公開 2025年7月16日/更新 2025年7月16日/11 分で確認
Brazeでは、顧客とのエンゲージメントに革新をもたらす人々に独自でインタビューを行い、彼らの挑戦と成果を紹介する「人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち」をお届けしています。現場での知見や工夫、Brazeの活用方法など、実践的でリアルなストーリーを通じて、マーケティングの未来を考えるヒントを共有していきます。今回は、株式会社ヤマップでマーケティングOpsリードを担う武藤匠さんにお話しを伺いました。
武藤 正直、あまりスマートな経歴ではないのですが(笑)。小さい頃からものづくりが好きで、近所で家を建てている現場があると、端材をもらって、工作しているような子どもでした。大学の専攻は建築で、大学院まで進んでいます。その頃は当然、将来は建築士としてキャリアを築くつもりでした。
武藤 私が在籍していた研究室は、建築士でもある教授のもとで実務の手伝いをするのが活動の中心でした。リアルな現場とつながっているのですから、実践的でおもしろい部分もありますが、非常に忙しい。研究室に泊まり込んで設計図を描き、提出しては指摘と𠮟責を受け、泊まり込みで修正して……。僕はリーダー的な立ち位置でいろんな調整役もまかされていましたが、どんどんすり減っていくのを感じていました。それが臨界点を超えて、大学院の2年目で中退することになります。
武藤 いえ、ありませんでした。でも働かなくてはいけないので、大学に入った頃から続けていたサイクルショップで、整備やカスタムなどのアルバイトをしていました。それが約2年間。手を動かすのが好きだったので、それなりに楽しかったのですが、別な仕事も探してみようと、求人情報サイトでヤマップの求人に出会いました。簡単に言うとデータベース用マスター情報の登録作業ですが、実は以前からたまに山に登っていたので、YAMAPのアプリは使っていました。知っているサービスに携われるのはおもしろそうで、データにふれる仕事にも興味があったので、応募。半年間、業務委託としてデータ入力の仕事をしていました。半年経ち、別の仕事を探そうか考えていたところで「うちで働いてみないか」と誘われ、そのまま入社という流れです。
武藤 まったくその通りで、運がよかったというか導かれたというか、振り返るとちょっと不思議な感じではありますね。入社は2022年の春。データをもっとビジネスに生かそうという機運が高まっていた頃で、データ分析チーム主導で新しいツール導入の検討も行っており、候補の1つがBrazeでした。その後、正式に導入が決まり、2023年の春から本格運用が始まりますが、私はBrazeの選定、オンボーディングから携わっています。
武藤 いえ、ほぼゼロでした。Brazeの導入が決まったとき、スムーズに浸透させるには担当者が必要ですが、他のメンバーは別作業で手一杯だったこともあり、ゼロからの新規導入なら、未経験で何の先入観もない自分にもできるかもしれないと思って「僕がやります」と手を上げました。このタイミングが現在のキャリアにつながる原点だったといえるでしょう。わからないながらも手探りで進め、今は「Brazeのことなら武藤に聞けばいい」と、なっていますから。
武藤 こうしたツールに対してのアレルギーは特になかったので、調べたり、教えてもらったりしながら少しずつ理解していきました。Brazeはそもそもユーザーフレンドリーに設計してあるので、これだけでアプリにポップアップを表示できるんだ。プッシュ通知が飛ばせるんだ。新しい気づきを楽しんでいた気がします。以前は、自社で独自開発した簡易なMAツールを使っていましたが、セグメントを意識せず、全ユーザーに「プッシュを送る」という状態でした。顧客体験向上という面では課題が多く、Brazeの導入で顧客起点の取り組みができる下地が整った、という感じだったと思います。
武藤 弊社サービスのユーザー像は「山が好きな人」で、わかりやすいといえますが、それだけでコミュニケーションすると、最大公約数的で、響かない提案になってしまうことがあります。重要なのは顧客起点で、個々の利用者に最適な登山ジャーニーを届けるにはどうしたらいいか。そう考えなければいけません。山に登るとき、アプリに地図をダウンロードして使うのですが、目的地付近の情報をプッシュ通知で届けたり、下山後の体のケアに関する情報と、弊社が運営するECサイトを紐づけ、次の登山の参考にしてもらったり。山を楽しんでもらうための提案を、出来るだけ細かな粒度で届けたいと思っています。
武藤 思いつくのは、一見うまくいったように思えるのに、実は成果がほぼゼロだったという施策です。九州では毎年6月頃、ツツジの一種のミヤマキリシマという花が見頃を迎えます。それを登山の動機付けにしてもらおうと、「今週末はここが見頃です」というプッシュ通知を、各エリアに住んでいるユーザーにお知らせしました。有名な花なので、興味を持つ方も多かったのでしょう。40%という驚異的なクリック率となり、「これはやったね」と大きな手応えを感じました。ですが、お知らせした週末、実際に山に登った人がどれだけいたかというと、ほぼゼロ。クリック率を高めるという狙いは成功したものの、登山という行動を促すには至らなかったわけで、マーケティング施策の難しさを再認識させられました。効果測定の部分では、その週末は登らなくても、候補としてブックマークしていたかもしれないし、翌年には登ったかもしれません。KPIを柔軟に設定してもよかったのではないか、というのがそこで得た気づきです。
武藤 PDCAを素早くまわせるところ、ではないでしょうか。以前、有料会員になったらECサイトのクーポンをプレゼント、というキャンペーンを打ったのですが、いざスタートしてもほぼ無風。おかしいと思い、急遽、Brazeでポップアップのアンケートを実施したら、我々が思っているほどキャンペーンが認知されていないとわかりました。そこでメールやバナーなどのプッシュ通知を強化すると、翌日から申し込みがグッと増えたことがあります。PDCAを素早くまわすことでユーザーインサイトをつかみ、すぐ施策に反映できるのは大きな強みだと実感しました。
武藤 配信過多になってしまっているのは、今も完全には解消されていません。メールは1日何通まで、というルールはあるのですが、マーケターが組んだスケジュールに合わせて機械的に送ってしまうケースもあり、メール配信を顧客体験の向上にどう結び付けるかが喫緊の課題だと思います。ここには構造的な問題もあり、実はメールとプッシュ配信に関しては以前からの自社開発ツールを使っています。Brazeはアプリ内のバナー、ポップアップなどが中心です。使い分けに限界が来ている気がしていて、もっと細かくパーソナライズしたコミュニケーション施策を打ち、顧客体験を高めるにはBrazeに統一すべきではないか。そう提案して調整を進めているところです。
武藤 先ほどの話からつながるのですが、ツールを含め、弊社全体のマーケティングの高度化に取り組みたいですね。社内の体制で、今は独立したマーケティングチームは置かれていません。各事業部に、Brazeを使ってコミュニケーションの施策を企画、実施する担当がいて、全体のまとめ役として私が存在する、という建付けになっています。先ほどのプッシュ通知の課題として、ツールが分かれていることをあげましたが、実施するメンバーも分かれているわけです。まとめ役として私がいるとしても、社内のマーケティング活動全体をデータで最適化、高度化するため、MOps(マーケティングオペレーション)のチームが必要だと考えています。
武藤 MOpsは、人材やプロセス、ツールを含めたテクノロジーなどさまざまなデータを横断的に統括して、効果的なマーケティングの施策を生み出す組織を指します。弊社の規模ですと、使い慣れたツールにデータを集約し、メールやアプリのプッシュ通知、メルマガ、ECのキャンペーン、リアルイベントなど、各事業部がデータにもとづいて行った施策に対して、MOpsが全体像と成果を把握して、評価と、その後の展開についてリードしていく。そして施策の精度を高め、収益につなげる。漠然とですが、MOpsを軸にそんな流れが構築できればと考えています。Brazeの運用で培った経験を生かしてチャレンジする先に、自分の新しいキャリアの扉が開く。そんな予感もしています。
ヤマップがマーケティング施策のPDCAを回し、エリアに対応したパーソナライズを推進。顧客体験の改善と収益基盤の強化を実現
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