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マーケティングに重要とされる「行動経済学」とは?理論やメリットについて紹介

公開 2025年5月16日/更新 2025年5月16日/11 分で確認

マーケティングに重要とされる「行動経済学」とは?理論やメリットについて紹介
作成者
Team Braze

勘に頼らないマーケティングをおぼえたいと考えるマーケターには、行動経済学の学習がおすすめです。行動経済学では、マーケティングにおける一般的な宣伝方法がなぜそのような形を採用しているのか、その根拠から理解できます。

この記事では、行動経済学の詳細や経済学との違い、マーケティングとの関係や主要な理論、実務に役立つITツールをご紹介します。


1.行動経済学とは

行動経済学とは、心理学と経済学の組み合わせにより、人間の非合理的な行動原理を解明する学問領域です。2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンと、彼の盟友であったエイモス・トヴェルスキーという二人のイスラエル出身学者によりスタートしたといわれています。

2.経済学との違い

行動経済学と従来の経済学の違いは、人はときに不合理な行動を取るという視点の有無にあります。

従来の経済学では、人は経済的な合理性に従って行動する生き物(自分の利益の最大化が期待される行動を取る生き物)だとされていました。この考えはホモ・エコノミクスと呼ばれ、経済学の根底にある思想でした。

しかしカーネマンらは、人間の直感は常に合理的な行動を導くのではなく、不合理な行動に繋がることもあると指摘し、この経済学の前提に疑問を持ちました。そうして誕生したのが行動経済学です。

なお広辞苑では、経済学と行動経済学はそれぞれ以下の通り定義されています。

経済学:経済現象を研究する学問。旧称、理財学。

行動経済学:実験などで観察される人間行動を基に構想された経済学。ホモ‐エコノミクスを前提とする経済学の非現実性を克服する意図をもつ。

(出典:広辞苑「第七版」より引用)

3.行動経済学はマーケティングに重要?

マーケターにとって行動経済学は、マーケティングの成功に欠かせない顧客視点を得るために有益です。単に合理的な行動を予想するのではなく、心理にまで踏み込むことで、実際の人々の感情に寄り添った施策を検討しやすくなります。

以下はマーケティングにおける行動経済学の活用方法の一例です。

  • 訴求内容の最適化(各種理論にもとづいた人の心に響きやすい訴求方法の理解)
  • 価格設定やキャンペーン設計のインサイト獲得(同じく理論にもとづくもの)
  • 顧客体験全般の向上(購買過程における心理的なわずらわしさの把握→改善)

4.そのほか行動経済学が活用されている分野

行動経済学は、マーケティング以外に人事や投資など幅広い分野で利用されています。

4.1.人事

人事分野では、ナッジと呼ばれる行動経済学の知見を用いて、人々の良い行動をそっと後押しする仕組みの構築が盛んです。

ルールを押し付けるのではなく、つい行動したくなる状況を作ることで、金銭的ボーナスなどのコストを最小限に抑えつつ人材の実力を発揮させようとしています。

4.2.投資

投資分野で耳にすることの多い意思決定理論、行動ファイナンス理論は、後述するカーネマンのプロスペクト理論が基礎とされています。人は投資判断を行う際、常に合理的に活動できるわけではないという前提に立って、売買行動の科学的検証を行っています。

5.行動経済学の代表的な理論10選

a purple head with a target , light bulb , clock and gears in it .

では、行動経済学の代表的な理論とその具体例を見ていきましょう。

5.1.バーナム効果

バーナム効果とは、誰にでも当てはまるような記述を自分のためのものだと勘違いしてしまう現象です。

「いつも優しく人付き合いで疲れてしまいがちな方へ」というような多くの方が該当する文言に、自分が当てはまっていると感じるケースを指します。名前は米国の興行師であるバーナムに由来するといわれています。

5.2.プロスペクト理論

プロスペクト理論とは、結果が不確実な意思決定を行う際に人は認知バイアスによるゆがみを受ける、とする理論です。カーネマンらが提唱した理論で、論旨は大きく以下の2点からなります。

  • 人は利益よりも損失を重くとらえる
  • 人は小さな確率は過大評価し、大きな確率は過小評価する

例えば、100万円を得ることの喜びの感情と、100万円を損することの悲しみの感情では、金額は同じにもかかわらず、負の感情のほうが強くなるとする研究です。

5.3.ハロー効果

ハロー効果は、誰かのある側面が優れている(あるいは劣っている)場合、その人物のほかの部分も優れている(劣っている)と錯覚する現象です。「光背効果」「後光効果」とも呼ばれます。

例えば、営業成績の良い人間は人格者だとみなされやすい一方、成績が悪い人間は人格にも問題があるのではと疑問視されるケースを指します。

5.4.バンドワゴン効果

バンドワゴン効果は、人は多数派の意見や声の大きな主張に引きずられてしまいやすいとする理論です。会議において、自分は内心でおかしいと感じていても、周囲や有力者の賛成意見に反対を述べにくいと感じるケースが代表例です。名称は、パレードの先頭を走る楽隊車(バンドワゴン)から来ています。

5.5.認知的不協和

認知的不協和とは、人が複数の相反する情報を持つ(認知する)と不快に思う感情のことです。その不一致を解消もしくは軽減したがる特性のことを、認知的不協和理論と呼びます。

例えば、白米が好きな方が、糖質は体によくないとする意見を見た場合、その意見を否定したり、白米の摂取量を減らしたりすることを指します。

ただし、認知的不協和は知名度の高い研究ですが、理論のあいまいさや再現性の低さからしばしば批判もされています。

5.6.サンクコスト効果

サンクコスト効果とは、すでに費やしたコスト(費用や時間など)を惜しむ気持ちがその後の意思決定に影響することを指します。

明らかに成功の可能性が低くなった事業を中止できなかったり、社員から評判の悪い機材やツールを、その意見を無理して継続的に活用しようとしたりするケースが身近な例です。

5.7.アンカリング効果

アンカリング効果とは、先に提示された情報がアンカーとなって次の意思決定に影響をあたえる現象です。マーケティングで活用されやすい理論で、本来の定価として2万円と金額を示したあとに、「今回は特別です」と1万5,000円のオファーを行うなど、意識せず利用されていることもよくあります。

5.8.フレーミング効果

フレーミング効果とは、同じ意味の情報でもどこに焦点を当てるかで受け取られ方が変わるという理論です。前述のプロスペクト理論(人は利益より損失を重要視する)との関係が深く、例えば「術後1ヵ月以内の生存率は90%」と「術後1ヵ月以内の死亡率は10%」と手術説明をされるのでは、前者のほうが手術に臨む方が多くなるとする実験結果があります。

5.9.現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、人は変化をきらい、現状を維持しようとする傾向があるとする理論です。

例えば、客観的な指標からあらゆる面で旧製品より優れた新製品を提案されても、「もし自分に合わなかったらどうしよう」などとリスクや失敗を考え、慣れ親しんだ型落ちモデルを再購入するケースなどが当てはまります。

5.10.現在志向バイアス

現在志向バイアスとは、人は将来の利益よりも現在の利益を優先する傾向のことです。今すぐ5万円がもらえるのと一年後に10万円がもらえるのとでは前者を選ぶ人が多く、一年後と二年後に5万円がもらえるのと二年後に10万円がもらえるでは、差額はないのに後者を選ぶ人が多くなるとする考え方です。

6.行動経済学を知っておくことで得られるメリット

理論を踏まえたうえで、マーケターが行動経済学を知っておくことで得られる恩恵を再確認しておきましょう。

6.1.購買意欲の促進に繋げられる

行動経済学には、アンカリング効果やバーナム効果のような、消費者の心理に影響をあたえるさまざま理論があります。これらを正しく使い分けることで、なぜそのタイミングで買うと予想できるか、どういう見せ方なら購買してもらえるかを踏まえた施策が実行しやすくなり、購買率や顧客満足度の向上に繋がります。

6.2.商品価値や魅力を伝えられる

ある製品をどれだけ魅力的に紹介できるかは、マーケターの力量が問われるシーンです。フレーミング効果やアンカリング効果などを上手に活用し、製品の実際の価値は変わらずとも割安感や希少性を強調できるようになれば、マーケターとして大きな飛躍を果たしたといえるでしょう。

7.Brazeで顧客一人ひとりに合わせたシームレスな体験を

行動経済学をマーケティングに活かすためには、理論を踏まえた施策を検討したうえで、実際のアクションにも落とし込む必要があります。その具体的な手段としてBrazeの活用もご検討ください。

マーケター支援ツールの「Braze」では、簡単な操作でマーケターの頭のなかにある施策を実行に移すことが可能です。例えば、「この行動をした顧客には、このチャネルから、このようなメッセージで訴求したい」という願いを、画面上のブロックをドラッグ&ドロップする感覚で構築していけます。

高度なA/Bテスト機能にも対応しており、施策の洗練化を高速に行いやすいのもBrazeの特徴です。まずはデモ版の活用し、この記事でご紹介した行動経済学の理論を自社のマーケティングに活かしてみませんか?

>>Brazeへのお問い合わせはこちら

行動経済学から解説したBraze事例動画もぜひご覧ください。

>>行動経済学・心理学で紐解くBraze事例 10選

8.まとめ

行動経済学は、経済学と心理学の組み合わせによって人の不合理な行動まで理解しようとする学問です。「どのような訴求をすれば製品が売れるようになるのか?」を追求するマーケターとは親和性が高く、ぜひ覚えておきたい理論が揃っています。

この記事を参考に行動経済学の理論を正しく理解し、ぜひマーケティングやビジネスに活かしましょう。


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