人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち Vol.14 | 坂本 武史さん
公開 2026年6月30日/更新 2026年6月30日/10 分で確認


Team Braze
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人とブランドの“つながり”をつくる、挑戦者たちの物語
Brazeでは、顧客とのエンゲージメントに革新をもたらす人々に独自でインタビューを行い、彼らの挑戦と成果を紹介する「人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち」をお届けしています。現場での知見や工夫、Brazeの活用方法など、実践的でリアルなストーリーを通じて、マーケティングの未来を考えるヒントを共有していきます。今回は、サツドラホールディングス株式会社 CDO兼株式会社サッポロドラッグストアー OMO本部本部長兼マーケティング部ゼネラルマネージャーの坂本 武史さんにお話を伺いました。
「デジタルがマーケティングを変える」——店舗現場で芽生えた確信
―― 新卒でサッポロドラッグストアーに入社されてから、どのような経緯でデジタルマーケティングへの道を歩まれたのでしょうか。
坂本 入社してから7年ほど店舗に勤め、店長まで経験しました。その後、商品部を経てデザイン室に異動した際に、大きな転機が訪れました。店内のPOP制作をシステム化するプロジェクトを任されたのですが、その時に初めてデジタルの可能性をまざまざと実感しました。「毎回手打ちしなければならないのはおかしい、自動化できるはずだ」という問いを立てたのが、すべての始まりだったと思います。
当時、弊社の周囲を見渡すと、店舗統括のマネージャーや商品部を目指す人が大多数でした。でも私は、デジタルとマーケティングが掛け合わさる時代が絶対に来るという確信があって。それは直感というより、業務DXを通じてデジタルの力を目の当たりにした体験に基づくものでした。
デジタルを使えば、店舗ごとの個別課題をデータで把握して、必要な人に必要なタイミングでアプローチできる。そんな世界観がくっきりと見えてきた瞬間でした。マーケティングの可能性に夢中になっていきましたね。それまでの現場経験も、後になって「あの時こういう課題があった」という解像度を上げてくれる財産になっています。

アプリ開発の失敗と、諦めきれなかった理由
―― 現在のCDOというポジションに至るまでに、ターニングポイントとなった経験があればお聞かせください。
坂本 実は、アプリ開発では一度思うような成果を出せなかった経験があります。その経験を踏まえて改めて挑戦する機会をいただきました。でも、諦めきれなかった。「ちゃんとやり切ってリリースしたい」という気持ちを会社に認めていただき、もう一度チャレンジさせてもらいました。
その頃から、休日は、自分でアプリケーションを作ったり勉強したりを続けました。小売業界にはそういうことをやっているチームや人がほとんどいなかったので、外部のイベントに参加したり、教材を買い集めたり、自分でプロダクトを作ってみたりと、とにかく自分でなんとかするしかなかった。
その経験が、今のマーケティングからIT開発まで横断する自分のベースになっていると感じています。弊社の代表がデジタルに明るく、「やってみて」と背中を押してくれたことも、間違いなく大きな要因でした。ドラッグストア業界でCDOというポジションは珍しいかもしれませんが、デジタルとリアルで何ができるかを常に考えてきました。
「思いついたら即実行」——現場を知る者がつくる、インハウスマーケティング
―― CDOとして、現在はどのような領域を統括されているのでしょうか。
坂本 マーケティング全般に加えて、アプリケーション開発、ECプロジェクト、そしてデータ分析の4領域を担っています。弊社のマーケティングチームは自社のデータ基盤に直接アクセスして顧客データを活用してセグメントを設計し、施策を実行するまでをインハウスで一貫して担っているのが特徴です。外部に毎回見積もりを依頼していたら、スピードが低下します。マーケターが思いついたアイデアをその日のうちに試せる環境こそが、私たちの競争力だと思っています。
もう一つ大切にしているのが、チームメンバー全員が店舗を経験しているという事実です。現場を知っている人間がマーケティングをやる方が強い、というのは私の持論でもあります。お客さまが実際に来る場所を肌で知っているからこそ、データを見た時の解像度が違います。
現場感のある人間が仮説を立てるのと、そうでない人間が立てるのとでは、仮説の質そのものが変わってくるはずです。単純にマーケティングだけをやってきた人よりも、現場の空気を知った上で携わる人の方が、お客さまの気持ちに近い施策を打てるはずだと、今も強く感じています。

「できなかったことが、できるようになった」——Brazeが変えた施策のスピード感
―― Brazeを選定した経緯と、導入後の変化をお聞かせください。
坂本 選定の理由は、最初からパーソナライズに対応できるツールが欲しかったからです。ECでは以前からレコメンドが当たり前になっていたのに、小売では画一的な情報提供が普通でした。 この状況が変わる時代が来ると確信しており、購買データからIDまで一気通貫で連携した上でパーソナライズできる点を高く評価しました。いくつかのツールを比較検討しましたが、最終的にはBrazeの成長性と、できることの広さが決め手でした。
導入してから最も変わったのは、「思いついた施策を即実行できるようになった」ことです。以前は、たとえば「来店確率を高める施策をしたい」となると、アプリ開発会社に要件定義から依頼して、というプロセスが必要でした。今はBrazeの中でできることが圧倒的に増えていて、ミーティングで仮説が出れば、その日のうちに動き始められる。
プッシュ通知やメールなど複数のチャンネル、キャンバスを組み合わせたジャーニーオーケストレーション、広告との連携まで、デジタル上の施策のほぼすべてがBrazeを起点に動いています。できなかったことが、できるようになった。その実感が最も大きい点です。同じBrazeを使っている他企業の施策も参考にしながら、自分たちらしいアレンジで実装していけるのも魅力的です。
お客さまの複雑さと向き合い続けるマーケターの哲学
―― 広大な北海道を舞台に多様な顧客と向き合ってきた中で、顧客体験への考え方をお聞かせください。
坂本 北海道は、同じ道内でも札幌のような都市部から人口5千人以下の離島まで、エリアごとに顧客の特性がまったく違います。アプリが響くエリアもあれば、チラシの方が圧倒的に効くエリアもある。全国規模でやっているのと同じような多様性の中でマーケティングをしているイメージです。大雪の日には販促期間を延長するといった対応も必要で、北海道という舞台ならではのマーケティングと言えます。
一律に施策を打ち続けることの限界を感じるようになってから、ずっと考え続けているのが「お客さま一人ひとりが今何を欲しいのか」という問いです。購買データを積み重ねてクラスター化を試みたこともあるのですが、なかなかうまくいかなかった。人は皆合理的ではなく、そんなに単純ではないからです。
これまで特定の商品を継続的に購入していたお客さまが、ある日突然、禁酒している可能性があります。健康食に目覚めてもすぐ元に戻るかもしれない。その人間らしい変化を属性で括ることはできない、と今は思っています。だからこそ、先進的な施策への好奇心と、「今来ているお客さまが本当に求めているものか」という問いを常に両立させることが大切だと感じています。永遠に答えが出ないところに、この仕事の難しさと醍醐味があると思っています。
「まず自分でやってみる」——与えられるのを待つより、今動く
―― これからマーケティングの世界を目指している方へ、坂本さんからメッセージをお願いします。
坂本 マーケティングをやりたいのに、会社から役割を与えられるのを待っている人が多いように思います。でも、マーケティングはいつでも自分で始められるもの。サイトを作って、アナリティクスを入れて、数千円から広告を試してみる。SNSで告知も簡単です。今の時代、そういうことがすぐにできる環境が整っているのです。私自身、休日に一人でアプリを作り続けた経験が、今の仕事の土台となっています。
評論家でいることと、実際にやってみることでは、見える景色がまったく異なります。やったことがないのに理論だけで語るのは、どこかで実態との乖離が生じるでしょう。まず自分でやってみて、そのずれを体感することが、マーケターとしての成長の一番の近道だと確信しています。マーケティングの役割を会社から与えられるより先に、自分でその経験を積んでいる人の方が、周りから信頼を得るのも早いはずです。先ずは自分でやってみる。その積み重ねが、マーケターとしての成長につながるのではないでしょうか。

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