Appleの新OSにメールプライバシー保護機能が登場 メールマーケティングへの影響と必要な対策

Published on 2021年9月16日/Last edited on 2022年12月14日/7 min read

Appleの新OSにメールプライバシー保護機能が登場 メールマーケティングへの影響と必要な対策
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ティファニー リン

2021年9月中旬に公開されるApple社の「iOS 15」。新たなOSに搭載された機能「Mail Privacy Protection(MPP)」は、メールマーケティングの分野に大きな影響を与えることが予想されます。

MPPは、iOS 15、iPadOS 15、macOS Monterey、watchOS 8のApple Mailユーザーが利用できるようになるプライバシー保護機能で、プロキシサーバーを使用しているすべてのメールを自動的にプリロードし、マーケティング担当者によるメッセージ内のトラッキングピクセル活用を防止します。これにより、メール受信者のIPアドレスやメール開封状況の正確な追跡ができなくなります。

今後はMPPによってメール開封率が以前より高くなることを想定されますが、メールが実際に開封されているのか、MPPによって開封されたのかを区別する方法は今のところありません。メール開封率に基づいてリターゲティングを行っている場合には、マーケッターの意図しないメッセージングが送られる可能性もあります。

MPPに備え、既存のキャンペーンやメール開封をトリガーとするメッセージングフローの見直しなどが必要ですが、本記事では、Brazeの予備テストを踏まえたMPPの利用方法と企業の対応策をご紹介します。

MPPの利用方法

MPPは比較的簡単に利用できます。iCloudのメールアカウントは不要で、Appleの最新OSであり、かつメールアカウントをApple Mailアプリに接続していれば誰でも利用できます。

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手順は、メール設定の「プライバシー保護」に移動し、「メールアクティビティの保護」をクリックするだけ。この時、複数ある機能のうち一部だけの利用も可能です。さらに、OSアップデート後のメールアプリのセッションで、MPPを有効にするようユーザーに促すことが予想されるため、機能を知らなかった人を含め多くの人が利用する可能性があります。

MPPにおける2つの重要な設定

  • IPアドレスを隠す

メールを開封した際に受信者の本当のIPアドレスが送信者に隠され、代わりにランダムなIPアドレスがメール開封イベントに含まれるようになります。これにより、受信者のIPアドレスを活用したメールマーケティングや位置情報の追跡ができなくなります。ただし、Apple Mailを使用せずにメールを開封したユーザー(デスクトップのGmailでメッセージを開封した場合など)は、その開封時に正確なIPアドレスを共有することになります。

  • リモートコンテンツをすべてブロック

この設定をオンにすると、メールに含まれるすべての画像が自動的にキャッシュされ、開封トラッキングピクセルが読み込まれます。これにより受信者が実際にメッセージを確認したかに関わらず、開封したと記録されてしまうのです。なお、メールに含まれる画像は自動的には読み込まれず、受信者に「すべての画像を読み込む」というオプションが表示。そのオプションを選択すると画像が表示され、「2回目のメール開封」として記録されます。

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この機能をBrazeがテストしたところ、MPPに関連する最初の開封では、いずれのテストでもユーザーエージェントが「Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/42.0.2311.135 Safari/537.36 Edge/12.246 Mozilla/5.0」となっていました。一方、受信者がトリガーとなる2回目の開封では、一般的な「Mozilla/5.0」のユーザーエージェントが使用されています。これらのユーザーエージェントをApple Mailユーザーのセグメント化に活用できるか、また2回目の開封が1回だけの開封より重要なパフォーマンス指標となるかはまだ分かりません。

MPPへの備え

過去5年間、Apple社は一貫して9月13日から19日の間に最新のOSを発表しており、Appleユーザーは新しいOSに素早く対応しています。つまり、MPPが自社のマーケティングプログラムに大きな影響を与え始めるまで、限られた時間しかありません。MPPの影響を最小限にするために、各企業は以下のような対応を行う必要があるでしょう。

  • MPPが自社のマーケティング活動に与えるリスクを軽減
  • MPPへの対応計画の策定
  • 対応策の早急な実施

MPPへの対応方法について考える際には、メールキャンペーンの成功に何を指標とするか、使用すべきツールや機能はどのようなものか検討する必要があります。Brazeが推奨するのが、以下のような変更です。

1.自動化:

受信者がメールを開封した(または開封できなかった)ときにトリガーされるアクティブなキャンペーンや自動化されたカスタマージャーニー(Braze Canvasのカスタマージャーニー管理機能など)がある場合、MPPが完全に有効になる前にメール開封に基づくキャンペーンのターゲティングロジックを見直すことが必要です。MPPによる開封は、メールやその他のメッセージングチャネルを介した不要なキャンペーンを引き起こす可能性があります。これにより、ユーザーに迷惑をかけるだけでなく、マーケティング戦略全体の効果を損ねることになりかねません。

2.配信性:

配信の面では、メールのサインアップとパーミッションの成功事例を参考にすることが重要です。これは、すべてのメール受信者から明確な同意を得ること、メッセージケイデンスを管理するオプションを備えた強固なプリファレンスセンターを実装すること、カスタマージャーニーの最初の段階でプリファレンスセンターをユーザーに表示すること、そして反応しなくなったユーザーを見極めることを意味します。

3.指標:

メールキャンペーンを「成功した」と評価するためには、パフォーマンスを測定するためのより広範な指標を設定する必要があります。開封数ではなく、MPPの影響を受けないクリック数が最大になるようにメールメッセージを最適化し、この指標をより詳細に追跡しましょう。また、ネガティブな指標(スパムの苦情、ハードバウンス、配信停止、開封数の不足など)と、生涯価値(LTV)や平均ユーザー寿命などの主要なカスタマーエンゲージメント指標との両方に目を配り、マーケティングプログラムの成果を把握する必要があります。

まとめ

お客様とのコミュニケーション手段としてメールを使用する企業にとって、AppleのMPP機能のリリースは、カスタマーエンゲージメントプログラムに大きな影響を与える可能性があります。最悪の事態に備え、対策に向けて迅速に社内連携と行動をすることをお勧めします。

その他のガイダンスをお探しの場合は、アリソン・グーティーの「メールマーケティング担当者がAppleのメールプライバシー保護機能に対応するための方法9選」をお読みください。また、Apple社のメール関連の新機能である「Hide My Email」についてもご覧ください。

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