人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち Vol.13 | 前本 航太さん

公開 2026年5月19日/更新 2026年5月19日/11 分で確認

人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち Vol.13 | 前本 航太さん
作成者
Team Braze
Braze

Contents

人とブランドの“つながり”をつくる、挑戦者たちの物語

Brazeでは、顧客とのエンゲージメントに革新をもたらす人々に独自でインタビューを行い、彼らの挑戦と成果を紹介する「人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち」をお届けしています。現場での知見や工夫、Brazeの活用方法など、実践的でリアルなストーリーを通じて、マーケティングの未来を考えるヒントを共有していきます。今回は、株式会社カウシェにて執行役員CMOを務める前本航太さんにお話を伺いました。

――キャリアパスと、現在の職責について教えてください。

前本 大学時代にメキシコへ留学した時、授業を受ける傍ら、インターンのような形で現地企業で働いた経験があります。内容は集客、分析の手伝いなどで、ここでマーケティングに興味を持ったことが、キャリアのそもそもの始まりでした。ただ、あくまでもアルバイト的なお手伝いだったので、帰国後は、もともと好きだった旅行とマーケティングを軸に本格的なインターンをやろうと考え、出会ったのが宿泊予約サイトの「Relux」を運営するLoco Partnersです。学生なのに大きな仕事もまかせてもらい、仕事が楽しく、留年するくらい夢中になっていましたね。

就活でいくつか内定をもらいましたが、この仕事をもっと突き詰めたいと思い、卒業後はそのままLoco Partnersへ。プロモート責任者としてサービスの成長に携わっていましたから、メキシコで興味を持ったマーケティングを、前職で実務として深く掘り下げた、という流れになります。今はカウシェのCMOとして、マーケティング戦略の策定、実行を統括する立場です。

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――カウシェには2020年の起業時から参加していますが、どういう経緯で?

前本 サービスが成長する過程を見るのは楽しかったのですが、0→1に近いフェイズの挑戦がしたくなり、徐々に転職を考えるようになりました。そんな時、前職の先輩であり、カウシェの現CEOの門奈(剣平氏)から「起業するから一緒にやろう」と誘われます。

印象に残っているのは、お金も具体的なプロダクト案もないのに、門奈は「ユニコーンを目指す」と、とにかくアツく語っていたこと。2人であれこれ話していると、先の見えない未来にワクワクしている自分がいて、純粋に楽しいと思っていました。門奈の人柄はよく知っていたし、信用できる先輩でしたから「一緒なら面白いことができる」と思ったのが、カウシェの立ち上げに参加するきっかけでした。

――カウシェは複数で購入することで価格を下げる、共同購入型のECサービスとして起業ししましたが、2023年に大胆なピボットを行っていますね。

前本 起業する時、念頭にあったのはタイムマシン経営で、中国で普及しているけれど、日本ではまだこれからというサービスで市場の先駆けになりたいと考えました。その1つが共同購入型ECで、期待値は高く、資金調達もスムーズだったと思います。コロナ禍の需要もあり、出だしは好調だったのですが、その先、期待されている以上の成長曲線を描くことができませんでした。このままでは尻すぼみになってしまう危機感を覚え、ピボットという選択をししまた。

大手EC事業者がいる市場で、我々を選んでもらう明確な理由を示せなかったのが原因だとわかっていたので、考え方を根本から変えました。ものを売るためのECではなく「新しい生活圏」をつくることを目指し、開発したのが「カウシェファーム」というミニゲームです。アプリ内の仮想の畑で水や肥料をあげ、育てた野菜が無料でもらえるカウシェファームがサービスの特徴であり、選んでもらう理由になっています。

このビジネスモデルの強みは、お客様の滞在時間です。欲しいものがある時だけでなく、日々の野菜の世話が習慣化するため、1日の平均滞在時間は約38分。これは通常のECの3~5倍、SNSと同じくらいの時間となっています。

――アプリの累計ダウンロード数が600万件を超えるなど、ピボット後は急成長を遂げていますが、マーケティングの難しさはどこにあると感じているのでしょうか。また、具体的にどんな取り組みをされているのでしょうか。

前本 新規獲得かリテンションか。これはECに限らずさまざまなサービス共通の課題ですが、カウシェでは新規獲得の施策でもリテンションを意識しています。低い単価で新規集客できても、7日後にほとんど残っていなかったら意味がないからです。そこで、CPIだけで見るのではなく、CPIに7日後の維持率(D7RR)をかけ合わせた「実質CPA」で媒体ごとに比較しています。

以前は分散しているデータを集約し、手作業で分析していましたが、あまりにも非効率なので、Claude Codeを使い、見たい指標がワンクリックで確認できるダッシュボードを自作しました。PDCAの回数が圧倒的に増え、より早く、深く見られるようになったため、施策の精度は向上しています。

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――リテンションの改善はBrazeを有効活用できる領域ですが、CRMツールとしてではなく独自の工夫をされているそうですね。

前本 リテンションの本質的な裏付けはプロダクトの体験向上であり、コミュニケーションは補助線、というのが基本的な認識です。とはいえ、プロダクトの開発、改修はコストがめちゃめちゃ大きく、外した時の痛みも比例して大きい。そこで、Brazeを「プロダクトとマーケの実験場」として位置づけ、機能開発前テストを行っています。

ここには3つのステップがあり、1つ目のステップはBrazeを使った実装前のテスト。2つ目はアプリ内の特定行動をトリガーにしたメッセージや体験の出し分けで、Brazeはノーコードで設定できるのでマーケ側で完結します。そして、プッシュを開いた人が購入に至ったか、リテンションが上がったかまで追いかけ、リフトしたら、3つ目のステップとして本格的な開発に着手します。

Brazeで小さく試し、効果があるものだけを昇格するため、開発の打率は上がっています。また、実装前にBrazeで試しているため、仮に外れても損失は抑えられる。エンジニアの工数を無駄に使う必要がなく、これも重要なポイントです。

――仮説を検証、分析するプロセスでは、どんな工夫をしているのでしょうか。

前本 多くの施策をスピード感を持って打てても、検証、分析が追い付かなくては意味がありません。そこで、PDCAの「C」がボトルネックにならないよう、Braze MCPとClaude Code、データハウスを組み合わせ、「問いかけ」だけで分析が完了する仕組みを構築しています。

例えば「先週のキャンペーンのバリアント別D7RR(7日後リテンションレート)を比較して」と自然言語で問いかけると、Braze MCPがBraze Canvasの構成情報を取り込み、BigQueryでリテンションや購入データと横断分析し、レポートとグラフ自動生成。これが数分で終わります。ゼロからSQLを自分で書き、分析していた時に比べると、数時間から半日かかっていたリードタイムが数分にまで短縮されます。

以前は、ちょっと気になっても時間がかかるからスルーしていたものが、いつでも、思いついた時に実行できるようになるのが大きな変化です。最終的な意思決定は人間が行いますが、最初のたたき台づくりをAIにまかせることで、分析の数が増え、勝ち筋に当たる確率は間違いなく上がります。

――Brazeのようなツールを顧客体験づくりに使うのはあたり前になっていますが、前本さんはどう向き合っているのか。また、これからの時代のマーケターに求められる資質についてどうお考えでしょうか。

前本 Brazeはほぼ毎日使っていますが、MCP連携を含め、テクノロジー投資でワクワクさせてくれるツールだと思っています。マーケターが「こういうことをやりたい」と思うと、実現する仕組みがBraze側で既に用意されている。そんな状況でもあり、テクノロジーの進化によって、技術的なところではなく、誰に何を届けるのかという、マーケティングの本質的な部分にかける時間が増えているのではないでしょうか。

マーケターの仕事は「分析する」から「問いを立てる」に変わり、ここが最も重要なスキルになっていると思います。スキル、経験はもちろん重要ですが、それ以前に、人間に対する興味をもとに、市場を俯瞰的に見ながら問いを立てる力が必要です。

――顧客体験づくりに携わるマーケターとして、意識していることを教えてください。

前本 漠然とではなく、社内全体で共有できる顧客ペルソナを設定して、プロダクトもサービスも、そのペルソナ(社内では「宮崎さん」と呼んでいる)にパッと届くか、刺さるかを突き詰めて考えるようにしています。また、カウシェは「新しい生活圏」をつくることを目標としているため、リアルなお客様に対面で話をうかがう機会がとても重要です。個別インタビューだけでなく、複数のお客様を招いた座談会も定期的に行なっていて、ここも徹底しています。

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――今後、取り組みたいこと。また、こんなキャリアを築いていきたい、というビジョンがあれば聞かせてください。

前本 今の職責で成し遂げたいのは、ものを買うだけのECではなく、日常的に楽しめる新しい生活圏を提供するという、カウシェの目標をマスに対して実現することです。1000万人、3000万人、もっと多くの人に使っていただけるよう、プロダクトとマーケティングの両面でいろんなチャレンジをしていきたいと思います。

個人のキャリアについては、これは私のパーソナリティでもありますが、明確なものはありません。というか、考えないようにしています。目の前のことを全力でやり切れば、新しい世界が見えるはずなので、そこで選択すれば、自然と一貫性のあるキャリアが築かれるのではないでしょうか。なので、今はカウシェの成長に全力で向き合っているし、頼れるツールとしてBrazeに期待しています。

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