公開 2024年7月30日/更新 2024年7月30日/15 分で確認
アプリを利用して集客を図りたいと考える企業が増えていますが、アプリの活用では、集客だけではなく、自社製品・サービスの認知拡大やロイヤリティの育成も期待できます。
この記事では、アプリマーケティングとは何か、実施の流れやメリット、有効な戦略や事例などを解説します。
アプリマーケティングとは、アプリを活用して顧客とコミュニケーションを図り、自社製品・サービスの購入や認知拡大に繋げるマーケティング手法です。ここでいうアプリとは「ネイティブアプリ」と「Webアプリ」の2種類に大別できます。
ネイティブアプリとは、Google PlayやApp Storeなどのアプリケーションストア経由でインストールできるアプリのことです。主にスマートフォンやタブレットにインストールしてデバイス上で動作する、いわゆる「アプリ」を指します。ネイティブアプリはデバイスの機能を最大限に活用できるのが特徴です。例えば、GPS機能を利用してプッシュ通知を発するなど、エリアを限定したマーケティングも可能となります。
WebアプリはWebブラウザ上で動くアプリのことです。インストールが不要で手軽に利用できるのが魅力ですが、使用中はインターネット接続が必須であり、デバイスの一部機能も使えないなど自由度では劣ります。ただし最近では、ネイティブアプリのような動作ができるWebアプリとして「PWA(Progressive Web Apps)」が登場しています。こちらはオフラインでも稼働し、デバイス機能も多く使用できるため注目を集めています。
アプリマーケティングの重要性が高まった背景には、スマートフォンの普及が関係しています。
総務省の令和5年度の調査によれば、人々のモバイルネット(モバイル機器を使ったインターネットの接続)の利用率はこの10年間で20%以上も増加しており、現在では84%前後に到達しています。一方、パソコンでのネットの利用率は10年前から変わらず20~30%程度で横ばいです。
参考:総務省「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
より多くの方々に情報を届けるためには、スマートフォンを介する宣伝施策が必要であり、その手段としてアプリマーケティングが注目されています。
アプリマーケティングにはさまざまなメリットがあります。ここでは主なメリットを5つご紹介します。
アプリマーケティングでは、顧客接点の増加が期待できます。例えば多店舗展開をしている場合、顧客は自分が行き慣れた店舗のみに足を運び、通勤途中などの生活圏内にある店舗を知らないケースも多くあります。そうした場合にGPS機能を使って近隣店舗のセール情報をアプリからプッシュ通知すれば、はじめての店舗への来店に繋がります。また、アプリを通じて顧客に情報を伝えられるようになること自体が顧客接点の増加だともいえるでしょう。
優れたアプリはさまざまな形で顧客のUX(ユーザー体験)を改善させます。例として、アプリにスマホ決済やポイントカードの機能を搭載すれば、顧客は現金や会員カードを持ち歩く必要がなくなります。あわせて店員の会計オペレーションの負担を軽減する副次的な効果も生じるでしょう。
優れたUXの提供は顧客のリピート率を高めます。また、リピート率の向上に繋がる施策を、アプリを通じて提供しやすくなるのもメリットです。前述のポイントカード機能の例であれば、来店ごとにポイントが貯まる「チェックポイント機能」を提供したり、ポイントの失効時期や「○倍デー」の情報をプッシュ通知したりして再来店へと繋げられます。
「顧客ロイヤルティ(自社や製品に対する愛着や信頼)」を育成できるのもアプリマーケティングのメリットです。顧客ロイヤルティを高める手段としては、購買に応じた優遇がある会員プログラムの提供が代表的ですが、アプリを活用すればこのような施策をUXの高い形で顧客に届けられます。
アプリマーケティングでは、アプリを通じてユーザー情報の収集もできます。会員プログラムへの登録を促して連絡先や趣味嗜好の情報を入力してもらい、それに応じたセールスオファーを送るなど、次の取り組みに繋げられます。アプリで得た顧客ニーズを元にアプリを改善していく、といった好循環を作り出すことも可能です。
では、アプリマーケティングの具体的な例をご紹介します。
アプリマーケティングで便利な機能の一つが「プッシュ通知」です。アプリを開いていなくても情報発信ができるため、ユーザーの購買意欲の促進に役立ちます。期間限定のキャンペーン情報やポイントの失効タイミングなど、ユーザーにとって必要な情報をタイムリーに届けることで、関心を持ち続けてもらいやすくなります。ただしプッシュ通知は、ユーザーが求めている内容でなければ通知機能をオフにされてしまう可能性もあります。ユーザーの気持ちに配慮し、興味を持ってもらえる内容を適切なタイミングで配信することが重要です。
アプリを通じてクーポンを配布することも可能です。初回利用クーポンの発行により新規顧客の獲得が見込めます。また、お得な情報やクーポンを配布することで再来店を促すこともできます。
顧客の属性や状態に合わせた「セグメント配信」を行うことで顧客ごとにアプローチを変えることも可能です。セグメントとは「顧客属性」のことで、性別や住所などの属性に加え、趣向や購買状況など、さまざまな切り口で顧客を分類することができます。 それにより、効率良く効果的なマーケティングが可能となります。
アプリマーケティングは王道のマーケティング手法である「メルマガ配信」と組み合わせられます。メルマガからアプリのインストールを促したり、アプリ内からメルマガ登録を勧めたりといった相乗効果を生み出せます。「メルマガ登録とアプリインストールが両方完了した方限定オファー!」のような施策も有効です。
アプリマーケティングに有効な具体的な戦略もぜひ知っておきましょう。ここでは、2つの戦略をご紹介します。
WebサイトにSEOが求められるように、アプリではASO(App Store Optimization)対策が求められます。ASOとはアプリストア内での露出を増やし、インストール数を増やすための施策のことです。アプリの説明文やアプリ名、画像やレビューなどを整えていきます。また、CRO(onversion Rate Optimization)と呼ばれるコンバージョン率の最適化に向けた施策も重要です。アプリマーケティングは「割引クーポンを通じた再来訪客の増加」のように、ゴールを設定して実施します。クーポンの配布タイミングや文言を最適化していくなど、コンバージョンに辿り着かせるための取り組みのブラッシュアップは必須です。
アプリマーケティングにおいてもSNSや口コミは有効な手段です。例えば、SNS上にコミュニティをつくることでユーザーからの率直なフィードバックを得ることが可能となり、アプリの改善点も見つけやすくなります。ファッションカテゴリーなどのアプリでは、インフルエンサーと連携したスペシャルコンテンツの提供や、アプリ内で投稿したコンテンツをSNSと連携できる機能などが有効です。
アプリは利用者が増えてはじめて効果を発揮します。利用者を増やすためには、前述のASO対策やSNSのほか、広告を打つことも有効です。KWに連動したリスティング広告のようなオンライン広告はもちろん、チラシの配布や看板の設置といったオフライン広告の出稿も考えられます。
コンテンツマーケティングとは、単純な広告ではない価値のある情報を提供して顧客を獲得していく取り組みです。製品のセールスを例とすれば、割引情報ではなく、使い勝手の良さや得られる体験などの魅力を伝えます。アプリ内で製品の楽しい使い方を解説するチュートリアルを提供するなど、アプリマーケティングと併用できる戦略です。
ASO対策や広告出稿と併用できる集客施策にインフルエンサーマーケティングがあります。特定のプラットフォームで抜群の知名度を誇るインフルエンサーに自社のアプリを宣伝してもらうことで、ユーザー数の増加やその先のコンバージョン獲得を目指します。ファッションカテゴリーのアプリなどでは「インフルエンサーと連携したスペシャルコンテンツの提供(例:コラボモデルの販売)」も有効な例となっています。
アプリマーケティングを成功させるためには、大きく3つのポイントがあります。
まず重要となるのが、アプリ利用のメリットを分かりやすく伝えることです。アプリは利用者が増えてはじめて効果を発揮します。「アプリユーザー限定で割引クーポンを配布中」「最新情報はアプリで!」など、アプリを使いたくなる動機付けが求められます。
アプリの利用者を増やすためには、SNSや動画サイトで拡散しやすい設計を考慮する必要もあります。アプリ内からSNSや動画サイトにそのまま投稿できる連携機能などはその一例です。「投稿を見た方が興味を持ってアプリをインストールし、その方がアプリから投稿した情報をまた別の方が見て」と、ユーザーがユーザーを呼ぶサイクルを目指しましょう。
自分が対象外の割引クーポンなど、利用できないお得な情報を不快に感じてしまうユーザーもいます。 前述の通り、アプリはセグメント別のアプローチを実現しやすい媒体です。ターゲットには適した情報だけを、適切なアプローチで届けるように配慮しましょう。
では、実際にアプリマーケティングを成功させるには、どのような流れが求められるのでしょうか。
まずは、アプリを作る目的を明確にする必要があります。「クーポン配布により実店舗への来訪者を増やしたい」「商品の魅力・最新情報を伝える場を作りたい」など、なぜアプリマーケティングを行うのかをまずは明確にしましょう。目的が曖昧では、アプリの方向性やチーム内の意思疎通にブレが生じてしまいます。
目的の明確化の後は、参入予定のアプリ市場や競合となる可能性のあるアプリの調査を行います。自社の目的によって必要な情報は変わりますが、少なくとも以下は押さえておく必要があるでしょう。
強大な競合アプリがある場合、そのアプリの陰に隠れてしまう可能性があります。時には迂回策はないか検討してみることも大切です。
競合分析から勝算があると判断できたら、次はアプリのターゲットユーザーとなるペルソナを設定します。リサーチを元にしたペルソナの設定は、顧客の行動や感情の予測を可能にし、アプリマーケティングを成功させる一助となります。
質の高いペルソナの設定方法は、以下の記事で解説しています。
>>ペルソナの意味とは?設定方法やマーケティングにおける重要性を解説
ペルソナの次は、マーケティング活動のKGI(重要目標達成指標)と前述の目的を元に、アプリマーケティングにおけるKPI(主要業績評価指標)を設定しましょう。
アプリマーケティングには主に以下のようなKPIがあります。
KPIの設定後は、それを達成できる機能を搭載したアプリを設計します。機能の選定だけでなく、操作しやすいUIや好感を抱かれやすいデザインなど、順番に検討していきます。
しかし、アプリの設計には高度な知見が必要で、実際のところ多くの企業では開発を外注する形となるでしょう。そこで重要となるのは、外注先に自社の要望を詳細に伝えることです。必要に応じて、ここまでに明確化した目的や競合の調査データを提供することで、自社の要望に沿ったアプリの開発を期待しやすくなります。
アプリマーケティングは導入がゴールではないため、運用を続けていくための体制も整えておきましょう。更新や定期的な発信がないアプリは、ユーザーにネガティブなイメージを与えてしまう可能性があります。アプリによってどんなことを実現させ、そのためにどのような運用や運用体制が必要なのかを事前に検討しておく必要があります。
最後に、アプリマーケティングの事例をご紹介します。
バーガーキングでは、Brazeのアプリを導入し「ワッパー Detour(寄り道)」キャンペーンによって月間アクティブユーザー数(MAU)を50%強増加することに成功しました。
「ワッパー Detour(寄り道)」キャンペーンとは、競合であるマクドナルドの半径600フィート(約183m)以内でアプリを開くと1セント(約1円)でワッパーを購入できる割引クーポンが届くユニークな取り組みです。競合店舗のロケーションとユーザーの位置情報(GPS機能)を活用したアプリマーケティングの好例といえます。
ある大手航空会社では、飛行機のチェックイン手続きの時短に活用できる自社アプリを提供し、UXの改善に成功しています。
飛行機の搭乗に時間がかかるのは周知の事実ですが、そこには搭乗券の発行や危険物の確認など多くのプロセスを経ることが関係しています。そこで、アプリを導入することで、搭乗券の発行をスマートフォン上で完結できます。アプリ上に本人データや搭乗口の情報が表示され、時間までに指定場所へ行けば搭乗できる仕組みです。
ある大手衣服販売店では、アプリに多様な機能を持たせることで実店舗での顧客体験を磨き上げています。
例えば、アプリから衣服を選んで事前注文を行うと、最短1時間で近隣の店舗での受け取りができます。同じくアプリから会員証を表示し、レジでスキャンしてもらうだけで、決済まで完了できます。また、限定割引クーポンやファッションを楽しみたくなる最新情報もアプリから提供し、店舗への集客を加速させています。
アプリマーケティングは、アプリを通じて自社製品の販売や認知拡大を実現するマーケティング手法です。スマートフォンの浸透により、その重要性が注目されています。
実際、Brazeの調査では、アプリのメッセージを受信したユーザーのエンゲージメントは、メッセージを受信していないユーザーと比較して131%も高くなっていることが判明しています。アプリ内メッセージの重要性に関する以下のレポートもぜひご一読ください。
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