公開 2023年8月09日/更新 2024年1月11日/9 分で確認
カスタマーエンゲージメントとカスタマーエクスペリエンスは語感や大まかな意味が似ており、混同しがちです。きちんと区別ができないままこれらの用語を使っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、カスタマーエンゲージメントとカスタマーエクスペリエンスのそれぞれの定義や違いについて解説します。
まず、カスタマーエンゲージメント(CE)について解説します。
カスタマーエンゲージメントは、日本語では「顧客との関係性・親密さ」を意味します。英語表記のCustomer Engagementから「CE」と略されます。
カスタマーエンゲージメントは、「企業が顧客との直接的で意味のある関係を構築・維持するために行う一連の活動のこと」と定義されます。
インターネットの普及前までは、商品やサービスを供給する企業が直接顧客と接点を持つケースは稀でした。なぜなら「CDはCDショップで買う」といったように、ほとんどのケースで小売店を経由していたからです。そのため、企業が顧客と親密な関係を築くことは簡単ではありませんでした。また、顧客に関する詳細なデータを集めることも不可能でした。
しかし、インターネットの普及後はこれらが可能となりました。企業はインターネットを経由して顧客にダイレクトに商品やサービスを提供できるようになりましたし、またアナリティクスなどのツールを駆使して顧客のデータにもアクセスが可能となりました。
こうした変化によって注目されるようになったのが、カスタマーエンゲージメントです。
企業が容易に顧客にアプローチできるようになった現代において、カスタマーエンゲージメントは重要な概念です。
例えば、飛行機のパイロットは10年前までは多くの人にとってまったく身近な存在ではなかったのではないでしょうか。しかし、パイロットが航空会社の公式SNSアカウントにて投稿を行うことで、パイロットを身近に感じるようになった人は増えているはずです。その結果、企業のイメージアップに繋がったり、その航空会社を利用したいと思ってもらえたり、その航空会社でパイロットとして働きたいと思ってもらえたりします。
上記はあくまで一例ですが、顧客に直接アプローチができる現代だからこそ、カスタマーエンゲージメントは重要なのです。
カスタマーエンゲージメントを高めることによって得られるメリットは以下の通りです。
顧客と良い関係を築くことで、顧客はより高い頻度でより多くの費用を自社の商品やサービスに費やしてくれるようになります。また、企業との関係性や親密さに心地よさを感じた顧客は、そのブランドのことをSNSや何気ない会話などを通じて他者に広めてくれます。
そうして売り上げが上がったり、優良顧客から的確なフィードバックが得られたりすることで、製品やサービスの質はますます向上するでしょう。
なお、カスタマーエンゲージメントについては以下の記事でも解説しています。
>カスタマーエンゲージメントとは:重要性や向上ポイントについて解説
続いて、カスタマーエクスペリエンス(CX)について解説します。
カスタマーエクスペリエンスは、日本語で「顧客体験」を意味します。英語表記のCustomer Experienceの頭文字を取り「CX」と略されます。
カスタマーエクスペリエンスとは、商品・サービスの利用によって顧客が得られる体験のことです。
顧客が多くの情報をインターネットから得ることができる今、商品やサービスの魅力を品質だけで差別化することは難しくなっています。品質で差をつけることの難易度が上がったぶん、顧客体験による競合他社との差別化が非常に重要なポイントとなっています。
その差別化とは、例えば「旅行後に旅館からお礼のメールが送られてくる」といった施策です。こういった顧客体験を提供できれば、「気持ちよく旅ができたからまたこのサービスを使いたい」と顧客に感じさせ、リピーターの獲得などに繋がります。
顧客の価値観は多様化しており、単純に良い商品・サービスというだけではなく、さまざまな付加価値を提供することが顧客の獲得・引き留めに欠かせない時代となってきています。
さらに、SDGsに対する取り組みなどの企業ビジョンを見込み顧客にうまく共有するためにも、カスタマーエクスペリエンスが重要視されるようになっています。
商品やサービスの質に加え、商品やサービスを購入するまでの体験や購入後のサポート体制も評価されるようになってきています。そうしたプロセスに価値を加えることで、顧客は「自分のための商品・サービスである」と感じることができ、継続的な商品の購入やサービスの利用へと意識を変化させます。
今後、テクノロジーが進化すればするほど、差別化されたカスタマーエクスペリエンスがより重要になっていくでしょう。
良いカスタマーエクスペリエンスを提供することによって得られるメリットは以下の通りです。
良いカスタマーエクスペリエンスを提供すると、顧客がブランドのファンになり、イメージやロイヤルティの向上、リピート顧客の獲得へと繋がります。
また、ブランドのファンになった顧客は、SNSや日常会話の中で商品・サービスのことを宣伝してくれます。そうした宣伝による認知拡大や広告費の節約も、カスタマーエクスペリエンス提供の大きなメリットです。
カスタマーエクスペリエンスについては、以下の記事でも解説しています。
>顧客中心時代のCX(カスタマーエクスペリエンス)とは?向上のためのポイントや成功への道筋について
ここまで紹介した、カスタマーエンゲージメント(CE)とカスタマーエクスペリエンス(CX)の違いを表にまとめると、以下のようになります。
カスタマーエンゲージメント(CE)
カスタマーエクスペリエンス(CX)
英語表記
Customer Engagement
Customer Experience
日本語訳
顧客との関係性・親密さ
顧客体験
定義
企業が顧客と直接的で意味のある関係を構築・維持するために行う一連の活動のこと
商品やサービスの利用における顧客視点での体験
メリット
・優良顧客の獲得に繋がる
・リピート率の向上が見込める
・新規顧客の獲得に繋がる
・製品・サービスの向上が図れる
・他社との差別化が図れる
・顧客ロイヤルティの向上に繋がる
・ブランドの認知拡大を目指せる
・ブランドイメージの向上に繋がる
・リピート顧客の獲得に繋がる
この表を見ると、確かにカスタマーエンゲージメントとカスタマーエクスペリエンスは似ているように感じられます。しかし、カスタマーエンゲージメントが複数回のアプローチで顧客との関係性を築こうとするのに対し、カスタマーエクスペリエンスは、顧客が得る1回ごとの体験を指しています。
カスタマーエンゲージメントとカスタマーエクスペリエンスは似た言葉ですが、意味や定義はそれぞれ異なります。カスタマーエンゲージメントは企業と顧客の関係性、カスタマーエクスペリエンスは顧客の体験のことを指す言葉です。
顧客に「また買いたい」「また手にしたい」と思ってもらえる商品やサービスを提供するためにも、この2つの言葉の違いをしっかりと理解し、的確な対策とアプローチを実現しましょう。
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