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Brazeは「プロダクトとマーケの実験場」 Shopify x Braze MCP x Claude Code 連携で 顧客体験の向上と持続的な成長を両立させる

Brazeは「プロダクトとマーケの実験場」 Shopify x Braze MCP x Claude Code 連携で 顧客体験の向上と持続的な成長を両立させる
課題

アプリの限界DAUを把握するために、Carrying Capacityという概念を軸に、マーケティングと全社をつなぐ共通言語としている。限界DAU(Daily Access Users / 1日あたりの利用者数)を上げるには新規流入、リテンションの改善が必要だが、新規流入に関しては、データが分散しているため集約と分析に時間がかかるという課題があった。リテンションに関してはプロダクトの開発、改修がポイントになるが、コストが大きく、外した時の痛みも大きいという課題があった。PDCAの進化にも取り組む必要があった。

戦略

各広告媒体やデータハウスに分散していたデータを突き合わせ、見たい指標がワンクリックで見られるダッシュボードをClaude Codeで自作。CPIにD7RRをかけ合わせた実質CPAで、新規流入に関わる各媒体を比較するようにした。リテンションに関しては、Brazeを「プロダクトとマーケの実験場」と位置付け、マーケ側で機能開発前テストを行うようにした。また、Braze MCP × Claude Code × BigQueryのフローで、分析リードタイムの短縮を目指した。

成果

Claude Codeで自作したダッシュボードは「先週のある媒体のD7RRが落ちた要因を考察して」と問いかけるだけで、仮説まで返してくれる。PDCAの回数が圧倒的に増え、新規流入の質を高められている。Brazeを使った機能開発前テストでは、リフトしたものだけを本開発から実装に昇格させるため、開発の打率が大きく向上している。エンジニアの負担も軽減した。AIを活用した分析フローでは、以前は数時間から半日かかっていた作業が数分で完結し、分析の数は増え、質も上がり、勝ち筋に当たる確率が上がった。

KAUCHE

最初に御社のEC事業の特徴、強みを教えてください。

食品や日用品をお得に購入できるショッピングアプリ「カウシェ」を運営しています。ひと言でいうとECサービスですが、カウシェファームという、アプリ内の仮想の畑で水や肥料をあげ、育てた野菜が無料でもらえるミニゲームが特徴であり、強みです。カウシェファームを軸にしたビジネスモデルの強みは、お客様の滞在時間です。欲しいものがある時だけでなく、日々の野菜の世話が習慣化するため、1日の平均滞在時間は約38分。これは通常のECの3~5倍、SNSと同じくらいの時間となっており、ものを売るためのECではなく「新しい生活圏」をつくることを目標としています。

2020年に起業した際はシェア買い、誰かと一緒に買うことで安くなる共同購入型のビジネスモデルでした。コロナ禍での需要もあり、出だしは好調だったのですが、その後は思うような成長曲線を描けず、次第に行き詰まりを感じるようになります。思い切ってピボットしたのが2023年。以降は、ゲーム性と実利のあるカウシェファームが話題となり、ピボット直後と比べるとGMV(Gross Merchandise Value / 流通取引総額)が30倍、売上総利益が252倍、DAUは68倍になりました。累計ダウンロード数は600万件を突破しています。

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ピボットの成功例として取り上げられることも多く、極めて順調に成長していると思えますが、ピボット前後でマーケティング戦略に変化はあったのでしょうか。

Howは変わっていますがCoreの部分はあまり変わっていないと思います。大手EC事業者がたくさんいる中で、カウシェを選ぶ理由をどうつくるかがCoreの部分。共同購入型ビジネスモデルでは明確化できていませんでした。ピボット後は、ものを買うために訪れるのではなく、長く滞在し、野菜を育てる体験を楽しんでいただくという、逆転の発想から生まれたカウシェファームが、我々のサービスを選ぶ理由になっています。

今現在の課題は、新規獲得かリテンションか。どっちに、どれだけ投資するのが最適なのかは本当に悩みます。最初に答えをいうと「どちらか」ではなく「両方」。とはいえリソースは限られているわけですから、優先順位をどうつけるかがポイントです。

御社はどうやって決めているのか、教えてください。

キーワードは「アプリの限界DAU」です。あなたのアプリが、今の実力で維持できるユーザー数の上限を即答できますか? こう問われて即答できる方は少ないでしょうし、私もこの問いに出会う前は答えられませんでした。カウシェでは、アプリの限界DAUを知るためにCarrying Capacityという概念を使っています。もともとは食糧や水、生息地が与えられた環境で、維持できる生物種の最大個体数を導く生態学の用語です。プロダクトやサービスに置き換えると、今の実力で維持できるユーザー数の上限となり、キャンペーンや広告で一時的にユーザーを増やしても、構造的に抱える力以上には積み上がらず、最終的にはある水準に落ち着く。その上限値を示してくれます。数式はすごくシンプルで、

1日あたりの新規流入ユーザー数÷1日あたりの離脱率

毎日の流入数が5000人で離脱率が1%だと、上限のDAUは50万人。どうすれば限界DAUを上げられるかは、流入と離脱率で決まります。効果が大きいのは離脱率の改善で、例えば3%から1%に改善すると3倍になるし、1%が0.1%まで下がれば10倍です。流入と離脱率はどちらも大事ですが、優先すべきは離脱率の改善。離脱率が高いまま広告を打っても、バケツに穴が開いた状態で水を入れるようなものです。

無駄な広告投資を減らすために、離脱率と流入の順序が重要なのですね。

その通りです。また、施策の効果を共通言語として共有し、実感できるのも重要なポイントになります。例えば「離脱率が0.1%改善した」といっても、数字が小さいからピンと来ないでしょう。でも、Carrying Capacityの数式だと「0.1%の改善で半年後のDAUが〇万人押し上がる」と、具体的な数字で示すことができます。開発チームのモチベーションは上がるし、今はどこに投資すればインパクトが大きいかの投資判断を行う際も、説得力を持って経営陣と話せるようになります。

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具体的にどんなマーケティング施策を行い、効果が得られているのでしょうか。

どの媒体にどう出稿するかではなく「継続率が高いお客様をどう増やすか」であり、流入の質が重要です。低い単価で新規集客できても、7日後にほとんど残っていなかったら意味がありません。我々はCPIに7日後の維持率(D7RR)をかけ合わせた「実質CPA」を見て、媒体ごとに比較します。

実行には各媒体のレポート、プロダクトデータなどを突き合わせが必要なものの、分散しているデータを集約し、手作業で分析するのは大変でした。そこで、見たい指標がワンクリックで確認できるダッシュボードをClaude Codeで自作しました。PDCAの回数が圧倒的に増え、より早く深く見られるようになったため、施策の精度は向上しています。

リテンションの改善についてはBrazeを活用しているそうですが、CRMツールとしてではなく、独特な工夫をしているとか。

Brazeの位置づけは「プロダクトとマーケの実験場」です。リテンションの本質的な裏付けはプロダクトの体験向上であって、コミュニケーションは補助線だという認識ですが、プロダクトの開発、改修はコストがめちゃめちゃ大きく、外した時の痛みも比例して大きくなるもの。そこで、Brazeを使って機能開発前テストを行い、リフトしたものを実装のフェイズに移すわけです。3つのステップがあり、1つ目のステップはBrazeを使った実装前のテスト。2つ目はアプリ内の特定行動をトリガーにしたメッセージや体験の出し分けですが、Brazeはノーコードで設定できるのでマーケ側で完結します。そして、プッシュを開いた人が購入に至ったか、リテンションが上がったかまで追いかけ、効果が見えたら、3つ目のステップとして本格的な開発に着手します。

具体的な例を教えていただけないでしょうか。

例えば「特定の行動をしたユーザーに、その行動から24時間位以内に特別なクーポンを出したい」という施策があったとします。よくあるのは、トリガーのイベント定義、クーポン発行のロジック、配信タイミングの制御、効果測定の仕組みなどをエンジニアに依頼すること。でもBrazeを使うと、トリガー設定もメッセージ配信もマーケ側が1日で組めます。それを2週間回し、効果を見て、リフトするなら実装、しないなら捨てる、という判断ができます。Liquidで対象のお客様ごとに表示させるクーポン、有効期限を動的に変えるテストをして、購入回数がリフトしたのでプロダクト実装した例があります。

Brazeで小さく試し、効果があるものだけを昇格するため、開発の打率は間違いなく上がっています。また、実装前にBrazeで試しているため、仮に外れても損失は抑えられる。エンジニアの工数を無駄に使う必要がなく、これも重要なポイントです。

Brazeを実験場として使うことで、ここでもPDCAを高速で回せるようになりますね。

その通りなのですが、問題になるのがPDCAの「C」、Checkのところで、施策を打つのが速くても分析が追い付かず、ボトルネックを起こしていました。そこで取り組んでいるのが、Braze MCPとClaude Code、データハウスを組み合わせ、「問いかけ」だけで分析が完了する仕組みづくりです。

構造はシンプルで、例えば「先週のオンボーディングキャンペーンのバリアント別D7RRを比較して」と自然言語で問いかけると、Braze MCPがCanvasの構成情報を取って来る。そして、BigQueryでリテンションや購入データと横断分析し、レポートとグラフが自動生成される。これが数分で終わります。ゼロからSQLを自分で書き、分析していた時に比べると、数時間から半日かかっていたリードタイムが数分にまで短縮されます。

以前は、ちょっと気になっても時間がかかるからスルーしていたものが、いつでも、思いついた時に実行できるようになるのが大きな変化です。最終的な意思決定は人間が行いますが、最初のたたき台づくりをAIにまかせることで、分析の数が増え、勝ち筋に当たる確率は間違いなく上がります。

今後、取り組みたいこと。Brazeに期待したいことを聞かせてください。

お客様に日常的な楽しさを届ける。単にものを買うだけのECではなく、新しい生活圏を提供したい、という基本の部分は変わらず、それをマスに対して実現できるように挑戦していきたいと思っています。1000万人に、毎日使っていただける実力を持つサービスに成長させるにはどうしたらいいか。プロダクト、マーケティングの両面で、いろんなことにトライしたいですね。先日、カウシェはDeNAからの出資、業務提携を締結したことを発表しましたが、成長のアクセルを大きく踏み込みきっかけになると期待しています。

Brazeに関しては、MCP連携もそうですが、テクノロジー投資という観点で、今も一番ワクワクさせてくれるツールだと思っています。マーケターが「こういうことをやりたい」と思うと、実現する仕組みがBraze側で既に用意されている。そんな印象で、私も毎日のように使っていて、本当に重宝しています。今後の挑戦にも欠かせないツールだと思っていますし、これからもワクワクさせてほしいですね。

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まとめ

DAUが伸び続ける、持続的な成長モデルをつくるため、我々は以下の3つのポイントを重視しています。1つ目は、Carrying Capacityを共通言語化し、新規かリテンションかの議論を、感覚論ではなく数式で語るようにすること。チームの意思決定スピードが劇的に変わります。2つ目は、プロダクト改修の前にBrazeで小さく検証し、当たったものだけを本実装する、実験の文化。開発の打率とともに組織全体の成長スピードが上がります。3つ目は、Braze MCPとAIエージェントを組み合わせによる分析リードタイムの高速化で、PDCAの「C」のボトルネックが解消されます。


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