公開 2025年9月16日/更新 2025年9月16日/10 分で確認
Brazeでは、顧客とのエンゲージメントに革新をもたらす人々に独自でインタビューを行い、彼らの挑戦と成果を紹介する「人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち」をお届けしています。現場での知見や工夫、Brazeの活用方法など、実践的でリアルなストーリーを通じて、マーケティングの未来を考えるヒントを共有していきます。今回は、株式会社GENDA データインテリジェンス室長 株式会社GENDA GiGO Entertainment執行役員CDO 兼 DX推進室長の松沼 雄祐さんにお話を伺いました。
偉大な企業の創り手になるべく、ディズニーからGENDAへ
社会人としてのキャリアは、2012年に新卒でサイバーエージェントに入社したことから始まりました。当初はインターネット広告の営業やメディアのマネタイズを担当し、その後、プロダクトマネージャーとしてサイト内での広告表示や広告メニュー開発に携わりました。キャリアの後半では「AbemaTV」の立ち上げに参画し、この時、コンテンツがいかに視聴者数やブランドに影響を及ぼすかを痛感しました。優れたプラットフォームがあっても、最終的に人を惹きつけるのはコンテンツである、という考えに至り、コンテンツに強みを持つディズニーへの転職を決意しました。
ディズニーでは、動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の分析チームに参画し、データ分析に深く関わりました。SQLやPythonといったプログラミング言語を自身で書きながら、データの世界に没頭していきました。また、ディズニーならではの体験として、演劇やクラシック、映画、DVD、パークといった複数のコンテンツにまたがるユーザーの行動データを、1つのIDで横断的に分析できる面白さに触れることができました。
2023年にGENDAへ入社し、これが3社目のキャリアとなります。GENDA入社前に「GENDAは世界一のエンターテイメント企業になる」という話を聞いた時、驚きましたが、そのダイナミックな戦略や実績を知るにつれて「本当に実現できるかもしれない」とワクワクするようになりました。当時抱いていた「誰かが創り上げた大企業に勤めるのではなく、偉大な会社の創り手になりたい」という思いを実現するのに最適な会社、と感じました。また、「日本のエンタメ業界をDXで革新できる経営者になりたい」という私自身のキャリアビジョンとGENDAが合致したことも、転職を決めた大きなポイントです。
アミューズメント施設DXを推進する松沼氏の役割
現在、私は株式会社GENDAのデータインテリジェンス室の室長でありつつ、グループ企業である株式会社GENDA GiGO Entertainment(以下、GiGO)では執行役員CDO 兼 DX推進室室長を務めています。一言で言えば、“データを武器に利益を創出する業務全般”に携わっています。特に深くコミットしているのは、GiGOにおけるDXおよびデジタルマーケティング戦略の推進です。具体的には、アミューズメント施設「GiGO」で取り扱う景品IPの分析や、Brazeを含むマーケティングツールを活用した集客やブランディングなどを手掛けています。
アミューズメント施設運営ビジネスは、これまでは「機械を置いておけば勝手に100円玉が入る」というイメージ通りで、必ずしもデータ活用が活発な業界ではありませんでした。また、大きな要因として「レジがないビジネス」であることが挙げられます。小売店では当たり前となっているID-POS(誰が何をいつ購入したかというデータ)のような概念が、アミューズメント施設には存在しません。だからこそ、GENDAでは独自の「GiGOアプリ」という会員基盤を構築し、お客様一人ひとりのゲーム機プレイ履歴や好みのキャラクター景品に関するデータ取得・活用に努めたり、顧客体験や利便性を向上させることを当社の強みとしています。他社がデータ活用においてゲーム機メーカー側に依存する傾向がある中で、当社は自社でデータを収集・活用することに注力しています。
当社グループのアミューズメント施設における売上の約7割はクレーンゲームによるものです。そのため、クレーンゲームの売上向上を目的とした取り組みに現在、注力しています。まず手掛けたのが「データに基づいた、売れる景品IP選定の仕組み作り」です。外部のデータソースも取り入れながら、景品IPの人気度やトレンド感を定量的に可視化し、バイヤーがデータをもとに売上期待の大きなIPの景品を購買できる仕組みを構築しました。
2つ目の取り組みは「AIを用いた景品配分の最適化」です。「GiGO」は国内外に約600店舗ありますが、国内の約400店舗全店で異なるクレーン機の種類や台数、サイズを考慮し、AIが最適な景品の種類と数を導き出しています。これにより、これまで人手で行っていた複雑な景品管理によるミスマッチを解消し、無駄な在庫や販売機会の損失を削減。お客様に人気の景品を適切に届け、払い出し率の向上に成功しました。これは毎月約60時間分の業務時間削減だけでなく、攻めのDXとして社内ニーズを高め、DX推進室の立ち上げにも繋がりました。
Brazeは「熱狂体験の創造」に必須のツール
GiGOが大事にしているフィロソフィーの1つが「五感をゆさぶる熱狂体験を創造する」です。数あるアミューズメント施設の中から当社グループのアミューズメント施設に訪れた際は想像を超える驚きと興奮を提供したい、と考えています。そのためには、お客様一人ひとりの気持ちを慮ったアプローチが必須です。
例えば、現在拡大中の「GiGOリンク」※1のような仕組みを通じ、お客様がより簡単にスマートにプレイできる環境を提供し、リアルタイムで個別最適化されたコミュニケーションを行うことが可能になります。Braze導入により、アプリは決済手段だけでなく、自宅や通勤中でもプッシュ通知などで来店を促すCRMツールとしても機能し、利用シーンが拡大しました。こうしたパーソナライズ施策を実現するBrazeは、当社が目指す熱狂体験の創造に大きく寄与すると考えます。
※1GiGOリンク対象店舗のゲーム機に設置されているGiGOリンクシールにお手持ちのスマートフォンをタッチするだけで、ゲーム機とつながり、アプリ内決済でゲーム機にクレジットが投入できる機能です。
CDO Club Japan(以下、CDOクラブ)は、グローバルで展開するCDO(最高デジタル・データ責任者)コミュニティの日本支部です。CDOクラブでは、AI・デジタル活用といったナレッジシェアやCDOの後継育成などに取り組んでいます。大手企業中心のコミュニティの中で、比較的若い世代の「次世代的な形」として選出されたと認識しています。
選任にあたってはGENDAでのDXの取り組みが評価され、GiGOのデータによる商品戦略改善で年間数億円規模の売上収益改善が認められたことを非常に嬉しく思っています。とは言え、GENDAのDX推進およびデジタル活用はまだまだ道半ばです。CDOクラブでの交流で得られたナレッジをGENDAに還元し、インフラ系や金融が中心でエンタメ業界の参画が少ない中で、業界におけるDX・データ活用のファーストペンギンとなり、先駆的な事例を多数創出していきたいと考えています。
GENDAのようにオンラインに加えてリアル店舗も展開する業態では、オンラインとオフライン双方のデータを統合することで、お客様の1日の行動パターンや嗜好などに関する深いインサイトを、より高い解像度で仮説立てできることが多々あります。オンラインだけ、あるいは店舗だけのデータでは見えづらいお客様の実像に迫る面白さを感じられるはずです。
併せて、マーケターとして活躍するためには、定量データと定性データの両者を活用できるスキルも重要です。特に経験上、定性データの準備が不十分な場合、仮説が外れてしまったり、施策が十分に機能しなかったりすることも少なくありませんでした。より有効なアウトプットを出すためにも、定量データだけでなく、消費者へのインタビューやアンケートといった定性データを取り扱うスキルの重要性も意識しながら、今のうちから準備を進めてみてはいかがでしょうか。
また、私自身の経験則では「キャリアの掛け算」が市場価値を高めます。営業から始まり、エンジニアリングやプロダクトマネジメントを経験し、その後データ分析に深く関わるといったように、異なる領域の経験を組み合わせることで、自身の市場価値の希少性を高めることができます。相手の立場に立つという意味でも、営業であればスタッフ側や本社側の視点、開発であればビジネス側の視点など、両方の経験をすることで仕事がうまくいく機会が多くあります。様々なチャレンジを通じて、自身の可能性を広げていくことをお勧めします。
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