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専任体制がなく、すべてのユーザーに対して同一のメッセージが一律配信されており、ユーザーの状態に応じたコミュニケーションが困難な状況でした。また、当時はペルソナやカスタマージャーニーの定義を改めて見直す段階にあり、「誰に・何を・いつ届けるか」といった設計の再構築が求められていました。
課題となっていた「ユーザーの状態に応じた最適なコミュニケーション設計」の実現に向けて、Brazeを活用し、複数チャネルでのアプローチを設計。その中でも、ユーザーとの親密な接点として有効なLINEチャネルや、アプリ内メッセージなどを活用し、いくつかの重点施策を展開しました。
Brazeを通じたユーザー理解とチャネル選定の最適化により、「ロイヤルユーザーへの購入促進」施策では購入パックの購入率が5%増加し、マーケティングコストも従来比で85%削減することに成功しました。また、アプリ内メッセージによる「ライバーフォロー促進」施策では、対象ユーザーのフォロー率が73%増加。さらに、「ライバーからのお礼メッセージ」施策では、LINEを通じて感謝の気持ちを届けることでリスナーとの関係性を深め、課金率は42%増加。年間で約6億円の売上インパクトを創出し、LTV最大化に向けた確かな手応えを得ることができました。
アプリ内メッセージを活用した「ライバーフォロー促進施策」により、ライバーフォロー率は73%増加、翌日リテンション率は約2倍に向上。
LINEを活用した「ロイヤルユーザーへの購入促進施策」により、ロイヤルチャージの購入率は5%増加し、配信コストも85%削減し他施策に再投資。
「ライバーからのお礼メッセージ施策」により、LINEメッセージ送付群の課金率は42%増加し、年間で約6億円の売上インパクトを創出。
ライブコミュニティ事業本部では、ライブコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」をはじめ、「IRIAM」など複数のプロダクトを展開しています。中でもPocochaは、「コミュニティ型」のライブ配信アプリとして、事業の中核を担っています。
Pocochaは、ライブ配信を通じてライバー(配信者)とリスナー(視聴者)が密な関係性を築くことができる、双方向性の高いライブコミュニケーションアプリです。1人のライバーに集まるリスナーは多くても20人程度と少人数で、リスナー同士も互いに会話をしながら配信を楽しむことで、時には家族や親友のようなつながりが生まれることもあります。これは、YouTubeやTikTokのような、配信者から視聴者へ一方向にコンテンツが配信される「メディア型」のアプリにはない、Pococha独自の大きな特徴です。
Pocochaのユニークポイント
ライブコミュニティ事業本部 Pococha事業部 マーケティング部 リードコミュニケーションプランナー 大西 正太氏(撮影場所:WeWork)
Braze導入前は、マーケティング活動における体制や役割分担がまだ発展途上の段階にあり、CRMの専任組織も設置されていませんでした。そのため、担当チームは本来の業務と並行してメッセージ配信を担っており、ユーザーの状態にかかわらず、全ユーザーに対して同一のメッセージを配信する形が中心となっていました。
また、当時はペルソナの定義やカスタマージャーニーの設計もこれから整備を進めていく段階であり、「どのユーザーに・何を・いつ届けるか」という設計の精度をさらに高める余地がありました。加えて、マーケティングツールと自社開発の基盤が個別に運用されていたため、複数チャネルを横断した施策の展開や、より効率的なPDCAサイクルの実践には一定のハードルがありました。
さらに、PocochaのLTV(顧客生涯価値)や売上に直結する「フォロー数」や「翌日リテンションレート(継続率)」といった重要指標の改善は、サービス成長における優先課題として取り組んでいく必要がありました。
Pocochaのサービス価値は、ライバー(配信者)とリスナー(視聴者)との間に生まれる関係性の深さに大きく影響されます。そのため、ユーザー一人ひとりの状態や行動に応じた、きめ細やかなコミュニケーション設計が不可欠です。
そうした中で、Brazeはユーザーの行動・ステータスをリアルタイムで把握し、多様なチャネルを柔軟に組み合わせてメッセージを届けられる点が大きな強みでした。特に、ユーザーとの接点が生まれる瞬間から関係性を育てていくまでの体験全体を一貫して設計・管理できる点が、当社のニーズと高い親和性があると判断しました。
当事業部では、このBrazeの導入を「ユーザーとの関係性を再設計するための出発点」と位置づけ、CRMの基盤強化とともに、体験価値の最大化に向けた新たなチャレンジをスタートさせました。
Pocochaでは、配信の継続と視聴行動の促進がサービス成長の鍵を握っています。特に、リスナーが翌日以降も継続してサービスを利用するかどうかは、LTVや売上に直結する重要な指標です。
そのため、初期体験の質やライバーとの関係性形成のスタート地点の設計に注力しています。これらの背景を踏まえ、「ライバー/配信者のフォロー促進施策」「ドラマの話題化施策」「友達招待施策」の3つの施策をBrazeを活用して展開しました。
「ライバー/配信者のフォロー促進施策」では、新規リスナーが視聴から離脱した直後に、対象ライバーのフォローを促すアプリ内メッセージを配信。リアルタイムトリガーを活用することで、ライバーフォロー率が73%増加、翌日リテンションレートも約2倍に向上しました。
「ドラマの話題化施策」では、Pocochaの認知向上およびサービス内の利用意欲向上を目的に、当社が制作協力したドラマ『これから配信はじめます』との連携を実施。Brazeのキャンバス機能を活用し、放映前後にプッシュ通知やアプリ内メッセージで視聴を促しました。
アンケート結果では、ドラマ視聴者の38%が「ライブ配信を認知した」、34%が「ライブ配信が流行していると感じた」と回答しており、認知・印象形成に一定の寄与が確認されました。さらに、ドラマ視聴ライバーの47%が「配信意欲が向上した」、視聴リスナーの34%が「配信視聴意欲が高まった」と回答しており、Pococha内においても配信・視聴の双方でポジティブな循環が生まれる結果となりました。
「友達招待施策」は、既存リスナーから友人をPocochaに招待してもらうためのコンテンツを、BrazeのCanvas機能を活用して複数チャネルで配信しました。その結果、半年間で新規登録者全体の約10%がこの施策経由となり、新規獲得のボリューム拡大に貢献しました。また、CPA(顧客獲得単価)も約10%低下する成果が得られ、費用対効果の高いユーザー獲得チャネルとして機能しています。
さらに、BrazeとLINEの連携機能を活用した新たなチャネル施策として、「ロイヤルユーザーへの購入促進」「ライバーからのお礼メッセージ」の2つも展開。LINEチャネルならではの即時性と親密性を活かし、ユーザーとの関係性を深める施策として成果を上げました。
LINE連携による接点強化施策として、「ロイヤルユーザーへの購入促進」と「ライバーからのお礼メッセージ」の2つの施策を実施しました。
「ロイヤルユーザーへの購入促進」施策では、Brazeで作成したロイヤルユーザーセグメントに対し、LINEメッセージでお得なコイン購入パックを紹介しました。この施策の結果、LINEメッセージ送付群におけるコイン購入パックの購入率は、非送付群と比較して5%向上し、マーケティングコストもLINE友だちユーザー全員に送付した場合と比べて85%削減できました。
また、LTVの直接的な向上を模索する中で、Pocochaの「ライバーとリスナーの距離の近さ」を活かした強みである「フレンドリーさ」を体験できる施策として、「ライバーからのお礼メッセージ」施策を企画・実施しました。「ライバーからのお礼メッセージ」施策は、新規リスナーがライバーの配信を視聴した翌日に、そのライバーからリスナーへLINEを通じてお礼のメッセージを送付するというものです。この施策により、LINEメッセージ送付群の課金率は非送付群と比べて120%と大幅に向上。さらに、文面やデザインなどのクリエイティブを工夫し改善したことで成果は一層高まり、最終的には課金率が42%増加し、年間約6億円の売上増加に貢献しました。
ライブコミュニティ事業本部 Pococha事業部 マーケティング部 ロイヤリティ&エンゲージメントプランナー 德光 晋太朗氏(撮影場所:WeWork)
LINEチャネルの大きな特長は、ユーザーにとって日常的かつ心理的に近い存在である点です。友人や家族とのやり取りに使われているからこそ、メッセージが届くこと自体に特別感があり、ロイヤルユーザーやライバー・リスナー間の関係性に基づいたコミュニケーションと非常に相性が良いと感じています。実際、同じ内容のメッセージでも、配信チャネルによって反応は大きく異なります。たとえば、アプリのプッシュ通知と比較してメールは約4倍、さらにメールと比較してLINEは約5倍のクリック率・リアクション率を記録しており、LINEチャネルの圧倒的なエンゲージメントの高さが明確に表れています。
ユーザーとの関係性に応じた最適なコミュニケーションを実現するためには、前提として顧客理解の深さが欠かせません。当事業部では、年間で約1,800時間を投じたユーザーインタビューに加え、日々の行動データやアンケート結果などの定量・定性データをもとに、ユーザーのインサイトを継続的に分析・把握しています。こうした取り組みが、LINEをはじめとする各チャネルでの効果的なコミュニケーション設計を支えています。
Pocochaにおいては、ライバーとリスナーの関係性に応じた繊細なコミュニケーションが体験価値の鍵を握っています。その中でLINEチャネルは、ユーザーにとって最も身近なプラットフォームの一つであり、感情の伝達に適したタッチポイントといえます。Brazeは、細かなユーザーセグメント設計やカスタマージャーニーの管理が可能で、「誰に・いつ・どのような文脈で」メッセージを届けるかを柔軟に設計できます。これにより、LINEは単なる配信チャネルではなく、Pocochaのユーザー体験を創出・強化する基盤として活用できていると感じています。
今後は、BrazeとLINEチャネルにAIを掛け合わせることで、ユーザーとの関係性に即した、より精緻なコミュニケーションの実現を目指しています。たとえば、AIによりユーザー行動や感情変化をリアルタイムに捉え、離脱リスクや関係性の変化を予測。その結果をもとにAIがメッセージを生成し、Braze経由で最適なタイミングでLINEメッセージを配信するような運用を構想しています。そのほか、機能単位の施策としては、ユーザー状況に応じてLINE上のリッチメニューをBrazeから自動で切り替える仕組みを構築し、LINEアプリ内におけるユーザー体験のパーソナライズ化も進めていく取り組みも検討しています。
(撮影場所:WeWork)
Pocochaは、ライバーとリスナーの関係の深さが売上に直結するビジネスモデルです。そのため、文脈や状況に応じた緻密なコミュニケーションが可能なBrazeは、関係性の構築、ひいては「LTV(顧客生涯価値)の最大化」というPocochaの中核課題にアプローチできる重要な存在です。
LINEチャネルを用いた施策として、「ロイヤルユーザーへの購入促進」と「ライバーからのお礼メッセージ」の2つを実施しました。前者の施策では、LINEでお得な購入パックを紹介し、購入率を5%向上させました。後者の施策では、ライバーからリスナーへ視聴のお礼メッセージをLINEで送ってもらい、課金率が42%増加。これは年間の売上インパクトで約6億円に相当します。