公開 2025年5月07日/更新 2025年5月07日/13 分で確認
ECサイトの利益を最大化させるためには、いかにユーザーを逃さないか、つまり「カゴ落ち」を削減できるかが重要となります。カゴ落ちはECサイト運営で直面しやすい課題ですが、原因と対策を知ることで効率良く解消できます。
この記事では、カゴ落ちの意味やよくある原因、対策、解決に役立つITツールや事例をご紹介します。
カゴ落ちとは、ユーザーがカートに商品を入れたものの購入せずに離脱してしまう現象のことです。「カート離脱」や「カート放棄」とも呼ばれます。
カゴ落ちはECサイトの運営で必ず直面する課題ですが、適切な原因の把握と対策によって改善できます。
カゴ落ちをするユーザーの割合は、カゴ落ち率という指標で表せます。計算式は以下の通りです。
通常、ECサイトのカゴ落ち率は70%程度が平均値とされています(参考:Baymard Institute「49 Cart Abandonment Rate Statistics 2025」)。また、2019年の株式会社イー・エージェンシーの調査では、一般的なECサイトは「売り上げの約2.5倍の金額をカゴ落ちで機会損失している」と報告されています。
この調査をもとにすると、月商300万円のECサイトの場合、月に750万円もの機会損失が生まれている計算です。仮にカゴ落ち率を70%から60%に改善できれば、月の機会損失を約643万円まで減らし、月商を約407万円に向上できることになります。
では、なぜカゴ落ちが起こるのでしょうか。その原因を確認していきましょう。
「商品は3,000円程度なのに、いろいろな追加費用が加算され、合計の決済額が5,000円を超えていた」といったような経験がある方も多いと思います。
値段がお手頃だとおもって買おうとしたら、配送料や手数料など、商品代金以外の費用が追加されることで値段が上がり、想定していた金額よりも高くなることで購入まで至らず、カゴ落ちが発生することがあります。
仮に追加料金が安価であったとしても、決済画面にいたるまで購入金額(支払い総額)が確認できなければ、カゴ落ちに繋がってしまう恐れがあります。
例えば、2,000円台後半の商品をいくつかカゴに入れたとして、いざ決済画面を見た時に1万円を超える金額が表示されれば、咄嗟に躊躇してしまう方もいるでしょう。
商品購入の際に新規の会員登録やアカウント開設が必要となる場合も、カゴ落ちに繋がる可能性があります。
商品を買おうとした際に、アカウントのログインが必要で新規で作成しないといけないとなった場合、情報の入力やログイン設定などを手間に感じてそのまま購入せずにやめてしまうといったことが起こり得ます。また、「面倒だからいつものECサイトで買おう」と競合に流れてしまう方もいるでしょう。
アカウント作成が不要な場合でも、購入完了までのプロセスが長いと、ユーザーの購買熱は冷めてしまいます。商品到着までの期間が長すぎるケースも同様です。
さまざまな支払い方法がありますが、サイトによっては限られたものしか使用できないといった場合もあります。例えば、クレジットカード以外の決済方法に対応しておらず、そのためだけにカードを作るのは面倒だからという理由でカゴ落ちが発生することもあります。
氏名や電話番号、住所やクレジットカード番号といった個人情報の入力に抵抗を感じカゴ落ちする方もいます。そのため、サイトが持つ信頼感や安全な印象は非常に重要です。
ユーザーは購入しようとしてくれたのに、サイトや決済システム側にエラーが発生し、結局購入を諦めてしまう……という残念な例もあります。タイムセールでアクセスが集中し、サイトが正常に動作しなくなるケースなどもよくある例です。
商品の返品や交換に関する説明を見つけられないことから最終的な購入を決意できず、カゴ落ちするユーザーもいます。万が一の際の保証に関する記載が見つけやすいかどうかは、サイト全体の安心感に直結します。
カゴ落ちの原因を踏まえたうえで、その対策方法について解説します。
配送料や手数料といった追加費用は可能な限り削減しましょう。「3,000円以上購入で配送料無料」などはよくある効果的な施策です。
また、削減が難しい場合は、最初から費用を明示するようにしましょう。カートに商品を入れるたびに送料込みの金額が表示されるなど、決済ページにたどり着いたユーザーが離脱しないための工夫が求められます。
ユーザー視点では、商品購入までのプロセスは簡潔であればあるほどうれしいものです。アンケートは購入後に回すなどして手順を簡略化しましょう。
簡略化を進めるには、思い切って自社への会員登録なしで購入できるようにする方法もあります。最近では、Amazon Payや楽天ペイのように他社の会員登録情報をそのまま利用できる決済方法も登場しています。
商品ページに到着予定日をあらかじめ記載しておくことも、カゴ落ち対策として有効です。決済画面にたどり着いたあとの落胆を防止できます。
また、配送方法の選択肢を増やすのも強力な施策です。「+300円で明日に配送」のような高速配送や、「ポスト投函や置き配可能」といった便利な手段があれば、ユーザーニーズを満たしやすくなります。
多様な決済方法への対応はユーザーの利便性を高め、カゴ落ちの可能性を抑えることに繋がります。前述のAmazon Payや楽天ペイ、各種キャリア決済、コンビニ払いや銀行振り込み、着払いなど、可能な範囲でクレジットカード以外の手段も導入してみましょう。
安心して個人情報を入力してもらうためには、サイトのセキュリティ対策を施し、その旨を明記することも大切です。
暗号化通信(例:https)やクレジットカード会社による本人認証サービス(例:3Dセキュア)を導入し公表すれば、安心して利用してもらいやすくなるでしょう。
エラーによるカゴ落ちを減らすためには、サイトの強化が求められます。必要な対策はエラーの原因によりさまざまですが、一般的には以下のようなアクションが有効です。
返品や交換に関する情報は、ユーザーが簡単に確認できる箇所に記載しましょう。商品ページに「商品到着後2週間以内は返品可能。詳しくはこちら」などとリンクを張り、詳細ページでわかりやすく解説する形が有効です。
よくあるQ&Aのページを用意して購入前の不安や疑問を解消できるようにすると、カゴ落ちの削減に繋がります。
リアルタイムに簡単な受け答えができるチャットボットを導入するのもおすすめです。最近では24時間365日稼働できるAIチャットボットなども登場しています。
カゴ落ちユーザーのなかには、「今すぐには買わないがメモ代わりにカゴへ入れておこう」という方や、スマートフォンへの着信など途中で別の作業が生じ、購入が中断されたままの方もいます。そうしたケースへの強力な対策となるのがリマインダーメッセージです。
メールやアプリ通知などを通じてリマインドを行うことで、すんなりと購入してもらえるケースもあります。一歩進んだ施策として、限定割引クーポンや関連商品の情報を同時に提案するのも良いでしょう。
カゴ落ち対策を効率良く進めるためには、ITツールの導入も有効です。リマインダーメッセージの自動送信の仕組みを整えれば、空いた時間で別の作業に注力できます。具体的なツールとして、以下に「Braze」のカゴ落ち施策をご紹介します。
Brazeでは、ECサイトのカゴ落ち対策としてリマインダーメッセージに関する高度な機能を提供しています。
この機能では、事前に指定した条件にもとづきリマインダーメッセージを自動で送信。「カートに入れてから1時間後にリマインド」などと条件を設定しておくと、ユーザーのもとにメッセージが届きます。
指定条件はA/Bテストを通じて簡単に改善していけるほか、顧客情報との組み合わせによるメッセージ内容のパーソナライズ化にも対応。さらに、インテリジェントタイミングという機能により、最適なメッセージ送信日時を過去のデータから導き出すこともできます。
詳細は以下の動画にて解説しています。
最後に、実際にBrazeを活用してカゴ落ちの削減に成功した事例をご紹介します。
全世界で1億人以上の会員を持つ車の相乗りサービス「BlaBlaCar」は、カゴ落ち施策により予約件数を30%、クリック率を48%向上させました。
同社ではかねてより、予約プロセスの途中で離脱してしまうユーザーへのフォローアップの必要性を認識していました。しかし、社内ツールの技術的制限から、リマインダーメッセージはメールによる送信が主流で、プッシュ通知などのチャネルは有効活用できていませんでした。
そこで、プッシュ通知やアプリ内メッセージなど多様なチャネルから顧客にアプローチできるBrazeを導入。豊富なセグメント機能も駆使しつつ、一人ひとりのニーズを満たせる連絡を試みた結果、確かな成果を手にしています。
>>BlaBlaCarがBrazeキャンバスフローを活用して強力なカゴ落ち施策を構築した方法
「スペースマーケット」は、時間制による空間の貸し借りを行える、国内最大級のレンタルスペースのマッチングサービスです。
同社では多様なチャネルからユーザーにアプローチしていましたが、多様であるぶんチャネルを横断したメッセージの送信タイミングや内容の最適化に課題がありました。そこで、2022年2月にBrazeを導入。A/Bテストを駆使した結果、予約を完了しなかったユーザーには30分後にリマインドメールを送信することが有効であることがわかりました。
さらに、アプローチ内容の最適化も進めた結果、CVR(コンバージョン率)の成長率は108%を記録しています。
>>スペースマーケットがチャネル別に運用されていたマーケツールをBrazeで統合。マルチチャネルの活用で、ベストなタイミングにベストなメッセージが届けられるように
解説した通り、カゴ落ちとはカートに商品を入れたユーザーが購入までいたらず離脱してしまうことです。ECサイト運営とは切り離せない大きな課題となっています。
カゴ落ち対策においては、ITツールの導入が有効な解決策となりえます。まずは以下のリンクより、カゴ落ち対策に豊富な実績を持つBrazeにぜひご相談ください。
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