構築し、エンジニアリングリソースに依存することなく、チームがより創造的に施策を展開できる環境を実現しました。
SephoraのSMS進化:5つのプログラムを1つのプラットフォームで統合
Sephoraは、豊富な商品ラインナップ、専門性の高いサービス、そして実験文化で知られる世界的なプレステージビューティーのオムニチャネル小売ブランドです。2021年に入社したSr. Marketing Manager of Mobile MarketingのAubrey Jackson氏は、SMSプログラムをゼロから再構築する大きな役割を担いました。
課題:Sephoraは、複数の事業領域にまたがるSMSプログラムを迅速に再構築・拡大する必要がありました。同時に、新しい施策のたびにエンジニアリングチームのバックログに依存しない体制も求められていました。
戦略:Brazeを活用し、Jackson氏はSephoraのSMSプログラムを再構築。2年半の間に、事業全体で5つの異なるSMSプログラムへと拡大しました。キャンバス、Liquid、コネクテッドコンテンツ、Webhookを活用することで、チームはモバイルチャネル全体でキャンペーンを柔軟に設計し、各アクションが顧客にとって持つ意味に応じて顧客ジャーニーを最適化できるようになりました。
特に大きな価値を生んだのは、カート放棄顧客ジャーニーの改善です。従来の手動によるウォーターフォールロジックから脱却し、プッシュ通知とSMSを適切に連携させることで、顧客が希望するチャネルで、最適なタイミングに、最適なメッセージを受け取れるようになりました。

成果:2年半で事業全体に5つのSMSプログラムを構築・拡大
- 顧客ごとの行動に基づいた、モバイルチャネル横断のシームレスな顧客ジャーニーを実現
- 最適化されたカート放棄顧客ジャーニーにより、配信停止率を低下させ、コンバージョン率を向上
- ノーコードソリューションにより、新規施策ごとの技術リソース依存を削減し、キャンペーン実行速度を向上
24S、カート放棄をラグジュアリーな購買機会へ転換
24Sは、2017年にローンチされたLVMHのオンラインラグジュアリーストアであり、老舗ラグジュアリーブランドから現代的なデザイナーズブランドまで、60以上のブランドを厳選して展開しています。プラットフォーム全体は、実店舗のラグジュアリーサービス水準を再現する、プレミアムでパーソナライズされたデジタル体験を中心に設計されています。
課題:24Sは、トリガーメール、モバイルメッセージ、商品レコメンドのをそれぞれ別々のプラットフォームで運用しており、この分断された環境で、顧客体験は一貫性を欠き、社内チームにとっても不要な複雑さが生じていました。そのため、24Sは購入頻度を高めるとともに、初回購入コンバージョンを最大化する必要がありました。

戦略:Brazeを活用し、24Sは顧客体験上の重要な摩擦ポイントに対応する、8つのパーソナライズされたトリガーキャンペーンを構築。
対象となる主要な購買機会:
- カート放棄
- 在庫僅少による緊急性の高いタイミング
- 再入荷通知
Braze カタログにより、リアルタイムの在庫データをメッセージ内に直接反映。さらに、Liquid演算子を用いて在庫状況をリアルタイムで判断し、緊急性を活用した通知を適切なタイミングで配信しました。また、コンテンツブロックを活用することで、一部の高級ラグジュアリーブランドをプロモーションメッセージから除外し、ブランド価値をキャンペーンレベルで保護しました。

再入荷通知キャンペーンでは、トリガーベースのキャンバスを導入。顧客の通知登録を確認した上で、BrazeのAIアイテムレコメンデーションを活用した4つのパーソナライズ商品レコメンドを自動追加しました。これにより、顧客は再入荷商品だけでなく、関連商品への興味も維持しやすくなりました。
成果:
- 再入荷キャンペーンにより、6カ月間でカート追加率が7%向上
- カート放棄および在庫僅少キャンペーンにより、6カ月間で購入コンバージョン率(3日間ウィンドウ)が35%向上
Estée Lauderが実践する、全チャネル横断の大規模パーソナライゼーション
Estée Lauderは、スキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケアにわたる幅広いブランドポートフォリオを展開する、世界有数のプレステージビューティーカンパニーです。
Estée LauderのCRM Senior ExecutiveであるMorgan Shaharudin-Miller氏は、Brazeを活用して、ブランドがどのようにあらゆるチャネルで顧客とつながり、大規模なパーソナライゼーションを実現しているかを紹介しています。
データとリアルタイムパーソナライゼーションで、小売顧客エンゲージメントを向上させる方法
2026年版 Braze 小売業界向け カスタマーエンゲージメントレビューによると、自分のニーズや好みをブランドが正確に予測できていると感じている消費者は、わずか53%にとどまっています。これは、小売ブランドの大きな改善機会を示しています。
Brazeは、Shopifyのようなプラットフォームと連携することで、行動シグナル、購買履歴、ロイヤルティ活動、リアルタイムのセッションデータを統合し、小売チームに統一された顧客ビューを提供します。これにより、複雑なカスタム開発を必要とせず、顧客データを一元管理できます。
データが統合されることで、セグメント化はスケジュールベースではなく、リアルタイムで行動できる精度へと進化します。さらにAIが加わることで、本来であれば大規模な手作業を必要とする業務を自動化できます。
- 顧客ごとの最適な次の体験を特定
- 最適な配信タイミングを決定
- 顧客の反応に応じてチャネル横断でメッセージ配信を調整
このように構築された顧客エンゲージメントプログラムは、顧客行動の変化に応じて継続的に適応し、都度ゼロからの再構築は不要です。
小売顧客エンゲージメント成功を測定する上で重要な指標
真の顧客エンゲージメントを示す最も強力なシグナルは、行動の深さと、その後のビジネス成果を組み合わせたものです。つまり、メッセージが顧客の行動、再訪、支出増加につながったかが重要です。
小売チームが追跡すべき主要指標
- 購入コンバージョン率:メッセージが購買行動を促したかを測定します。高い購買意図がある瞬間に、トリガーキャンペーンが機能しているかを直接示す最重要指標です。
- ロイヤルティ特典利用率: ロイヤルティ会員が獲得した特典を実際に利用しているかを確認します。利用率が低い場合、プログラム自体だけでなく、タイミングやチャネル設計に課題がある可能性があります。
- モバイルアプリ利用率とセッション頻度: 顧客エンゲージメントが時間とともに深まっているかを示します。セッション頻度の上昇は、単なるアプリダウンロードではなく、習慣化が進んでいる証拠です。
- トリガーキャンペーン経由のカート追加率: 行動トリガーが購買意図へとつながっているかを測定します。購入前段階における重要な先行指標です。
- メール顧客エンゲージメントと配信健全性: 配信頻度と関連性が適切に機能しているかを評価します。大量配信にもかかわらず顧客エンゲージメントが低下している場合、それは成果ではなく警告サインです。
ユーザーあたり売上(Revenue per User): クロスチャネル顧客エンゲージメントが、単一チャネル施策と比較してどれだけ売上向上に寄与しているかを示します。オーケストレーションの商業的価値を具体的に測定できる指標です。
小売業のカスタマーエンゲージメント事例に関するFAQ
小売業およびeコマースにおける優れた顧客エンゲージメント事例とは?
小売業およびeコマースにおける優れた顧客エンゲージメント事例とは、特定の行動シグナルに対して明確な対応が結びついているものです。たとえば、パーソナライズされたおすすめ商品を含む再入荷通知、ロイヤルティ特典の利用促進をクロスチャネルジャーニーへと発展させた施策、あるいは顧客ごとのブランドとの関係履歴に基づいて設計されたアプリ内体験などが挙げられます。
小売ブランドはどのようにデータを活用してリアルタイムでオーディエンスに働きかけていますか?
小売ブランドは、閲覧セッション、カートのアクティビティ、ロイヤルティプログラムとのインタラクション、アプリの利用といった行動シグナルが発生した瞬間に対応することで、データを活用してリアルタイムでオーディエンスに働きかけています。Brazeはそれらのデータを、自動的にトリガーされるクロスチャネルのジャーニーへと連携させ、固定された送信スケジュールではなく、顧客の意図が最も高まったタイミングでアプローチすることを可能にします。
小売業の顧客エンゲージメントの成功を測定するために最も重要な指標は何ですか?
小売業の顧客エンゲージメントの成功を測定するために最も重要な指標は、メッセージ活動をビジネス成果に結びつけるものです。小売チームは、購入コンバージョン率、ロイヤルティオファーの利用率、セッション頻度、トリガーキャンペーンによるカート追加率、そしてユーザーあたりの売上を優先すべきであり、単一チャネルのベースラインに対してクロスチャネルのエンゲージメントがどのように機能しているかを追跡する必要があります。
リアルタイムのパーソナライゼーションは、どのように小売ブランドのオーディエンス維持を向上させますか?
リアルタイムのパーソナライゼーションは、顧客の意図がまだアクティブなうちに反応することで、小売ブランドのオーディエンス維持を向上させます。メッセージが、カテゴリーの閲覧、リワードの獲得、カートへの製品放置といった「直前の行動」を反映している場合、それは宣伝目的ではなく有用なものと感じられ、その関連性のある内容こそがオーディエンスを呼び戻すきっかけとなります。
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