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アプリマーケター向けコミュニティ MOBILE STARS Spring 2025 イベントレポート

公開 2025年5月30日/更新 2025年5月30日/14 分で確認

アプリマーケター向けコミュニティ MOBILE STARS Spring 2025 イベントレポート
作成者
Sato Yosuke
Braze ストラテジー&オペレーション本部

皆さん、こんにちは。Brazeの佐藤です。

今回は2025年4月に開催されたアプリマーケター向けコミュニティ「MOBILE STARS」の第4回イベント開催レポートをお届けします。

本コミュニティは、そのコンセプトに共感した有志によって運営されており、2024年4月の第1回イベント開催以降、アプリマーケティング業界における情報共有と成長の場として継続的に活動を続けています。

第4回イベント MOBILE STARS Spring 2025は、モバイル計測パートナー(MMP)を提供するAdjustと、カスタマーエンゲージメントプラットフォームを提供するBraze、モバイルアプリ向け広告プラットフォームを提供するMolocoの3社が共同で主催し、約70名のアプリマーケターが集まりました。熱気あふれる情報交換とネットワーキングの模様を、本記事で一部ご紹介します。

「MOBILE STARS」とは?

「MOBILE STARS」は、アプリマーケター同士がナレッジや経験、業界トレンドを共有し、相互に学び合うことを目的としたコミュニティです。変化の激しいアプリ業界の最前線で活躍するマーケターがつながり、日本のアプリマーケティングのさらなる発展を目指して立ち上げられました。

設立の背景には、コロナ禍で失われた「学びと交流の場を再びつくりたい」という声がありました。その声に応える形で、2024年4月から有志が運営するイベントとしてスタート。詳しくは、[第1回]・[第3回]のレポートも併せてご覧ください。

第4回イベント MOBILE STARS Spring 2025 の様子

過去3回の盛況を受け、今回は会場を渋谷ヒカリエのJustCoへと移し、より広々とした空間で開催されました。

an advertisement for mobile stars spring 2025

過去3回の盛況を受け、今回は会場を渋谷ヒカリエのJustCoへと移し、より広々とした空間で開催されました。

イベントは、企画・運営メンバーを代表して、Brazeの佐藤洋介による開会挨拶からスタート。その後、発起人の大西正太さんより、コミュニティの方向性を明文化した新たなステートメントが発表されました。

開催回数の増加に伴い、参加者同士の新しい接点をどう生み出し、コミュニティとしての熱量をどう維持していくかは運営にとっての重要なテーマです。そうした中、ステートメントの策定は、これまでの歩みを振り返り、運営として改めて気を引き締める良い機会になりました。

a man is standing in front of a microphone giving a presentation .an advertisement for mobile stars in a foreign language .a man is sitting on a couch holding a microphone and talking to a group of people .

(クリエイティブパートナー:株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND 制作)

タップルが挑む、AI×クリエイティブの最前線

では、ここからが本編です。​​

最初のセッションでは、タップルの中畑育歩さんが登壇。生成AIを活用した広告クリエイティブの制作や効果予測に関する取り組みが紹介され、AI時代のマーケティングの可能性に多くの関心が集まりました。

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当日はこちらのアジェンダでお話しいただきました。

タップルのサービス概要紹介に続き、プロダクトとマーケティングの両観点からのタップルにおけるAI活用、そして本題のAI×クリエイティブのパートを具体的な実例をお話しいただき、最終的には質疑応答を交えながら、AI×マーケティングの今後という題目でお話しいただきました。

本セッションの詳細はオフレコですが、当日の発表内容の一部と会場写真での雰囲気をお楽しみください。

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タップルは今年11周年を迎え、現在は累計会員数が2,000万人を突破しているサービスにもなり、皆様にご愛用いただいております。

マーケティングにおいては、運用・クリエイティブの両観点でAIを活用させていただいております。もはや活用せざるを得ない状況とも言えるかもしれません。

a flow chart for mobile stars in a foreign language

プロダクト側では、お相手を推薦する際の中身としてAIを活用させていただいております。

参考:CyberAgent Developers Blog “マッチングアプリにおける出会いを分析する”

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さて本題ですが、タップルでは主に三つの観点でクリエイティブ領域においてAI活用を実施しております。効果予測・お台場スタジオ・生成AIの観点になります。

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まず効果予測に関しましては、サイバーエージェント社の「極予測AI」を活用させていただいております。広告を配信する前に広告の効果をシミュレーションすることができます。

a group of people are standing in front of a large screen in a studio .

次に「極AIお台場スタジオ」になります。

こちらでは実際に生成AIで生成した背景画像をバックの大きなスクリーンに投影し、リアルタイムで「極予測AI」にて広告効果をシミュレーションしながら、手前の演者さんの画角などを調整しながら撮影することができます。

参考:AIと創る広告の未来 ― タップルと極AIお台場スタジオの最新事例― | CADC 2024

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最後に生成AIです。

タップルでは、静止画でのモデル生成に加えて、Deep Fakeを活用した広告制作に取り組んでいます。

詳細はこちらに記載ができないのですが、ご関心お持ち頂ける機会があれば、是非ご連絡いただければと思っております。

a group of people are sitting in a room watching a presentation .a group of people are sitting in a room watching a presentation .a large group of people are sitting in a room watching a presentation .

引き続きタップルでは積極的にAIの活用を行いながら、サービスの拡大を目指してまいります。

アプリボット 家門さんと考えるアプリマーケの本当と嘘

続くセッションでは、アプリボットの家門真明さんが登壇。Adjustの高橋将平さんのファシリテーションのもと、「アプリマーケの本当と嘘」というテーマで、MMPツールの理解、広告計測のあり方、そして家門さんが“魔境”と表現する「アプリインストール前のデータ」とどう向き合えば良いのかについて、実践に基づいた深い示唆が共有されました。

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家門さんは、自社でゲーム開発やマーケティングを行うかたわら、その実践知・ノウハウを外部にも発信・提供されていらっしゃる、アプリマーケティング業界の第一人者です。ファシリテーターのAdjust 高橋将平さんからは、家門さんがCEDECで過去お話しされ大反響だった半ば“業界への提言”とも取れるコンテンツについてもご紹介があり、和やか、かつ、期待感のある雰囲気でセッションがスタートしました。

a man in a suit is holding a microphone and giving a presentation .a man is sitting in front of a microphone and smiling .image

では、ここからは一部始終をお楽しみください。

家門正明と申します。本日はよろしくお願いいたします。

もともとはゲーム業界向けにお話ししていた内容ではありますが、アプリマーケティング全般においても極めて重要な視点であると考え、今回この場でご紹介させていただきます。今回の講演では、弊社のクライアントや関係者の皆さまと共に築き上げてきた実践知を背景に、得られた示唆をご紹介させていただきます。

まず冒頭に、広告の効果測定についてお話ししたいと思います。「広告の成果を正しく見るべきだ」という主張は広く知られていますが、そもそも“正しさ”とは何か、という点について改めて問い直す必要があります。

Adjustの高橋さん視点でも、広告効果計測において不可欠なMMPというツールについて、「一定のルールで成果を分類・評価する」という整理の仕方は、納得感がある内容とのコメントもあり、その前提で、後続の議論がなされていきます。

a mobile stars logo is on a white backgrounda mobile stars logo is on a white background

広告の成果を評価する際、「この方法は正しい、もしくは正しくない」といった議論に直面することがあります。しかし、何をもって“正しい”とするのかを明確にしないまま、この議論をしても全く意味がありません。

意外かもしれませんが、大企業でも正しい評価ができていないケースは多いです。

マーケティング担当者の属人的な思考に基づく評価や意思決定が行われているケースもあり、たとえば、メディアごとのクリック数、インストール数、CVRなどの数値がレポートになっていたとしても、それが実際に自社のアプリの成果にどう結びついているのかを把握できていないこと、説明できないことが多くあります。実際に、広告予算として1,000万円を投じていたにも関わらず、その効果を正しく把握できていない企業も存在します。

a man is holding a microphone and giving a presentation to a group of people .imagea screen shot of a mobile stars advertisement

こうした課題に対応するために、AdjustのようなMMPを活用しアトリビューション計測をきちんとしていくわけですが、MMPの成果だけを見ただけでは、成果を正しく把握できないというジレンマがあります。

例えば数秒間の広告視聴を広告クリックとみなす媒体があるため、実際に広告がクリックされていなくても、広告クリックに紐づくインストール(クリックスルーアトリビューション)として計測されることも多いですし、更には、その広告がユーザーの目にほぼ入らないような小さな広告枠だった場合については、ほぼユーザーには見えていない(認知していない)にも関わらず、広告を見た、クリックしたと判定され、クリックスルーアトリビューションやビュースルーアトリビューションとして計測されてしまうのです。

広告媒体、そして広告枠のアトリビューションルールがバラバラであるという点について、みなさんももう一度よく考えてみてください。これはAdjustなどのMMPでは制御できない領域のルールなので、私はここを魔境と表現します。この魔境の存在を意識した上で、MMPは「一定のルールに従って」成果を振り分けるツールであると理解する必要があるのです。

上記を考慮すると、目立たない広告ほど「広告成果が良い」と判断されるようになります。ユーザーに自社のアプリを知ってもらい、インストールしてもらうための広告なのに、目立たない広告の方が成果が良いことになり、その流れがどんどん加速していくという世にも奇妙な現象が実際の現場で起こっているのです。

a diagram showing the process of mobile starsan advertisement for mobile stars in a foreign languageimagea screen shot of a mobile stars website

話題が少し変わりますが、広告に限定しないユーザーとの接触面についても考慮する必要があります。

ゲーム業界の例になりますが、たとえば、月に5,000円以上を課金するVIPユーザーは、広告ではなく、公式サイトの情報を最も重要視しているということがわかっています。そのため、公式サイトを充実させることは非常に重要なのです。これらのVIPユーザーは口コミという形で公式サイトの情報を拡散させる可能性を大きく秘めているので、その観点からも非常に重要な考え方です。

私自身、日々広告に携わる中で、「ユーザー視点で本当に価値ある情報とは何か」を常に問い続けています。その中で、UGC(ユーザー生成コンテンツ)や記事型コンテンツの広がり、そして口コミとしての再拡散といった“情報の流通構造”があると考えているので、その最も上流となる公式サイトの価値を理解することは、非常に本質的な考え方であり、そこが基点となってあらゆるマーケティングが可能になると感じています。

最後になりますが、今後はCPIやCVRといった一面的な評価指標だけではなく、ユーザーとのあらゆる接点を価値化する視点がますます求められると強く感じています。

広告インストールとオーガニックインストールを切り分けて考えるのではなく、全体のインストールに対して広告の寄与はあったのか?全体の売り上げに対して広告は寄与したのか?を考えることがマーケティングの本質です。

魔境のことを考えずに数字だけを鵜呑みにして広告予算を費やすのではなく、きちんと魔境と向き合った上で意思決定をしてください。これは簡単なことではなくリソースがかかりますが、非常に価値があります。自社のユーザーと徹底的に向き合うためには、ユーザーインタビューは絶対に欠かせないですし、徹底的な市場調査も重要です。

我々が目指しているのは、広告をただ「出す」だけで終わらせるのではなく、広告を“どのように見せて、どのように行動に転換させるか”までを見据えた、一連のストーリーとして捉えるマーケティングです。

今後は、ゲーム業界というある種の特殊市場の中で培ってきた知見を、他業種にも還元していくと同時に、広告主側・代理店側を問わず、実際に施策に関わる皆様が、自ら考え、発言し、議論する文化を広めていきたいとも考えています。そうすることで業界全体の成熟が促進され、健全な成長が実現するのではないかと感じています。

本日はご清聴ありがとうございました。

a man is speaking into a microphone in front of a group of people .

いかがでしたでしょうか。

ここからは、筆者の私見となりますが、私がアプリ広告業界について学び始めた頃、家門さんのお話を伺った際に触れた業界構造や広告の実態は、今でも鮮明に記憶に残っています。目の前のデータを鵜呑みにせず、自らの目で確かめ、正しく理解する姿勢の重要性を痛感するとともに、顧客の声や現場のリアルに耳を傾けることの大切さを改めて実感させられました。こうした視点は、マーケターに限らず、業種や立場を問わず多くの方々にとって、普遍的かつ実践的な価値を持つ重要な考え方であると感じています。

家門さんのお話にご関心をお持ちの方は、ぜひ以下の記事も併せてご覧ください。

[CEDEC 2023]「スマホゲーム広告の『嘘』」レポート。数字に絡む思惑を認識し,“ユーザーに届ける”から逃げない大切さが語られた

今や広告は目立たないほうがいい? 今年も行われた「スマホゲームマーケの『嘘』」を紹介するセッションレポート[CEDEC 2024]

Networking Party

a diagram showing the process of mobile starsa group of people are standing next to each other in a room .two men are standing next to each other in a room with their arms crossed .a man with glasses and a mustache is talking to another man at a party .a man and a woman are talking to each other in a room .a group of young men are standing in a room talking to each other .a group of people are standing next to each other and smiling .two men are looking at their phones in a room .a group of people are standing around a table drinking beer .two men are standing next to each other in a crowded room talking to each other .

イベント後半には、RevenueCat社スポンサーのもと、ネットワーキングパーティーを開催。カジュアルな雰囲気の中で、参加者同士が自由に情報交換を行い、つながりを深める貴重な時間となりました。

最後に

a large group of people are posing for a picture in a room .

MOBILE STARSでは、オフラインイベントの価値が改めて注目される今、マーケターの皆さまにとって学びとつながりのある場を今後も継続的に提供してまいります。

次回の参加にご興味のある方は、Braze 佐藤洋介または本文中の運営メンバーまでご連絡ください。※イベントは会場の都合により、基本的に招待制とさせて頂いております。またご関心をお持ち頂けるベンダー様や支援会社様は、次回以降のNetworking Sponsorをご検討ください。

最後に、本イベントは、Main PartnerとしてAdjust、Braze、Moloco、Creative PartnerとしてFIELD MANAGEMENT EXPAND(FMX)、Networking SponsorとしてRevenueCatの提供で開催されましたが、本取り組みは、アプリ業界の発展を願う有志の方々をはじめ、多くの皆さまのご支援とご尽力によって実現しております。この場を借りて、心より御礼申し上げます。

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