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約120の国と地域にまたがる550万人超の海外ユーザーを抱えていましたが、従来使用していたGoogleアナリティクスやBigQueryでは、個々にパーソナライズされた施策を十分に展開できず、休眠顧客の増加とリテンション率の低迷という課題が生じていました。
「メール」「アプリ内メッセージ」「コンテンツカード」の3つのチャネルを通じ、パーソナライズされた施策を展開しています。例えば、ユーザーを細かくセグメント分けし、それぞれの層に合ったクーポンを配布しています。さらに、Buyeeサイト内の「メルカリ」販売ページにおいても、パーソナライズ施策を積極的に展開しています。
Buyeeサイト内の「メルカリ」販売ページで実施したキャンペーンでは、Braze導入前と比較してROASが180%向上し、新規ユーザーのLTVも3.4%向上しました。さらに、1人当たりのクーポン利用額も、Buyee全体で9.2%、メルカリ販売ページでは3.4%削減できました。
キャンペーンROASの上昇率
新規ユーザーLTVの上昇率
クーポン利用額の削減率
当社は、約120の国と地域の海外ユーザーへ、海外発送代行サービス「転送コム」および購入サポートサービス「Buyee(バイイー)」などを提供している、越境ECサポート企業です。
転送コムは、海外ユーザーが日本のECサイトの商品を購入できるサービスです。日本のECサイトは国内住所へしか商品を配送できないため、転送コムが海外ユーザーに代わって商品を国内倉庫で受け取り、海外ユーザーの元へ発送しています。
Buyeeは転送コムをさらに進化させた、当社の中核サービスです。具体的には、翻訳、決済、海外発送手続き、18言語でのお問合せサポートなどを提供し、海外ユーザーが国内ECサイトで商品を購入する際の障壁を一気通貫で解消しています。
物流会社との長年の提携実績による低コスト化や、国内連携ECサイトの豊富さなどを背景に、転送コムとBuyeeの海外ユーザー総数は2024年8月時点で累計550万人(※2025年2月には600万人を突破、以下同)を突破しています。
tenso株式会社 執行役員 グロースマーケティングDiv. 王 軼氏
休眠顧客の多さやリテンション率(顧客維持率)の低さに悩んでいました。これらの指標が低迷していた背景には、550万人超の会員に対して、パーソナライズされたマーケティング施策が十分に展開できていなかったことが要因でした。
Braze導入前は、別のマーケティングツールを利用していましたが、十分に活用できず契約を終了しました。その後は、GoogleアナリティクスやBigQueryを用いてデータ分析を行っていましたが、これらのツールでは精緻なセグメンテーションと、それに基づいた施策の策定と実行が困難な状況でした。そのため、全ユーザーに対して同じ内容のクーポンを一斉配布したり、メルマガを一斉送信したりといった画一的な施策に終始せざるを得ませんでした。
確かに、約120の国と地域にまたがる550万人超の海外ユーザーにパーソナライズド施策を実施するのは容易ではありません。しかし、実現できた際のインパクトは非常に大きいと考えていました。
導入のきっかけは、すでにBrazeを活用している当社の重要なパートナー企業である株式会社メルカリからのご紹介でした。Brazeの機能が当社の課題を解決できるのかという観点で検討を開始しました。
導入の決め手は、カスタマージャーニーに沿った分岐を作り、個々のユーザーに最適化されたコミュニケーションを図れる点でした。この機能によって、550万人超のユーザーに対してパーソナライズされた施策を実現できることがイメージできたからです。
2023年10月から2ヶ月間のオンボーディング期間を経て、2024年1月からBrazeを本格始動させました。オンボーディング期間中は、Braze社のオンボーディング担当者と毎週1時間の定例会議を開いていただき、疑問点を解消することができました。
また、マーケティングツールの利用経験が浅かったため、導入当初は「多機能で便利そうだが、操作が難しそう」と感じていました。しかし、Braze社の担当者が定例会議以外にもこまめに連絡を取ってくださったおかげで、スムーズに操作を習得できました。
顧客の属性や行動履歴に基づいたパーソナライズされたマーケティング施策を展開しています。具体的には、テキストおよび画像の言語を顧客の属性に合わせて分岐させたシナリオに沿って、「メール」「アプリ内メッセージ」「コンテンツカード」の3つのチャネルを通してコミュニケーションを図っています。
例えば、Braze導入前は全ユーザーへ一斉配布していたクーポンも、導入後は細かくユーザーをセグメンテーションした上で、アプリ内メッセージやコンテンツカードで効果的に配布しています。このようなパーソナライズ施策は、Buyeeサイト内に設置している「メルカリ」の海外ユーザー向け販売ページでも積極的に実施中です。また、新規サイト訪問者に対しては、会員登録促進バナーを表示する施策も行っています。
実際のコンテンツカードやアプリ内メッセージ
Buyeeサイト内メルカリページにおけるパーソナライズド施策のキャンペーンROAS(キャンペーン投資の費用対効果)は、Braze導入前と比べて前半期比180%増加し、新規ユーザーのLTV(顧客生涯価値)も前年比3.4%向上しました。さらにBuyee全体のLTVも前年比4.2%増加しています。
また、Brazeを用いて既存ユーザーへのパーソナライズ施策に注力した結果、1人当たりのクーポン利用額も削減できました。具体的にはBuyee全体で前年比9.2%減、Buyeeサイト内メルカリページでは前年比3.4%減を達成しています。そのほか、メルマガの平均開封率が従来ツールと比べて約5%向上した期間もありました。
顧客満足度向上やブランドロイヤリティ向上を実感しています。また、社内開発リソースの負担軽減にもつながっています。これは、自社開発では年単位の構築期間を要するマーケティング機能が、Brazeにはすでに搭載されているためです。例えば、現在レコメンデーション機能を社内で開発していますが、Brazeの「AIアイテムレコメンデーション」機能も検証中で、有効と判断できればBrazeの機能を採用することで、社内開発リソースを他のプロジェクトに振り分けることができます。
引き続きBrazeの機能を活用し、過去の購買履歴や興味・関心に基づいたパーソナライズされた施策を展開していく予定です。例えば、これまでアプローチが十分でなかった休眠顧客や離脱ユーザーに対しては、自社データを基に広告配信を最適化する「Braze Audience Sync(オーディエンス連携)」や、購買可能性スコアを活用した「AI購買予測機能」などを用いて、休眠顧客の掘り起こしや離脱ユーザーの復帰率向上を目指します。
また、クラウドデータプラットフォーム「Snowflake」との連携も検討中です。Brazeの一部データをSnowflakeと連携させることで、例えば閲覧コンテンツと購入商品の相関性を定量化したり、過去30日間の購買履歴に基づいたより魅力的なクリエイティブを制作したりといった、データドリブンな施策展開を加速できると考えています。
このようなユーザー一人ひとりとの最適なコミュニケーションを通じて、長期的なカスタマーエンゲージメントの向上を目指します。
「Brazeを用いて何を実現したいのか」という点について、明確なビジョンを定めた上で導入検討を進めることが重要だと考えます。それと並行して、「○○を実現したいからBrazeの導入を検討する」という目的意識を持ち、Brazeについて主体的に情報収集を行うことも大切です。Brazeで実現できることと、自社が実現したいこととの間にどの程度の整合性があるのか、仮説を立てて検証しておくことをお勧めします。加えて、Braze導入後の運用体制や担当者を事前に検討し確保しておくことで、スムーズかつ効果的な運用が可能になるでしょう。
Braze導入によって、これまで実現が難しかったパーソナライズド施策を展開できるようになり、マーケティング効果を大きく向上させることができました。今後は未利用機能の活用や他サービスとの連携によって、より精密な顧客分析とそれに基づくOne to Oneコミュニケーションを実現し、さらなる顧客エンゲージメントの向上を目指します。
海外顧客向けにテキストおよび画像の言語分岐を施し、シナリオに沿いパーソナライズされたマーケティング施策を実施。キャンペーンの費用対効果(ROAS)向上や、新規ユーザーのLTV(顧客生涯価値)向上を実現しました。