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求人情報は入れ替わりが激しく、求職者のニーズも多様であるため、その発信には鮮度とパーソナライズ性が不可欠です。しかし、Braze導入前のマーケティング施策は、関わる部門が多く、企画から実施までに多くの時間を費やしていました。また、会員基盤と通知システムがそれぞれ独立して稼働していたため、マルチチャネルでのパーソナライズされたアプローチが困難でした。
Braze専用の汎用検索API基盤を新たに開発し、ユーザー属性に応じたおすすめ求人情報を配信できる基盤を構築しました。この基盤を活用し、ユーザーの状況に応じたパーソナライズされたリアルタイム施策をマルチチャネルで実施できるようになりました。
Brazeを導入した各種施策が効果を発揮し、Braze導入後の通知流入によるセッション数が160%増、応募数が142%増を記録しました。
通知流入によるセッション数の増加率
通知流入経由による応募数の増加率
購買支援サイト「価格.com」やレストラン検索・予約サービス「食べログ」などを手掛ける当社(株式会社カカクコム)が、2015年より提供を開始した求人情報の一括検索サービスが「求人ボックス」です。インターネット上の転職サイトや求人サイトなどから、全国の求人情報を幅広く取得し、毎日数十万件以上の新着求人掲載しており、すべての求人掲載数は2,000万件を超えます。
求人ボックスの大きな特徴は、ユーザーファーストの視点からUI/UXを徹底的に追求している点です。例えば、コロナ禍を経て働き方が多様化している現状に対応し、求人ボックスでは求職ニーズの変化に応じて検索の仕組みをきめ細やかに調整しています。
このプロダクトの徹底的な磨き込みの結果、「求人ボックス」は今では月間1,200万人以上の方々にご利用いただいています(2025年3月実績)。しかし、このサービスはまだ成長過程にあり、我々は「求人ボックス」の売上を5年後に現在の何倍以上にもすることを目標としています。
求人ボックスカンパニー 事業企画部 事業企画部長 小島 塁氏
Braze導入前のマーケティング体制では、施策の企画・立案を行うマーケティングチーム、実装を担う開発部門、クリエイティブ作成を担当するデザイン部門の3部門間での社内調整に多くのリソースが費やされていました。このため、施策の企画から実施までには数週間を要し、会員ユーザー数の増加とサービスの拡大に応じた、ユーザーへの迅速な施策展開ができていませんでした。
さらに、求職者のニーズは多岐にわたるため、求人情報のパーソナライズ性も重要です。しかし、メールやLINE、アプリといった多様なユーザー接点チャネルが存在するにもかかわらず、従来の体制では会員基盤と通知システムがそれぞれ独立して稼働していました。これにより、ユーザー情報と通知システムの連携が困難で、チャネルを横断した個別最適なアプローチができない状況でした。
求人ボックスカンパニー 事業企画部 マーケティングチーム 十文字 拓也氏
Brazeを選定した決め手は、「コネクテッドコンテンツ」機能の存在でした。この機能は、API経由でアクセス可能な情報を配信メッセージに差し込むことができるため、求人ボックス内で日々更新される大量の求人情報をメッセージに反映させて配信することが可能になります。この機能を活用することで、「適切なユーザーに、効果的なタイミングで、最適な求人情報を提供したい」という当社の要望が実現できると考えました。
また、「求人ボックス」は月間1,200万人以上が利用するサービスであり、配信数も膨大になることが予想されました。Brazeには大量配信に十分耐えうる強固な配信基盤がある点も、導入の大きな魅力となりました。
求人ボックスカンパニー 事業企画部 マーケティングチーム 越川 恭子氏
Braze活用に向けた準備として、コネクテッドコンテンツ用の汎用検索API基盤を新たに開発しました。これは、検索条件から求人情報を検索できるAPIと、求人ボックスに掲載されている求人情報を取得するAPIを基盤として構築したものになります。この基盤を構築したことで、Brazeに収集している様々なユーザーデータを利用して、その場で求人ボックスの検索を利用した施策実行までを行える強固な土台が整いました。(十文字氏)
「求人情報は鮮度とパーソナライズ性が重要である」という考えに基づき、汎用検索API基盤を活用して、リアルタイムかつパーソナライズされた施策を展開しています。これは、会員基盤と通知システムが独立していた以前の体制では実現不可能だった施策です。
これまでユーザーの行動に即したメッセージ施策をリアルタイムに行えていませんでしたが、Brazeの導入によってそれらが実現可能になりました。具体例としては、「ユーザーが求人をお気に入り登録後にリマインドをする施策」などが挙げられます。その結果、再訪セッションが増え、これまででは得られなかった効果があげられるようになりました。そのほかの例でいうと、「離脱後のフォロー施策」として、ユーザーがサイトを離脱した数時間後に、最後の検索条件に基づいた求人を送信しています。これらの施策のシナリオは、Brazeのキャンバス機能を用いて作成されています。
(お気に入りリマインド施策のキャンバス設定)
さらに、ユーザー属性に応じたコンテンツ配信として「記事配信施策」も展開しています。求人ボックス上では求人ボックスジャーナルやバイトの探し方ガイド、転職ノウハウといった、働き方やキャリア、仕事探しにおけるヒントになるような情報を提供するメディアを運用しています。それらのコンテンツをうまく活用するためにBrazeを使い、記事タイトル、記事詳細テキスト、検索結果URLなどをカタログ機能に登録しています。これにより、ユーザーの検索キーワードや属性に合わせて約40パターンにも及ぶ記事コンテンツをメールやLINEで配信しています。
例えば、「在宅」で検索したユーザーには在宅ワーク関連の記事を配信するといった運用が可能です。カタログ機能を用いることで、カタログIDを変更するだけでユーザー属性に応じた記事コンテンツの出し分けを効率的に行えるようになりました。
求人ボックスカンパニー 事業企画部 マーケティングチーム 浅海 颯太氏
Brazeを活用した結果、セッション数や応募数が大幅に改善しました。Braze導入後の、既存施策と合わせた通知流入によるセッション数は、直前半期と比較して160%増、通知流入経由の応募数は142%増となりました。
Brazeによるパーソナライズを行った施策に関しては従来型の施策よりも開封率/アクション率が良く、求人ボックス全体のセッション数と応募数の増加に貢献していると判断しています。
また、昨今の求人サイトでは、掲載期間に応じて料金が発生する「掲載課金型」のみならず、求人ボックスのような求人のクリック数に応じて課金される「クリック課金型」のビジネスモデルのサービスも並行して利用される企業様も増えてきています。クリック課金型比率のさらなる増加が見込まれるため、「求人ボックス」において、 Brazeを積極的に活用することで今後ますますセッション数や応募数の増加が期待できると考えています。(小島氏)
Braze導入により、マーケティング施策の企画から実施、管理までを、開発部門やデザイン部門に依頼することなく、マーケティングチーム内で完結できるようになりました。これは、Brazeの機能によってクリエイティブ制作やAPIの呼び出しをチーム内で完結できるようになったためです。
以前は、両部門との調整に多くの工数がかかり、新規施策の実施はそこまでできていませんでした。しかし、内製化の実現と汎用検索API基盤による工数削減によって、Braze導入後わずか6ヵ月間で50施策をローンチすることが可能になりました。これは従来の体制では到底達成できなかった数字です。
マーケティングチーム内でマーケティング活動を内製できるようになったことは、開発部門およびデザイン部門のリソース創出にもつながっています。Brazeの導入は、部門を横断した効果をもたらしたと感じています。(浅海氏)
今後については、まだ活用しきれていないBrazeの機能を活用し、ユーザー属性や状況に応じたよりきめ細やかなコミュニケーションの実現を目指しています。特に期待している機能は、BrazeAI™の「インテリジェントタイミング」です。この機能は、ユーザーのアプリ内での行動やメッセージへの反応をAIが学習し、メッセージの開封やクリックの可能性が最も高いと判断される時間帯に配信できるものです。
求職者が仕事を探す時間帯は、夜勤明けの早朝や昼休みなどのスキマ時間など、ユーザーによって大きく異なります。求人ボックスとしては、ユーザーさんにひとりひとりに寄り添った、心地よいコミュニケーションを目指して、それぞれの時間帯に合わせて求人情報を発信したいとの思いがありますが、どのユーザーがいつ仕事を探しているかを人力で計測・管理することは現実的に不可能です。そこで、「インテリジェントタイミング」を活用することで、ユーザーが実際に仕事を探している時間帯に合わせて求人情報を届けられるようになることを期待しています。(越川氏)
ユーザーの定着率の向上は、中長期的に事業全体へ大きな売上インパクトをもたらします。Brazeはその実現に向けた、大きなポテンシャルを備えたツールだと感じています。
Braze専用の汎用検索API基盤を新規開発し、リアルタイムかつパーソナライズされた施策を展開しました。その結果、 Braze導入後の通知流入によるセッション数が160%増、応募数が142%増を記録しました。