人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち Vol.15 | 﨑村 昂立氏
公開 2026年9月17日/更新 2026年9月17日/11 分で確認


Team Braze
Braze人をとブランドの“つながり”をつくる、挑戦者たちの物語
Brazeでは、顧客とのエンゲージメントに革新をもたらす人々に独自でインタビューを行い、彼らの挑戦と成果を紹介する「人とブランドをつなげる顧客体験の創り手たち」をお届けしています。現場での知見や工夫、Brazeの活用方法など、実践的でリアルなストーリーを通じて、マーケティングの未来を考えるヒントを共有していきます。今回は、株式会社ヤマップにてプロダクトマーケティングマネージャーを務める 﨑村 昂立さん にお話しを伺いました。
子供の誕生をきっかけに新たなキャリアパスを選択
――最初に、現職に至るまでのキャリアパスを聞かせてください。
﨑村 大学卒業後、東京の大手システム会社に就職しました。エンタープライズ向けの営業から始まり、後に広報、マーケティングにも携り、5年ほど在籍した後、子供ができたことをきっかけに、故郷の福岡に帰ることにします。転職活動する過程で出会ったのがヤマップです。2017年頃の話で、当時は私を入れて社員11人。入社当初は1人目の広報としてPRに携わり、コンテンツ制作、ブランディングも兼務しながら、現在はプロダクトマーケティングマネージャーとなっています。ひと言でいうと、プロダクトのマーケティングとPRの両方を統括する責任者、でしょうか。

――YAMAPは600万近いダウンロード数を誇る登山地図アプリですが、﨑村さんは登山とは無縁の生活だったとか。なぜヤマップだったのでしょう。
﨑村 前職はBtoBの会社で、やりがいもありましたが、少しずつ「人の暮らしに直結して、毎日を豊かにするビジネスのほうが自分には向いている」と思うようになり、BtoCビジネスへの転職を考えるようになっていました。そんな時、子供を授かります。東京で子育てをするには窮屈に感じ、私も妻も福岡出身なので、それなら戻ろうとかと。転職が先ではなく、家族のために決断した先でヤマップに出会った、という流れです。入社理由は、山が好きな利用者と直接つながるビジネスモデルに魅力を感じたのと、会社について語る代表の春山の目が少年のようにピュアで、キラキラ輝いていたから。一緒に働きたくなりました。
――顧客体験づくりに携わるきっかけ、原点はどこにあったのでしょうか。
﨑村 子供の頃からものづくりが好きで、大学生の時はカメラやDTMにはまったりしていました。前職で、営業支援の映像制作をインハウスで行い、延べ数万人規模のイベントのPR、広告制作などをやったこともあります。入社時のヤマップは人も少なく、企画、プレスリリース、記者発表会などを仕切りながら、LPや動画作成でも自分の手を動かしていました。登山地図アプリに関する施策は個人ユーザーの存在を常に意識するため、本格的にBtoCの顧客体験を考えるようになったのはヤマップ入社後です。
ユーザーは登山者であり生活者でもある
――生まれ故郷に戻ってヤマップに入社し、生活サイクルは変わりましたか?
﨑村 それはもう、ガラッと変わりましたね。以前に比べると家に帰るのがめちゃくちゃ早くなっています。山に登るようになり、都市には都市の文化、おもしろさがあるけど、山も海も、身のまわりの自然には別のおもしろさがあることを、手応えのある体験として意識できるようになりました。これは大きな変化で、家族と過ごし、子供と遊びながら考えこと、気づいたことが、顧客体験づくりに生かされているとも感じています。

――登山愛好家だけでなく、年に数回登山するライト層も含め、YAMAPは登山地図アプリとして浸透しています。顧客体験の視点でとらえる今現在の課題と、どんな取り組みに注力しているかを聞かせてください。
﨑村 YAMAPは、電波の届かない山の中でも、スマホのGPS機能を使って現在地や登山ルートを確認できる高精度な登山地図です。また、ユーザーの写真やコメントを基点にしたコミュニティも顧客体験に大きく関わっています。アプリを使って山に登ってもらうことがすべての始まりであり、リソースをそこに全集中するのが基本的な考え方です。登山アプリなので、登山好きのことをメインに考えますが、それだけを考えると生活者視点が落ちていきます。そもそも、どれだけ登山好きなユーザーだとしても、アプリのスクリーンタイムはYAMAPよりもYouTubeやInstagramの方が長いはずです。アプリ内施策に加えて、SNSやYouTubeも使った、山が好きな生活者目線でのコミュニケーションも重要だと思います。
――登山に特化したサービスなのでユーザー像を絞りやすいと思いがちですが、実際はそうではないと。
﨑村 山を入り口にしても、その先、何を目的にするかは人によって違います。百名山を目指す人がいれば、同じ山を何度も登る人もいます。下山後のグルメや温泉目あての人も、高山植物や季節の絶景が目的の人もいます。ひと言で山といっても理由も行動も多岐にわたり複雑です。この多様さ故にパーソナライズが難しい側面もあり、不変の課題ですね。もう1つ難しさをあげると、山の情報は基本ローカルで、あたり雨ですが東京の高尾山の情報を福岡の人に送っても意味はありません。同じ県内でも地域によって行動は変わり、市町村単位まで細かく情報を出し分けるのが理想です。ただ、そうなると情報の集積が全国できめ細やかに行われていることが前提になります。これをいかにユーザーから収集するか。そしてAIの活用を含め、より精度の高い還元のための取り組みを始めています。
登山地図アプリの顧客体験とBrazeは相性が良い
――YAMAPの入り口は無料版が多いとしても、成長するには有料版への登録などによるマネタイズが必要です。そこではどんな施策を?
﨑村 アプリビジネスには無料と有料の間のペイウォールをどこに設定し、どう超えてもらうかという共通課題があります。ペイウォールとしては、地図のダウンロード制限が1つのきっかけです。以前はとにかく露出を増やそうと、バナーやプッシュ通知を積極的に行いましたが、工数に見合う成果の実感はなく、逆にNPSやアプリレビュー低下のリスクを感じていました。そこで気づいたのは、個々のユーザーの登山ジャーニーとのリンクがなければ、いくら発信しても発火につながりにくいこと。アプリを使い、山へのエンゲージメントを高めた先に「もっと登りたい」「いろんな人と交流したい」という意欲が芽生えれば、自然発火によりペイウォールを登っていただける。そう考えています。こちらから有料会員への登録をひたすら促すのではなく、日々のコミュニケーションを密にして、山へのエンゲージメントを少しでも高めてもらうほうに重点を置いています。

――パーソナライズしたコミュニケーションを行う際、Brazeの導入前と後ではどんな変化があったのでしょうか。
﨑村 以前は、誰に、何をトリガーに、どう通知するかは、ネイティブでエンジニアが実装するしかありませんでした。今はBrazeにおまかせで、顧客体験の基盤、欠かせないインフラという位置づけです。ユーザーのエンゲージメント向上はもちろん、エンジニアでなくても使えるのも大きなポイントで、PDCAがまわしやすくなりました。
――顧客体験向上につながった具体的な取り組みがあれば教えてください。
﨑村 名古屋で開催される「夏山フェスタ」というイベントで、Brazeのアクショントリガーを使った仕掛けを行いました。会場は大きなカンファレンスホールで、いろんな企業が出展します。ヤマップのブースはそれほど大きくなく、ユーザーが来てもできることは限られてしまいます。せっかくの機会なのに、ユーザーとゆっくり話したり商品を見るゆとりがない。。そこで、名古屋テレビ塔がある久屋大通公園で、ヤマップだけのイベントを企画しました。夏山フェスの会場を訪れた人に、Brazeのジオフェンス機能でイベント開催の通知を送り、誘導しましたが、これがなかなか盛況で、多くのユーザーが訪れ、物販の売り上げにもつながりました。山とは直接関係していませんが、こうした施策でエンゲージメントを高めることも、前述したペイウォールを登るきっかけになると思います。ジオフェンスは登山地図アプリと相性がよく、下山したユーザーが登山口付近に来た時、近くでこんなイベントやっています、というお知らせをポップアップで送り、集客もできます。
AI時代だからこそ「人」の資質が差別化につながる
――Brazeのようなデジタルツールを顧客体験づくりに利用するのが当たり前になっている今、携わる人にはどんな資質が求められるとお考えでしょうか。
﨑村 AIが普及すると、最初の課題設定を間違えなければ、施策がまったく別の方向を向くことはなくなり、どこで差別化するかというと「人」だと思います。AIにどれだけ解像度の高い問いを投げかけられるかで、アウトプットの質は変わるはずです。解像度化が高ければ、AIが提示したものの矛盾にも気づきやすくなります。AIはあくまでも道具であり、使う人次第で精度が変わることを理解する必要があり、その上で、スピード感を高め、PDCAを高速でまわせるかが、顧客体験づくりに大きく影響すると思います。

――今後のキャリア像、成し遂げたいことについて聞かせてください。
﨑村 AIが普及すると、最初の課題設定を間違えなければ、施策がまったく別の方向を向くことはなくなり、どこで差別化するかというと「人」だと思います。AIにどれだけ解像度の高い問いを投げかけられるかで、アウトプットの質は変わるはずです。解像度化が高ければ、AIが提示したものの矛盾にも気づきやすくなります。AIはあくまでも道具であり、使う人次第で精度が変わることを理解する必要があり、その上で、スピード感を高め、PDCAを高速でまわせるかが、顧客体験づくりに大きく影響すると思います。
ヤマップがマーケティング施策のPDCAを回し、エリアに対応したパーソナライズを推進。顧客体験の改善と収益基盤の強化を実現。
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